某年金生活者のぼやき

まだまだお迎えが来そうに無い

白馬に乗った裸の美女

2010-01-16 00:25:21 | ぼやき
 言わずと知れたゴダイヴァ夫人。間もなく飛ぶように売れ始めるチョコレートの名でもある。一度だけ、配達日指定2月14日というチョコレート「Godiva」を頂いたことがある、と前に書いた。頂いたすぐ後にゼミナールの合宿があり、贈り主も参加するので、そこで読む英文の短編にLady Godivaの物語を加えた。教材に加えた意味がわかったのは贈り主だけ。プリントを渡したら、私をチラッと見て、チョロッと舌を出した。もう何十年も前のことだから時効だろう。教師もたまにはいたずらをする。
 あの話で腑に落ちないのは、亭主(領主)が自分の妻に「白昼裸で馬に乗って町を通れ」と要求したことだ。逆に、もし妻が「裸で馬に乗って町を通ってもいいから、民衆の税金をまけてくれ」と亭主に頼んだとしても、亭主は普通やめさせるだろう。税をまけるかどうかとは別に。それが、税をまけて欲しければ裸で馬に乗れ・・・、と亭主が要求する。11世紀の話らしいが、アングロ・サクソンというのは変な人種だ。
 町民は通りに面する窓のブラインド板を下ろした。恥をこらえて馬に乗ったゴダイヴァ夫人を誰も見なかった。ただ一人、板に錐で穴を開けて覗き見した男を除いて。彼は即座に失明したが、Peeping Tom(覗き見トム)として英語の単語にその名を残した。日本では「出歯亀」という。彼「出っ歯の亀さん」は女湯のぞきで捕まったが盲目にはならず、名だけ残した。どうも日本の神様のほうが優しい。もてない男「出歯亀」に同情したのだろう。
 この話の舞台になったイングランドのコヴェントリーは第二次大戦中ドイツ軍の集中的空爆で本当に破壊され尽くした。その報復がドレスデンの空爆による徹底的破壊だと言われている。嘗ては民衆を思う賢夫人の街、現代では戦争の愚かさの象徴。土地に歴史あり、か。 
コメント
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