「人生の意味」に悩む女子高生に、わりと真剣な「正解」を考えてみた その2

2019年08月07日 | ちょっとまじめな話
 前回(→こちら)の続き。
 
 カフェでお茶をしていると、
 
 「この人生を生きる意味って、ホンマにあるんかなあ」。
 
 隣の席から、そんな声が聞こえてきた。
 
 その主は行きずりの女子高生マムコちゃんだが、不肖この私、おせっかいにも彼女にこう答えてしまいそうになったのだ。
 
 「意味はあるよ」
 
 人生を生きる意味とはなにか。
 
 答えは簡単。今、自分が持っているものを、どこかのだれかに伝えていけばいい。
 
 これだけのことだ。
 
 というと、「え? ホンマにそれだけかいな」とあきれられそうだが、これだけです。
 
 これこそが唯一無二で、おそらくは「正解」に一番近いんじゃないかなあ。
 
 私は基本的にボーッとした人間であり、若いころからあまり、マムコちゃんみたいな青春の悩みにとらわれることはなかった。
 
 そんな自分が、なぜ「人生の意味」に自分なりの結論が出せたのかといえば、そのきっかけは「創作活動」であった。
 
 私は若いころ(というか今でもだけど)、いわゆる「表現したいさん」であった。
 
 子供のころから本を読むのが好きで、物語の世界にタンデキするようになった。
 
 おかげで、高校生くらいから演劇をやったり落語をやったり、今でもこうして、だれも読みもしないコラムもどきを書きたれたりしている。
 
 そういった活動に興味のない方からすると、
 
 「お金にならないし、たいした才能があるわけでもないに、なんでそんなことやってるの?」
 
 不思議だろうが、その理由というのは簡単で、
 
 「先人の作品から受けたこの感動を、他のだれかに伝えたい」
 
 この衝動があるから。
 
 これは創作活動に限らず、スポーツでも料理でもなにか研究活動でも、なんでも同じだと思うけど、人がなにか行動を起こすときというのは、これなんですよ。
 
 「だれかの言ったこと、やったことの影響を受けたとき」
 
 この瞬間、人はいてもたってもいられなくなり、立ち上がって、走り出したり、筆を執ったり、今ならネットで語り出したりするのだ。
 
 自分の場合もそうだった。
 
 坂口安吾の『風博士』を読んだとき、ビリー・ワイルダーの『あなただけ今晩は』を見たとき。
 
 アラン・エイクボーンの『パパに乾杯』を観劇したとき、ミッシェル・ガン・エレファントの『チキン・ゾンビーズ』を聴いたとき。
 
 時あたかも天恵を受けたかのごとくに私は立ち上がり、ワープロに向かったり友に電話をかけたり、意味もなく感極まって踊り出したりした。
 
 そこにあった衝動はただひとつ。
 
 「今自分が感じているワケのわからない高揚感を、なんとか形にして伝えられないものか」
 
 そうして私は嗚呼、今日もこうして「たいした才能もない」文章のために、キーをたたくのである。
 
 そう、創作というのはこれすべからく「返歌」であり、もっといえば「ラブレター」なのだ。
 
 誰か先人の作品、それはショパンのピアノでも、レンブラントの絵でも、スピルバーグの映画でも、キング牧師の演説でも。
 
 ロジャー・フェデラーのスーパープレーでも、藤井聡太の絶妙手でも、おばあちゃんの知恵袋でも、レタスのおいしい食べ方でもなんでもいい。
 
 そういった自分が「好き」「すばらしい」と思ったものを、紹介したり、評論したり、自分なりにアレンジして別の作品に仕上げてみたり、そうしてだれかに伝える。
 
 返歌をしたしめて、送る。
 
 それこそが「モノを創る」ことの本質であり、それは同時に、少なくとも私にとっての、創作だけにかぎらない「生の本質」となったのだ。
 
 私にとって、生きることとは
 
 「自分が好きなもの、影響を受けたもの、もしだれかが知ってくれたら、きっとその人の人生を豊かにしてくれるだろうと思えるもの」
 
 そういうものを、だれかに伝えることである。
 
 この考えを、私は長らく、あまり口にすることはなかった。
 
 なんだか説教みたいだし、それにこれが万人に当てはまる普遍性があるとも思えなかったから。
 
 きっかけが「創作」という、ちょっと偏ったところに端を発しているし。
 
 だとしたら、それをあたかも「正解」のように語るのはよけいなお世話ではないのか。そう感じていたわけだ。
 
 だがそこに、幾人か強力な援軍となりそうな人たちの意見を聞くことができたとき、私は「やっぱりそうか」との確信を得ることができた。
 
 それ以来、私はわりとフランクにこの「人生の意味」を語ることにしている。そのための背中をポンとたたいてくれたのは、まず内田樹さんがいる。
 
 
 (続く→こちら
 
 
 
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