海外でたまにゲイの人と出会うことがある。
前回(→こちら)は私や、ユースホステルで出会ったワイルドトラベラーであるキタバタケさんが、ヨーロッパで男にナンパされた話を披露した。
その舞台は両方ともパリであったが、欧州でゲイといえば個人的にはフランスよりも、圧倒的にオランダの印象が強い。
たとえば、ディズニーランド・パリで見かけたゲイカップルはオランダ人であった。
有名なシンデレラ城を見学していると、うしろでキャッキャ騒いでいるカップルがいたのだ。
まあ、こういう場なのではしゃぐのは全然かまわないのだが、ひとつ気になるのが二人の声。
どっちも、妙に低音なのである。
まさかと思って振り向くと、はたしてそれは男同士のカップルであった。
それもいわゆる、マツコ・デラックスさんのような「わかりやすい」感じではなく、ぱっと見、サッカーの香川真司選手みたいな、どこにでもいるボーッとした感じの(失礼)青年同士。
けどこれが、ふたりで腕を組んで、片方は女子っぽくシナを作りながらお互いのほっぺをつつきあったりしているんだから、これはもうどうみても万国共通の恋人同士のちちくりあいである。
おそらくは
「いやーん、シンデレラ城って超ス・テ・キ!」
「ふふ、でもキミの美しさにはかなわへんがな」
「キャー、もうダーリンったら恥ずかしいやん!」
みたいなことを言い合っているのであろう。
言葉の意味はわからんが、これがもうバシバシ伝わってくる。勝手にやっとれと。
で、そのカップルというのが、オランダ人だった。
なぜわかったのかといえば、オランダに旅行したときに、たまたまオランダ語を習っている外大生と仲良くなって、簡単な蘭語の初歩を教えてもらったことがあるから。
オランダ語は、まあ英語とドイツ語を足して2で割ったような言語なんだけど、一番特徴的なのは「G」の発音で、これがのどの奥から「ゴッ!」とか「コッ!」と濁音をしぼりだす独特のもの。
鼻がつまったときに出る「ブタ鼻音」みたいなもんだけど、それが特徴的で、聞けば素人でも一発で「あ、オランダ語や」とわかるのだ。
ひとつ例としてあげると、オランダの観光地といえば「アンネ・フランクの家」が有名だが、この中ではフランク一家などをかくまっていた、ミープ・ヒースさんのインタビューを収録したビデオが流れているコーナーがある。
ミープさんは英語でしゃべっているにもかかわらず、なぜか画面には英語の字幕が出ていて、なんでやろと思っていたのだが、外大生さんによると、
「あれ、オランダなまりが強すぎて、英語できる人でも聞き取るのが難しいんです」
そう、あのビデオのミープさんはたしかに「ゴッ、ゴッ」て言っておられるのだ。
あー、あれって風邪でもひいてるのかと思ったら、オランダ語のなごりやったんや。
そのカップルも、「好きや」「ウチこそ愛してる」なやりとりの間もゴッゴゴッゴいっていたので、「あー、オランダ人か」と判別したわけですね。
彼らを見て思ったのは、当たり前のことだけど、ゲイといえども別に我々ノンケとたいして変わることろはないというもの。
ごくふつうに生活して、ディズニーランドも楽しんで、ただ愛する人の性別が多数派(だと推測される方)とちがうだけ。
それだけのことなのだ。
そりゃ、そこに違和感はないことはないし、子供のころなんかは、そういうことにガサツでデリカシーのない発言をしたこともある。
けど、今はそれを恥ずかしく思っているし、大人になれば、誰が誰を愛そうが、どうということもなくなる。それを理由に、アレコレ言おうとも思わない。
オレらも彼らも彼女らも、好きに生きればいいじゃん。
最近、わが大日本帝国が国連人権理事会の
「《同性愛行為が死刑の対象になること》に対して非難する決議」
に反対したそうだけど、なんでそうことになるんだろうか意味がわからないし、けっこうガッカリなニュースでもあるなあと感じるのは、あのとき楽しそうにディズニーランドを歩いていた、オランダ人男性カップルを見たからかもしれない。
あと、
「LGBTは異性愛者よりも自殺率が6倍もある」
と笑った議員がいるそうだけど、そんなひどいことになるのは、
「アンタみたいな態度で接する人がいるからなんじゃね?」
とも思ったものだ。
別に、だれがだれを好きになろうが、どっちでもいいじゃん。
雑誌『旅行人』の編集長だった蔵前仁一さんは、ニュージーランドの同性婚を認める法案のスピーチを聞いて、こんなことを言われた。
選択的別姓結婚を認めることは、当事者からすれば素晴らしいもの。残りの我々からすれば昨日と同じ日々が続くだけです。核戦争をやろうって話じゃない。
本当に、その通りだと思う。ゲイにかぎらず、人はみな、自分が生きたいように生きたらいいんだ。
なんでそれを、邪魔しようとするんだろう。
蔵前さんの言うように、ただ「昨日と同じ日々が続く」だけだというのに。
(続く→こちら)