空手美女、フィリピンで強盗をノックアウト! のはずが……?

2017年07月25日 | 海外旅行
 「空手美女、フィリピンで強盗をノックアウト」。

 という記事が日本の新聞に掲載されたと、雑誌『旅行人』に紹介されたことがあった。

 日本は空手の国である。

 海外旅行で、とくにイスラムの国などでは、よく子供に「カラーテ!」などと声をかけられることがあった。

 沢木耕太郎さんの名著『深夜特急』でも、主人公がイタリアの田舎町で子供に、

 「カラーテ!」

 「マスタツ!」

 などと声をかけられるシーンがあった。

 どうやら、ずいぶん昔から世界の日本観は変わっていないらしい。もっとも、マス大山が主人公の『空手バカ一代』はたいそうおもしろいマンガなので、イタリアン小僧ならずとも日本人と見れば「カラーテ!」といいたくなる気持ちは理解できる。

 それくらい空手というのは国際的に有名なのであるが、それにのっかって、うっかりサービス精神を発揮して、

 「イエス、カラーテ!」

 などといって構えを取ったりすると、

 「すげえ! 本物の空手だ! 実はオレの兄ちゃん、ボクシングをやってるんだ。よかったらどっちが強いか戦ってみてよ」

 などといわれて、耕太郎のように焦ることになる。

 これは、旅行者にとっての「カラーテあるある」で、私が聞いた話では、ある旅行者がノリで「イエス、カラーテ」と返したら

 「すげえ! 空手だ。よかったら、こいつと戦ってみてくれよ」

 と、犬のドーベルマンを連れてこられたそうである。勝てるかそんなもん!

 そんな世界で愛されている空手だが、「強盗をノックアウト」となれば、これはことが穏やかではない。

 詳細を読むと、フィリピンのある島で、日本人女性旅行者2人が夜、3人組の強盗に襲われたそうだ。

 強盗はピストルをつきつけ、金目のものを奪うと、2人のうちの1人を強引にバイクに乗せ誘拐しようとする。

 おそろしい話だ。海外で女性が夜で歩くのはあぶないが、そもそも金持ちで警戒心のうすい日本人は、悪者にねらわれやすい。

 すわ! 大ピンチ! と思いきや、そこで「とう!」という、勇ましき声が、夜の闇に響きわたった。

 その刹那、取り残されそうになった女性の見事な跳び蹴りが、走り去ろうとした運転手の後頭部にヒットしたのだ。

 悲鳴を上げ、バイクから転げ落ちる強盗。そこからさらに女性は、

 「キエー!」

 「チェストー!」

 という裂帛の気合もろとも、力道山ばりの空手チョップで、他の2人の強盗に応戦し、激闘の末見事にノックアウト。

 劣勢になった強盗はピストルを撃とうとしたが「ウォワタア!」という怪鳥声とともにくり出された回転蹴りによって、はたき落される。。

 女性は、取り落とした銃を拾い上げると、空に向かって一発威嚇発砲。

 そうなるともう、たかだかチンピラの強盗たちは戦意喪失。こりゃかなわんとばかりに、スタコラと逃げ出したそうである。

 かくして、空手美女、見事強盗をやっつける、の記事が現地の新聞に載り、翻訳されて日本でも紹介されたそう。それが流れて、『旅行人』蔵前仁一編集長の耳にも入ったというわけだ。

 アッパレ大和撫子というか、すごい女性がいたものである。まるでチャーリーズ・エンジェルだ。フルスロットル!

 かくして、フィリピンでは「日本の空手はすごい」と評判になり、マス大山の意志はこのようにして、また世界へと伝わっていくのであった。めでたし、めでたし。

 と、まとめておしまいといいたいところだが、この話には続きがあった。

 一見、海外の「おもしろニュース」と見せかけて、このフィリピン発の記事には、とんでもないからくりがしかけられていたのだ!

 一読驚愕の、その結末とは。



 次回に続く(→こちら)。




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