選挙でこんな応援演説をやってはいけません その2

2014年04月02日 | 若気の至り
 前回(→こちら)の続き。

 生徒会選挙に立候補した友人イケシマ君を、応援演説でサポートすべく立ち上がったタテツ君とキタノ君。

 立候補したのがイケシマ君一人なので、応援演説もへったくれもなく当選確実なのだが、彼らはそれだけではもの足りんと、

 「オレらが、爆笑の漫才やったる!」。

 嗚呼、私は友として、ここですかさずドラえもんを呼び出し、そのポケットから「地球はかいばくだん」を引っ張り出して作動させるべきであった。

 みなさまにも賛同いただけると思うが、これはかなりの確率で「痛い」ことになる可能性が高い。

 やめろ、今からでも間に合う。その案は今すぐ、ひっかけ橋からドブ川になげすてろ!

 そう説得するが、キタノ君とタテツ君は

 「絶対ウケるから心配すんな」

 「オレとキタノが組んだら、メチャメチャおもろいからな」

 「ほら、オレらの会話って、ふだんから漫才みたいなもんやし」

 などと聞く耳を持たない。

 嗚呼、関西の男子にありがちな

 「オレはおもしろい」

 「笑いのセンスがある」

 という根拠のない自信が、正義の意見を断固としてこばむのだ。

 ここでも再三語っているが、大阪人は別におもしろいわけでも、笑いのセンスがあるわけでもない。

 単に「明るくてノリがいい」人が目立つだけだ。

 これは似て非なるものであるが、自意識過剰な大阪人は混同しがちである。

 一発ギャグ系の宴会芸ならまだしも、公衆の面前で「しゃべくり漫才」などやった日には、おそろしいことになるのは目に見えている。

 私は心の底から友情で、

 「絶対スベるからやめろ。命を来世ぶんも合わせて賭けていい」

 押しとどめるのに必死になるのだが、周囲は

 「やりたいんやったら、やらしたったらええがな」

 という穏健派ぞろいで、今ひとつ戦況は不利。
それどころか真面目な性格の子に

 「こんな熱い思いを、なんでキミは踏みにじろうとするんや。それでも友達か」

 「そうやって、やりもせず端からクールなつもりで批判するだけなんて、オマエの悪い癖やぞ!」

 怒られてしまった。

 嗚呼、ちがうんや。私は別に熱い心に若者らしい斜め上の視線から水を差そうとか、そういうことは考えていないし、チャレンジする心も大事だと思っている。

 けど、ここはもうただただ、「自分たちはおもしろい」と思いこんでいる高校生の漫才の破壊力を心配しているだけなのだ。

 インパールでの無謀な作戦に疑問を感じ、独断で兵を撤退させ更迭された佐藤幸徳中将の気持ちはこのようなものだったか。これだからダウンタウン世代は困るんだ。 

 さて放課後、応援演説開始。

 結果はもうおわかりであろう。

 そう、彼らは思いっきりスベッたのである。とにかく、終わった後にざわめきが起きるくらい豪快にすべったのだ。

 ふたりが途中、あまりの沈黙に耐えられなくなり、あせって下ネタを連発したのもまずかった。 

 演説終了後、私はすぐさま「戦後処理」のために走り回った。同じクラブのタマグシ君に「今の漫才どうやった?」とたずねると、

 「あいつらシャロン君の友達か。地獄へ堕ちろゆうとけ」

 あああ、やっぱり。

 続いて、同じ中学出身の女子タイジョウさん。

 「結局、ああいうのが大阪のイメージをおとしめてるんやね」

 て、手厳しい……。

 たしかに、大阪人の過度な「おもしろい」アピールは他府県でもウザがられてるとは思いますけど、そこまで言うか……。

 女子なのに(いやそれゆえか)キツイです。

 その他、

 「寒い」

 「拷問」

 「見てて腹立った」

 「今からなぐりに行く」

 など散々な言われよう。恐れていたことが現実になってしまった。

 自分でやめろと言ったものの、こんな予想通りいかんでもええのにと、泣きたい気分だ。

 さらにおそろしいことに、開票の結果、信任票を不信任票が過半数を大きく上回ってしまうという事態に。

 そう、この選挙はなんと対立候補がいないのに落選という、前代未聞の結果が出たのである。

 つまりはみんな、

 「イケシマに票を入れるのは、あの漫才を『おもしろい』と認めたことになる。それだけはありえへん!」

 そう解釈したわけだ。

 嗚呼、そうであった。タテツ君とキタノ君は、多くの関西に住む若者らしく、

 「オレはおもしろい」

 そう勘違いしていたが、おそろしいことに観る側の方もまた必然的に大阪人であるから、

 「オレら(ウチら)の笑いを見る目はキビシイで」。

 という、「おどれは、どこのプロデューサー様や!」といったプライドが炸裂していたわけだ。

 一昔前は関東のお笑い芸人が「関西ではネタをやりたくない」と嫌がっていたそうだが、それこそが素人客の、

 「さあ、笑いの本場のワシらを満足させられるんやろうな」。

 そういった、上から目線の産物であった。

 とばっちりであったのが、なんの罪もないイケシマ君。

 まさにこの「大阪人の勘違い・龍虎の対決」に巻きこまれて、まさかの大落選。はた迷惑もここに極まれりであろう。

 まあ他に候補もいないし、イケシマ君が会長になること自体はみなも賛同しているため、再選挙(応援演説ナシ)ではめでたく当選したのでホッとした。

 まったく、お騒がせなキタノ君とタテツ君なのであったが、まことおそるべしは大阪人の

 「オレはおもしろい」

 「自分たちの笑いを見る目は厳しい」

 という根拠のない思いこみである。

 みなさまも、生徒会選挙や文化祭などで、くれぐれも「爆笑の漫才」などに手を出さないように。

 特にクラスで、女子相手に爆笑をとっている男子諸君は危ない。

 あなたがウケているのは、単に

 「顔が良くてモテるから」

 という可能性がかぎりなく高い。

 それを実力と過信すると、ヒドイ目にあいます。お気をつけあれ。


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