新入部員を勧誘する方法 体育会編

2014年04月04日 | 時事ネタ
 春といえば新入部員争奪の季節である。

 各地で入学式が行われる4月中旬といえば、体育会や文化部問わずクラブの勧誘のシーズン。
 
 「来たれ、○○部!」

 先輩たちが、どこからわいてきたのかというくらいに、あっちこちから現れて、インドの物乞いのごとく袖を引っぱってくるアレだ。

 私も経験があるが、春先のサークル勧誘は必死である。

 なんといっても、ここでの収穫によって、その後の活動の幅から予算会議での発言力、果ては女子部員の割合におけるボックス内のうるおい総量数にもかかわってくる。

 特に最後のは、楽しい学園生活においては死活問題だ。

 かつて清少納言は「春はあけぼの」と優雅に詠んだが、とんでもない。クラブの先輩たちにとっては、

 「春はサバイバルレース」

 ここで遅れを取ると、部員数の少ない弱小クラブは冗談抜きで存続の危機なのだ。これこそ弱肉強食。

 これがどれだけ必死かと言えば、人ほしさゆえにか、明らかにまちがった人選で声をかける例があとを絶たない。

 たとえば背の高い子がバスケ部に誘われたり、人目を引く美人を演劇部に呼びこむならわかるが、我が校のケースでは応援団が私に声をかけてきた。

 私が応援団。生まれてこの方、今時めずらしい「趣味はガチ読書」という文化系人間の自分が応援団など、それこそ地球とコーヤコーヤ星くらい離れた世界である。

 にもかかわらず、つい声をかけてしまうのが新入生歓迎期のおそろしいところ。

 どう考えても入団1日で逃げ出すだろう私だが、もう新人欲しさに目が見えないのだ。 その証拠に先輩は、

 「いかに体育会系的世界はすばらしいか」

 について得々と語り、その手のノリが苦手な私はおごりのコーヒーをいただきながら、

 「先輩、すんませんけど、それは完全無欠に間違ってますわ」

 内心そう感じたものだ。くわしいことは忘れたが、

 「体育会系は、やたらと全裸が好き」

 という印象だけはインプットされた記憶がある。

 「応援団に入れば、チアガールとつきあえるかもしれないぞ」

 という売り文句は相当に魅力的だったが、どう考えてもその段階にたどり着く前に、脱走兵として処刑されるのは目に見えている。

 なんとか振り払って逃亡に成功した私だが、すぐさま次の刺客が襲いかかる。

 それはグリークラブであった。

 男声合唱団のことである。他の学校は知らないが、我が大学ではこのグリークラブというのは女人禁制のバンカラクラブであった。

 女がいない。その時点でもう、「またのお越しをお待ちしています」という気分になるが、それに加えて、このグリークラブというのが、またもや体育会系ど真ん中。

 先輩たちは、いかに自分たちのクラブが仲が良くて楽しいかということを力説するのだが、その内容というのが、

 「遅刻したものは、ヒンズースクワット100回」
 「飲み会は、救急車呼ばれて一人前」

 といった、どこの国の旧日本軍かといったもの。それでもって、

 「どうだ、楽しそうだろ」

 そう笑顔でいわれた日には、もう「誤爆もここに極まれり」といったところだ。一番苦手だよ、そういうの! なので、またもやほうほうの体で逃げ去ることとなった。

 このように、春先の学校は罠がいっぱいだ。

 どうか私と同じく文化系軟弱男子は、これらの試練を見事かいくぐって、「文芸部」「SF研」「地理歴史部」「鉄道研究会」といったお目当てのクラブまで、たどり着いてほしい。健闘を祈る。


 (続く【→こちら】)



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