今日のしんぶん赤旗は、標記の記事を大きく報じています。私が、ブログで、「伊藤詩織さん性暴力被害東京地裁判決分の要旨」を報じたとき、今までなかったほど多くの方からアクセスがあり、今も、アクセスする方がおり、関心の高さが分かります。今回の記事は、その判決の意義を補足するものと考え、紹介するものです。
伊藤詩織さん性暴力被害東京高裁判決「不同意判断と告発の社会的意義」
ジャーナリストの伊藤詩織さんが、山口敬之・元TBSワシントン支局長から性暴力を訴えていた事件で、東京高裁判決は一審の東京地裁(2019年12月18日)に続き、性行為に同意しなかったと判断しました。角田由紀子弁護士に判決の意義について寄稿してもらいました。
弁護士 角田由紀子さんの寄稿
伊藤詩織さんの事件の東京高裁判決が1月25日に出されました。高裁判決は、地裁判決に比べてより充実した判断を示したもので、本文のみで182ページに及ぶ分厚いものです。判決は、改めて、山口氏の行為は詩織さんの同意を得ることなく行われたものであり、明確に加害行為としています。
判決が、同意がないと判断した理由で注目されるのは、2人の関係は、性的関係に至るような性質のものでなかったことを指摘している点です。
本件以前に2人が会ったのは、仕事に関するものであり、それも頻繁でなく、山口氏が描くような性的関係に安易に至ることが想定されるようなものではなかったとしています。
緻密で説得的
本件は、密室での出来事であり、当事者2人の言い分を比較検討することが事実認定の重要な部分になります。この手法は一審判決でも取られていましたが、高裁判決の方が、より緻密であり、説得的であり、常識にかなった判断です。
山口氏は、同意に基づいたということを言うために、詩織さんがいかに積極的に性行為を誘ったかを昨日のようにまことしとやかに詳しく延べました。裁判官は仕事上の知り合いでしかない2人なのに、いきなりそんなことが起きるのはおかしいと、その説明が詳しすぎることにかえって素朴な疑問を持ったようです。人間理解がきちんとできていた裁判官の担当になってよかったです。
この事件では山口氏から、詩織さんの著書などについて、名誉毀損およびプライバシー侵害を理由にして1億3千万円の損害賠償が請求さえれています(反訴)。この論点では、多くの性暴力被害者を勇気づける判断が示されました。
ある公表行為(書いたり、話したりしたこと)が名誉毀損やプライバシー侵害であったとしても、それらの行為が公共の利害に関係し、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあった場合で、公表された事実の重要な部分が真実であることが証明されたときは、違法性がないとされます。また、真実であると証明されなくても、行為者がそれらの事実が真実であると信じるについて相当な理由があるとき(真実相当性がある)には、その行為には、故意または過失がなく不法行為は成立しないことになっています。
状況を変えたい
詩織さんは、記者会見をしたり、本を書いたりして自分の被害体験を公にしましたが、それは自分の経験から性犯罪の被害者を取り巻く法的・社会的状況を少しでも変えていきたいと思ったからだとしています。自分の話を信じてもらうためには自分の名前も顔も出すことを決意し、相手の実名も含めて起きたことの全容を明らかにする必要があると判断したからでした。
高裁判決はこれを認めて、デートレイプドラッグ以外の点については、名誉毀損もプライバシー侵害も否定したのです。性犯罪被害者の告発が公共の利益に関わる社会的意義を持つことをはっきり肯定したのです。
この判決は「♯Me Too運動」や「フラワーデモ」のような被害者の告発運動を励ますものです。これから法的・社会的状況の改善が進むことで、詩織さんの投じた一石の波紋が大きく広がって行くに違いないと確信しています。
伊藤詩織さん性暴力被害東京高裁判決「不同意判断と告発の社会的意義」
ジャーナリストの伊藤詩織さんが、山口敬之・元TBSワシントン支局長から性暴力を訴えていた事件で、東京高裁判決は一審の東京地裁(2019年12月18日)に続き、性行為に同意しなかったと判断しました。角田由紀子弁護士に判決の意義について寄稿してもらいました。
弁護士 角田由紀子さんの寄稿
伊藤詩織さんの事件の東京高裁判決が1月25日に出されました。高裁判決は、地裁判決に比べてより充実した判断を示したもので、本文のみで182ページに及ぶ分厚いものです。判決は、改めて、山口氏の行為は詩織さんの同意を得ることなく行われたものであり、明確に加害行為としています。
判決が、同意がないと判断した理由で注目されるのは、2人の関係は、性的関係に至るような性質のものでなかったことを指摘している点です。
本件以前に2人が会ったのは、仕事に関するものであり、それも頻繁でなく、山口氏が描くような性的関係に安易に至ることが想定されるようなものではなかったとしています。
緻密で説得的
本件は、密室での出来事であり、当事者2人の言い分を比較検討することが事実認定の重要な部分になります。この手法は一審判決でも取られていましたが、高裁判決の方が、より緻密であり、説得的であり、常識にかなった判断です。
山口氏は、同意に基づいたということを言うために、詩織さんがいかに積極的に性行為を誘ったかを昨日のようにまことしとやかに詳しく延べました。裁判官は仕事上の知り合いでしかない2人なのに、いきなりそんなことが起きるのはおかしいと、その説明が詳しすぎることにかえって素朴な疑問を持ったようです。人間理解がきちんとできていた裁判官の担当になってよかったです。
この事件では山口氏から、詩織さんの著書などについて、名誉毀損およびプライバシー侵害を理由にして1億3千万円の損害賠償が請求さえれています(反訴)。この論点では、多くの性暴力被害者を勇気づける判断が示されました。
ある公表行為(書いたり、話したりしたこと)が名誉毀損やプライバシー侵害であったとしても、それらの行為が公共の利害に関係し、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあった場合で、公表された事実の重要な部分が真実であることが証明されたときは、違法性がないとされます。また、真実であると証明されなくても、行為者がそれらの事実が真実であると信じるについて相当な理由があるとき(真実相当性がある)には、その行為には、故意または過失がなく不法行為は成立しないことになっています。
状況を変えたい
詩織さんは、記者会見をしたり、本を書いたりして自分の被害体験を公にしましたが、それは自分の経験から性犯罪の被害者を取り巻く法的・社会的状況を少しでも変えていきたいと思ったからだとしています。自分の話を信じてもらうためには自分の名前も顔も出すことを決意し、相手の実名も含めて起きたことの全容を明らかにする必要があると判断したからでした。
高裁判決はこれを認めて、デートレイプドラッグ以外の点については、名誉毀損もプライバシー侵害も否定したのです。性犯罪被害者の告発が公共の利益に関わる社会的意義を持つことをはっきり肯定したのです。
この判決は「♯Me Too運動」や「フラワーデモ」のような被害者の告発運動を励ますものです。これから法的・社会的状況の改善が進むことで、詩織さんの投じた一石の波紋が大きく広がって行くに違いないと確信しています。