財務省の「少人数学級エビデンス論」批判
藤森毅氏(日本共産党文教委員会責任者)論文から学ぶ
私は、昨年夏の共産党議員研修会で、党中央の藤森氏の講演を聞きました。その分かりやすい話し方、納得できる理論建てに、すっかりファンになってしまいました。その藤森氏が、共産党の理論雑誌「前衛」に、「財務相の『「エビデンス論』を批判する」との論文を書いています。これは、2020年9月議会での菊池議員の一般質問、「コロナ禍の子ども達に、少人数学級をプレゼントを」の裏付けにもなっています。
抜粋を紹介します。
エビデンス論の源流は医学の世界
エビデンスの源流は、医学で、エビデンス・ベイスド・メディスン(根拠に基づく医療)です。医師の個人的経験に基づく治療を、科学的根拠に基づく医療へと改善しようという流れです。
一番知られているのは、結核治療に使われた最初の抗生物質・ストレプトマイシンです。これを二重盲検法など、様々な影響をシャットダウンしたうえで実験して証明されたものが「エビデンス政策」です。
教育への効果を「数値で測ること」は可能か
全国学力テストの点数をモノサシにすれば、A県の学力が上でB県の学力は下になります。学習の時どのように話し合っているのか、間違ったり遠回りして自分らしく学ぶ過程をたのしんでいるか、そうしたことは捨象されます。
「読み、書く権利であり、自分自身の世界を読み取り、歴史をつづる権利であり、教育の手立てをえる権利であり、個人および集団の力量を発展させる権利である」(ユネスコ学習権宣言)という学習の力量をどうやって測れるのか、まだまだ探求の途上だと思います。
そうした「複雑な現実を」を数値化できる「一つあるいは複数のモノサシというものはあるのでしょうか。少なくとも現時点では存在しているとは思えません。教育についての計量的調査は、相当の困難と制約を背負っていると、言わざるをえません。
「数値のエビデンス」なしが、「現実に効果がない」とはならない
ここで間違えていけないのは、数値のエビデンスが得られないことと、現実に効果がないこととは、イコールではないことです。
私は根拠(エビデンス)というなら、多数の教員や保護者が「少人数学級」を強く支持しているそのものが、「少人数学級の最大のエビデンスだと言いたいと思います。
学級規模の違いの子どもの人間形成への影響というのは複雑な現実です。その複雑な現実をもっとも近似的感知できるのは、子どもを直接見ている教員や保護者ではないでしょうか。むろん、それが数人では個人的エピソードの範囲をでないでしょう。しかし、その大量の集合となれば、今あるエビデンスの中で、もっとも信頼できるに足るものと言えると思います。
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2020年9月議会での菊池のぶひろ議員の一般質問
コロナ禍の子ども達に、少人数学級のプレゼントを
菊池議員の質問

コロナ禍で長期休業をへた子どもたちの状態は、手厚い教育・柔軟な教育を求めています。今の40人学級制度は、コロナ後の「新しい生活様式」と抜き差しならない矛盾を生んでいます。3密状態をさけて授業を行なうためには、少人数学級の実現が不可欠です。私は、8月に、小中学校の教室の実態を見てきました。
日本の小中学校の学級編成の原則は、1980年以来、小学1年生は35
人、それ以上は、小学2年から中学3年まで、「40人学級が原則」です。コロナ禍以後、新しい生活様式が声高に言われています。桜川市議会でも、2人で並んでいた議席を離して、1人座りにしました。多くても一回の議会で4日くらいしか使わない本会議でも、これくらい「3密」にならないよう気を使っています。
ところが、小中学生は、9年間も、毎年200日くらい、一日中教室で過ごしているのです。この3密の状況は、全国的に解決しなければなりません。今も、シトラスの集会は100名を定員として、これ以上多くの集会は禁止しています。
政府の新型コロナ専門家会議が求めている「最低でも1㍍」の間隔で、いまの教室に入れる人数は何人が可能ですか。
今、市の小中学校の現状は、30人以上のクラスは、何クラスありますか。
日本共産党は、1クラス20人に学級を提案しています。当面30人学級にするだけでも大きな改善です。
少人数学級にするメリットは、まだ、あります。1つは学力向上です。文科学省の調査でも、「学力が向上したと思うか」という問に、「とてもそう思う」「そう思う」との回答は、98%です。同じく、「不登校や、いじめなどの問題行動が減少したか」との問への回答も、88%です。
文科省の検討会議でも2012年に国の責任で少人数学級を実現することが必要と報告しています。これだけ、効果のある少人数学級、今回のコロナ禍を契機に、私たち大人が一緒になって、子どもたちにプレゼントするチャンスです。教育長の見解を伺います。
3密を避けるには、現在の学級編成方針では不十分
教育長の答弁
国の学級編成の標準として、昭和55年から平成3年度まで12年計画で40人学級が実施され、平成23年から小学1年生には35人級が標準になっています。 児童・生徒が1㍍以上の間隔を確保するには、多くても35人程度になります。30人以上の学級数は、岩瀬小4,羽黒小1、岩瀬東中4、桃山学園13クラスです。計22クラスとなっています。少人数学級のメリットは、議員ご指摘の通りです。3密を避けるには、現在の学級編成の方針では不十分であると考えます。
少人数学級実現に向けた改善要望・加配教員の要望を継続して行ない、少人数学級の実現に向けて努力してまいります。
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やっと、少人数学級へ とりあえず35人学級から
元文科省事務次官・前川喜平氏の論評
来年度から5年で、公立小学校の1学級の児童数の上限は35人にすることが決まった。新型コロナの感染防止や長期休校による遅れ学習の遅れの回復に苦労する学校現場や自治体、学界から少人数学級を求める声が高まっていた。他方、相次ぐ大型補正予算で財政規律が一挙に弱まった。この絶好の好機を逃さなかった文科省は、よく頑張ったと思う。中学校を含めた30人学級は、今後また頑張ってほしい。
既存の加配定数の一部を振り替えることは少し心配だ。少人数指導やチームティーチングができなくなるのは困る。新採教員が確保できるか。非正規の教員が増えないかという心配もある。勤務条件の改善と非正規任用の規制が必要だろう。
現下の三密回避のためには、各自治体での国の計画を先取りした少人数学級化が望まれる。加配教員の学級担任への振替えや特別支援学級への再編成など、現場での柔軟な対応も認めるべきだ。
将来的には、基礎定数を学級数で計算するのをやめ、加配定数は縮小し、学校ごとの定数を児童生徒の総数に応じて定めるようにすべきだ。特別支援学級を含め学級編成は教育委員会から学校に降ろす。チームティーチングや通級指導も学校に任せる。教職員定数の使い方は現場に委ねるべきなのだ。
(現代教育行政研究会代表)
引用「東京新聞・本音のコラム欄」
藤森毅氏(日本共産党文教委員会責任者)論文から学ぶ
私は、昨年夏の共産党議員研修会で、党中央の藤森氏の講演を聞きました。その分かりやすい話し方、納得できる理論建てに、すっかりファンになってしまいました。その藤森氏が、共産党の理論雑誌「前衛」に、「財務相の『「エビデンス論』を批判する」との論文を書いています。これは、2020年9月議会での菊池議員の一般質問、「コロナ禍の子ども達に、少人数学級をプレゼントを」の裏付けにもなっています。
抜粋を紹介します。
エビデンス論の源流は医学の世界
エビデンスの源流は、医学で、エビデンス・ベイスド・メディスン(根拠に基づく医療)です。医師の個人的経験に基づく治療を、科学的根拠に基づく医療へと改善しようという流れです。
一番知られているのは、結核治療に使われた最初の抗生物質・ストレプトマイシンです。これを二重盲検法など、様々な影響をシャットダウンしたうえで実験して証明されたものが「エビデンス政策」です。
教育への効果を「数値で測ること」は可能か
全国学力テストの点数をモノサシにすれば、A県の学力が上でB県の学力は下になります。学習の時どのように話し合っているのか、間違ったり遠回りして自分らしく学ぶ過程をたのしんでいるか、そうしたことは捨象されます。
「読み、書く権利であり、自分自身の世界を読み取り、歴史をつづる権利であり、教育の手立てをえる権利であり、個人および集団の力量を発展させる権利である」(ユネスコ学習権宣言)という学習の力量をどうやって測れるのか、まだまだ探求の途上だと思います。
そうした「複雑な現実を」を数値化できる「一つあるいは複数のモノサシというものはあるのでしょうか。少なくとも現時点では存在しているとは思えません。教育についての計量的調査は、相当の困難と制約を背負っていると、言わざるをえません。
「数値のエビデンス」なしが、「現実に効果がない」とはならない
ここで間違えていけないのは、数値のエビデンスが得られないことと、現実に効果がないこととは、イコールではないことです。
私は根拠(エビデンス)というなら、多数の教員や保護者が「少人数学級」を強く支持しているそのものが、「少人数学級の最大のエビデンスだと言いたいと思います。
学級規模の違いの子どもの人間形成への影響というのは複雑な現実です。その複雑な現実をもっとも近似的感知できるのは、子どもを直接見ている教員や保護者ではないでしょうか。むろん、それが数人では個人的エピソードの範囲をでないでしょう。しかし、その大量の集合となれば、今あるエビデンスの中で、もっとも信頼できるに足るものと言えると思います。
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2020年9月議会での菊池のぶひろ議員の一般質問
コロナ禍の子ども達に、少人数学級のプレゼントを
菊池議員の質問

コロナ禍で長期休業をへた子どもたちの状態は、手厚い教育・柔軟な教育を求めています。今の40人学級制度は、コロナ後の「新しい生活様式」と抜き差しならない矛盾を生んでいます。3密状態をさけて授業を行なうためには、少人数学級の実現が不可欠です。私は、8月に、小中学校の教室の実態を見てきました。
日本の小中学校の学級編成の原則は、1980年以来、小学1年生は35
人、それ以上は、小学2年から中学3年まで、「40人学級が原則」です。コロナ禍以後、新しい生活様式が声高に言われています。桜川市議会でも、2人で並んでいた議席を離して、1人座りにしました。多くても一回の議会で4日くらいしか使わない本会議でも、これくらい「3密」にならないよう気を使っています。
ところが、小中学生は、9年間も、毎年200日くらい、一日中教室で過ごしているのです。この3密の状況は、全国的に解決しなければなりません。今も、シトラスの集会は100名を定員として、これ以上多くの集会は禁止しています。
政府の新型コロナ専門家会議が求めている「最低でも1㍍」の間隔で、いまの教室に入れる人数は何人が可能ですか。
今、市の小中学校の現状は、30人以上のクラスは、何クラスありますか。
日本共産党は、1クラス20人に学級を提案しています。当面30人学級にするだけでも大きな改善です。
少人数学級にするメリットは、まだ、あります。1つは学力向上です。文科学省の調査でも、「学力が向上したと思うか」という問に、「とてもそう思う」「そう思う」との回答は、98%です。同じく、「不登校や、いじめなどの問題行動が減少したか」との問への回答も、88%です。
文科省の検討会議でも2012年に国の責任で少人数学級を実現することが必要と報告しています。これだけ、効果のある少人数学級、今回のコロナ禍を契機に、私たち大人が一緒になって、子どもたちにプレゼントするチャンスです。教育長の見解を伺います。
3密を避けるには、現在の学級編成方針では不十分
教育長の答弁
国の学級編成の標準として、昭和55年から平成3年度まで12年計画で40人学級が実施され、平成23年から小学1年生には35人級が標準になっています。 児童・生徒が1㍍以上の間隔を確保するには、多くても35人程度になります。30人以上の学級数は、岩瀬小4,羽黒小1、岩瀬東中4、桃山学園13クラスです。計22クラスとなっています。少人数学級のメリットは、議員ご指摘の通りです。3密を避けるには、現在の学級編成の方針では不十分であると考えます。
少人数学級実現に向けた改善要望・加配教員の要望を継続して行ない、少人数学級の実現に向けて努力してまいります。
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やっと、少人数学級へ とりあえず35人学級から
元文科省事務次官・前川喜平氏の論評
来年度から5年で、公立小学校の1学級の児童数の上限は35人にすることが決まった。新型コロナの感染防止や長期休校による遅れ学習の遅れの回復に苦労する学校現場や自治体、学界から少人数学級を求める声が高まっていた。他方、相次ぐ大型補正予算で財政規律が一挙に弱まった。この絶好の好機を逃さなかった文科省は、よく頑張ったと思う。中学校を含めた30人学級は、今後また頑張ってほしい。
既存の加配定数の一部を振り替えることは少し心配だ。少人数指導やチームティーチングができなくなるのは困る。新採教員が確保できるか。非正規の教員が増えないかという心配もある。勤務条件の改善と非正規任用の規制が必要だろう。
現下の三密回避のためには、各自治体での国の計画を先取りした少人数学級化が望まれる。加配教員の学級担任への振替えや特別支援学級への再編成など、現場での柔軟な対応も認めるべきだ。
将来的には、基礎定数を学級数で計算するのをやめ、加配定数は縮小し、学校ごとの定数を児童生徒の総数に応じて定めるようにすべきだ。特別支援学級を含め学級編成は教育委員会から学校に降ろす。チームティーチングや通級指導も学校に任せる。教職員定数の使い方は現場に委ねるべきなのだ。
(現代教育行政研究会代表)
引用「東京新聞・本音のコラム欄」