1.金武町はタコライス発祥の地。「チキン・バラバラ」なる巨大唐揚げも名物。2.フィリピンでは昔から「KJ」という省略形あり。最初は猪熊恒和演ずる沖縄男がそう呼ばれる設定だった。意味は「KY」に近いが実は「Kill Joy」の省略形。ちなみに山元清多氏が流行語「KY」に憤慨したのは、ご本人のイニシャルと同じだから。
燐光群+フィリピン国際共同企画『サザン・アイランズ』のために書き下ろした短編劇『雪を知らない』は、極東最大の海兵隊基地キャンプ・ハンセン前、沖縄・金武町の繁華街「新開地」にあった、もとAサインのクラブを舞台にしている。1996年に知花昌一さんとフィリピーナに米軍情報を聞き出しに行ったときの記憶が発想のスタート。
キム・カンボ演出、ソウルの劇団「青羽」(チョンウ)の『足跡のなかで』をタイニイアリスで観る。作者のコ・ヨノクは韓国語版『ブラインドタッチ』の最終アダプトをしてくれた人である。「スタイル」と「リアリティ」、「観念」と「ユーモア」の葛藤を踏まえて、集団ならではの表現を模索する姿は身につまされるし、励まされる。
緩和ケアについての戯曲を執筆中。四半世紀の付き合いになる廣木隆一監督も、乳ガンで亡くなった若い女性の実話をもとに『余命一ヶ月間の花嫁』映画化進行中。TBS資本の大作。電話でモルヒネのことなど話す。廣木さんとは妙にシンクロする時がある。寺島しのぶ少女版『マッチ売りの少女』は『ヴァイブレータ』撮影直後だったし。
とにかく籠もる。仕事。オグシオのことは知らない。夏恒例ITI能ワークショップ初日に顔を出すよう言われたが無理だ。この講座は国籍性別問わず受けられるが海外参加者のビザ問題等で参加者激減、事務局は困っている。銕仙会に十一日通って三万円(英語通訳つき)。なかなかない機会ではある。興味ある方は次回でもぜひ。
劇団青羽公演のためキム・カンボ氏が来日中。明日小屋入り。今日はマキノノゾミさんの好意でMOP『阿片と拳銃』を観せてもらう。カンボはソウルで一昨年『屋根裏』リーディング、今年サムリヌ劇場で『ブラインドタッチ』を演出。来年以降は『だるまさんがころんだ』『上演されなかった「三人姉妹」』韓国版を演出予定。
ううむ。仕事は進めているはずなのだが……。稽古に顔を出し、劇団員の結婚祝い。テレビでオリンピックなど観たくないが、帰宅後、横目のテレビで流れている『ランブルフィッシュ』が二十五年前と思うと複雑だ。かつて少年の立場で観たものを今や父親の立場で観るようになるという変化はまったくない。俺自身はガキのままだ。
福田内閣はよそ様に何か言うことは諦めている。竹島も韓国領で納得。原潜放射能漏れも当然と思ってたようだ。餃子問題は最初から興味ないんだろう。……テレビで横目に観たオリンピック開会式、世界の子供達の顔写真のグロテスクさ。人の数とお金に物言わせた演出に、チャン・イーモウってこんな人のはずじゃないと神経が波立つ。
先月記した特大オムライスについて質問多々。来て作ってほしいという注文も。当分無理だよ。思い出したのは、北海道・雪印パーラーの「オムライスキング」。二人半前サイズ。卵の下はシーフードケチャップライス。最近メニューにないらしい。北海道民少食化か。あるいはあれはカップルが両端から崩しながら食べていくものだったか。
マイレス、レイと久々の再会。二人は夏の日本は初めて。フィリピンより暑いなどと言う。配役は半分決まる。積極的な空気になるだろう。新婚旅行帰りの小金井君も元気そう。稽古後、缶ビールと豚汁で簡単な歓迎会。衣裳を担当して下さる黒テントの山下順子さん、さらに鄭義信さんはじめ、アジア交流に関わる方々も来てくださる。
マンホールで作業中に流された方もいるという。悲しいことだ。河野澄子さん死去。河野義行さん共々ご夫婦が遭遇した松本サリン事件に取材した『甘い生活』を書いて十二年になる。あの作品にぎりぎり描き得たと信じる「市民」「家族」というイメージを、今の私たちは持ちうるのか。澄子さんが愛したカーペンターズの旋律が甦る。
自民党麻生太郎幹事長就任早々の迷言。民主党江田五月参院議長に「政権を取るつもりなら、ちゃんと対応してもらわないといけない」と言った続きで。そりゃ文脈上、民主党がナチスということになる。四半世紀前、江田さんからの年賀状に「十年以内に私が総理大臣になります」とあった。誰がやるかじゃないよ、何をやるかだよ。
暑い。沖縄のことを考える。緩和ケアとはどういうことか考える。しかし、考えるだけ。すべき仕事はするしかないが、総論的に結論など出ない。外出は一度。環八近く、人見街道沿いのユニクロで、シャツを買う。TSUTAYAへ。半額セールなので何か参考になるものを借りるべきかとも思うが、メモしていた一作品だけを借りる。
出発予告の絵はがきによれば、私をインドネシア伝統捕鯨に導いてくれた沖縄のメフィストフェレス小島曠太郎さんは今日あたり、漁期の始まるラマレラに着いたはず。八年前、手漕ぎ船で十二メートルのマッコウクジラを捕らえた日々の記憶を私は人生の糧としている。緩和ケア取材、八時間。<沖縄三部作>についての別役実さん解説届く。
午前、新国立劇場から動きあり。カフカ的世界。森下スタジオ『サザン・アイランズ』山元清多さん稽古初日。久々再会の森下紀彦舞台監督。『ローゼ』舞監高橋淳一さんも十数年ぶり俳優復帰で読み合わせ参加。劇団員ひさびさ参加組は、はしゃぎすぎか、稽古後打ち合わせを聞いていると、ちとうるさい。ともあれ、また船は出た。