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“燐光群”主宰・坂手洋二が150字ブログを始めました。

是枝裕和監督『怪物』について思うこと

2023-06-05 | Weblog

是枝裕和監督最新作の映画『怪物』について思うことは、多々あるが、とにかく、映画を未見である方は、この文を読まない方がいいです。

端的に言えば、観るべき映画です。この時代にこの映画があった、ということを、共有する価値のある作品であることは、疑いがない。ちゃんと作ろうとしているし、様々な工夫の甲斐はあったと言えるだろう。肯定的な意見が多くて当然だと思う。

ただ、この映画、カンヌ映画祭で、脚本賞以外にもう一つ賞を取っているのですが、この賞の名前がどういう意味かがわかる人は、もう、映画の内容がわかってしまうので、幸いまだ知らないという方は、その賞のことも、映画を観終えるまでは、知ろうとしない方がいいです。

 

「怪物」というタイトルが適切かどうかはともかく、「モンスターペアレンツ」という言い方が流通していることを背景にこのタイトルが選ばれたらしいことは、前半の展開で容易に想像されてしまうので、それがどうも引っかかりを感じてしまう第一歩には、なりました。個人的には。

あと、偶然と、予定調和的なご都合の部分、説明のための設定、が、多すぎるのも、事実。「作りすぎ」であるとも言える。なのに後半、前半三分の一を重く担っていた安藤サクラの役の展開に、もう一ひねりがないのも、どうかなと思う。

 

あとは、見当違いかもしれないが、ジャニーズ事務所や子どもの時から「演じる」ことを当然とされている歌舞伎界のことが取り沙汰される今、未成年の子たちにこういう役をさせることの是非を問う声も、出てきかねない。

というか、本当に、時代は混迷しているのか、これまで露出していなかったことがあからさまになっているのか、是か非かを越えて、とにかく直面させられている「現実」を、私たちは見据えていくしかない。いや、描かれているある部分は、事実としてずっと「現実」にあったことで、この作品に限らず、私たちが、それにきちんと向き合う時期にきているということなのだろう、とも、思う。

 

こんなことは滅多に言わないのだが、ある場面の、カメラの動きが気になる。ここはフィックスであるべきだろう、という場所がある。私の誤解か、タルコフスキー好きすぎるからかも、しれない。わかる人にはすぐわかると思うが。

結局、「思うこと」の何分の一も、語れていない気がするが、まあ仕方ない。

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