Blog of SAKATE

“燐光群”主宰・坂手洋二が150字ブログを始めました。

いつの間にか本番が近づいている

2017-06-25 | Weblog
『湾岸線浜浦駅高架下4:00A.M.(土、日除ク)』。
稽古佳境、というべきか。
劇場入りまで一週間を、切った。
もう一ヶ月稽古している。
難解きわまりない戯曲だ。
しかし、それを、見やすい、わかりやすい芝居として、お届けしたいと思っている。
思っている。
思ってはいるが、本当に難しい。
その難しさは、作者・深津篤史の、作者自身の「無意識」の領域まで迫りたいと、私が、私たちが、思っているからだ。
戯曲には、言葉だけではなく、身体も、時間も、作者の性も死も、刻印されている。
誤読、曲解は怖れない。
簡単に結論は出さない。
私も演出家特権をぎりぎりまで行使しない。
みんなで考える。
みんなで感じる。
そんな稽古場だ。
二度にわたるオーディションワークショップで選ばれた出演者たちは、若い俳優たちの中では、もともとそれなりの水準だと思わせてきた者もいるし、今回の企画だからこそ生きるし育つ者もあり、ふだんよりも頑張らねばならないと今更ながら気づいているらしい者もいる。そういう十人強の密度の中で、次第にこの戯曲の「闇の奥」が見えてきた。
もちろんまだまだこれからだ。

写真は左から、橘麦(マサコ)、東谷英人(ヒデキ)。  
二週間前に撮ったイメージショットの一つ。(撮影・古元道広)
まあ、二人のセレクトについては、これは、宣材の写真である。他の出演者もそれぞれ気合いが入っている。全員が自分の代表作になるはずだと思っている。はずである。

麦は、出演女性陣の中では最年長のはずだが、配役はそれ故のバランスという部分はあるが、それを越えて、担うべき役割に向き合い、煩悶している。燐光群は『カムアウト』以来の出演だが、私の演出は初めて。一昨年の劇作家協会「せりふワークショップ」第一回の時に初めて知りあったのだが、この第一回ワークショップの参加俳優は、特に女子に注目すべき人々が多かった。
東谷は、燐光群と「せりふワークショップ」の常連なのであるが、今回は燐光群公演といっても年長組がいないので、本人が自分が背負うべき部分が大きいとひしひしと感じて行動しているようで、頼もしい。

昨夜、稽古が終わって後、芝居について麦とあれこれ話していて、私がもともと思っているあることを指摘し、そのほとんどは既に稽古中に皆にも話していたことで、何も目新しいことではないのだが、ある微妙な領域の話になり、あらためてある直観が迫ってきて、私自身がちょっと、ぞぞっとした。麦もなんだか震えが来たみたいで、どうやらこの直観をこれからの日々の指針の一つにしないといけないのかな、と思った。

深津くん。君が亡くなってから、三年。こんなふうに君の戯曲に取り組むことになるとは、思わなかったよ。
笑え。そして、泣け。一緒に、そうするから。


………………………………


深津篤史作・坂手洋二演出『湾岸線浜浦駅高架下4:00A.M.(土、日除ク)』

「深津演劇祭」参加。

7/6(木)〜19(水)ザ・スズナリ。


○出演者

杉山英之 東谷英人 荻野貴継 橘麦 高野ゆらこ
武山尚史 山村秀勝 宗像祥子 田中結佳
和田光沙 高木愛香 中瀬良衣

照明○竹林功(龍前正夫舞台照明研究所)
音響○島猛(ステージオフィス)
舞台監督○森下紀彦
美術○じょん万次郎
衣裳○小林巨和
演出助手○村野玲子
文芸助手○清水弥生 久保志乃ぶ
衣裳協力○ぴんくぱんだー・卯月
イラスト○山田賢一
宣伝意匠○高崎勝也
制作○古元道広 近藤順子

深津篤史は、「桃園会」を主宰。関西演劇の耽美・不条理派の中軸を担う劇作家・演出家として活躍。
『うちやまつり』で第42回岸田國士戯曲賞を受賞、『動員挿話』等で読売演劇大賞優秀演出家賞受賞するなど高い評価を得ながら、2014年に46歳で亡くなる。

深津演劇祭は、2016年9月から2018年3月まで、10を越える団体により、深津戯曲を上演するフェスティバル。関西を中心に開催される。
燐光群は本作によって、東京から唯一、参加する。

深津氏との出会いを、振り返る。
1997年、深津篤史は燐光群のアトリエである梅ヶ丘BOXにて、中国のノーベル文学賞作家・高行健作『逃亡』を演出(龍の会・世界初演)。これが深津の東京デビューであり、他者の戯曲に取り組む初めての体験であった。
その直後、坂手洋二は「劇作家協会新人戯曲賞」の二次審査で深津作『湾岸線浜浦駅高架下4:00A.M.(土日除ク)』に出会い、「こんなけったいなもの書く奴は他におらん」と言いつつ、強く推す。
1998年、深津は燐光群アトリエ公演『ロウチ氏の死と復活』(トマス・キルロイ作)のチラシを見て、山田賢一によるイラストに惚れ込む。橋渡しされ、以後、山田が桃園会・深津作品の宣材のイラストを描くようになる。
1999年、燐光群主催による梅ヶ丘BOX「ウィークエンドワークショップ」講師を、深津が務める。
2004年、開館した精華小劇場の[オープニング事業]を、桃園会『熱帯夜/うちやまつり』と燐光群『ときはなたれて』の連続公演で飾る。
2006年、桃園会の江口恵美が、燐光群『スタッフ・ハプンズ』『チェックポイント黒点島』に出演。


タイムテーブル等はこちらをご覧ください。



http://rinkogun.com/wangansen.html
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