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Blog of SAKATE

“燐光群”主宰・坂手洋二が150字ブログを始めました。

溌剌としたモノクロのイタリア映画新作『ドマーニ! 愛のことづて』

2025-03-22 | Weblog
映画『ドマーニ! 愛のことづて』。
ヤン・ヨンヒ監督が大絶賛しているのと、イタリアン・ネオリアリズム的なモノクロ映画のようで、なんとなくよさげな予感もあって、あと、次の予定との間にぴったり時間がはまったこともあって、観ました。ちゃんとした映画を観たなあ、という気持ちにさせられます。

1946年5月。終戦直後荒廃したローマで家族と暮らすデリアは、夫の暴力、介護させられる面倒な義父、悪ガキの息子二人といった男たちにうんざりさせられながら、複数の仕事を掛け持ちしている。男たちがほぼみんなダメダメで、男性としては、肩の身が狭い。長女は母親みたいになりたくないと思っているが、この理不尽は母親のせいではない。
「たくましく生きる市井の人々と権利を渇望する女性たちの姿を描き」というキャッチフレーズの後半が、ラストに具体的に現れてくるのだが、もう少しまとめ方はあったはずと思うものの、こちらも『天皇と接吻』で日本のこの時代を描いている身、分岐点となる時代のニュアンス、切実さ、人物たちのとまどいに、おおいに頷きながら観ることになる。

 イタリアのコメディアン・俳優パオラ・コルテッレージが初監督、自ら主演を務めたというが、俳優としても、映画のつくり手としても、実に堂々と、溌剌としている。
イタリアン・ネオリアリズムのふりをしながら、ときどき、悪戯や遊びを加え、現実そのままのリアリティーよりも登場人物や観客の感受性に働き掛ける。TNT爆弾の件りは無茶なやり逃げであるが、逃げ切ってしまうのが、おかしい。ちゃんとしているけれど、非常に抑制されたともいえるユーモアのあり方が、新機軸である。

本国イタリアで600万人を動員し、国内年間興行収入No.1の大ヒットを記録、というのは、いいことだなあ、と思う。
ただ、邦題『ドマーニ! 愛のことづて』だと、何のことだかわからないだろう。
「イタリア映画祭2024」では「まだ明日がある」のタイトルで上映されたという。「まだ明日がある」の方がいいとも思えないのだが……。
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