Blog of SAKATE

“燐光群”主宰・坂手洋二が150字ブログを始めました。

初日寸前の中止は、せつない

2022-06-09 | Weblog

都内で今日が初日だったはずのある公演が、二日前に中止というニュース。「予定しておりました内容での上演は不可能と判断いたしました」「かねてより稽古を重ねてまいりましたが、現段階ではお客様にご覧いただき、お楽しみいただくクオリティに到達できないと判断いたしました。キャスト・スタッフの皆様にも最後までご尽力いただきましたが、作品をまとめあげることができず、誠に勝手ながら公演中止とさせていただきます」ということだ。

ぎりぎりまで上演に向けて働いていたであろう従事者・関係者のことを思うと、同業者としては、残念でしたと言うしかない。

ただ、関係者でない者が、中止=責任問題、みたいな言い方をするのは、どうかと思う。ブロードウェイなどでは、プレビュー公演を開始した公演が、これで正式な上演として評価に耐えられると判断した時点で「初日」としてオープンするというやり方は一般的にあり、「ついに『初日』があかなかった」という公演も、ごくごく希にだが、あるという。各紙ともプレビュー中には「批評」は出さないことになっているし、 出資者などが「ロングランに耐えられる水準に達しているか」などを判断した上で開幕する場合もあるのだろう。ただ、それらは事業として「リスクを減らすための選択肢」ということでもあり、一概に「クオリティ」と関わっているわけではないのかもしれない。

詳しい事情はわからないので、論評は差し控えたいが、該当公演が、クオリティに納得することができるまで人に見せたくない、という判断が選択肢に入りうる現場だったのであれば、それは、ある意味、恵まれた現場であるということもできるのかもしれない。

この二年余り、コロナ禍で上演を中止させられた公演は、多くある。初日寸前に中止になった例も多いと聞く。当事者もお客様も、どれだけ落胆されたことかと思う。

私も昨年はコロナ禍ゆえ延期になったツアーの公演が何箇所かあった。なんとか時期をずらして公演はできた。幸い、「初日」そのものが、あかなかった体験は、まだない。

時々見る悪夢は、準備ができていないのに初日があいてしまい、その上演中に舞台や袖にいる、というものだ。見たくて見ている夢ではないが、夢を見ることじたいが一種の厄落としのようなことになっているのかもしれず、じっさいにあってはいけないことだ、と思っている。そして、そうした夢によって、苦労があっても共にある人々への感謝を、忘れてはならない、と、思わされるのだ。

 

 

 

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