先月からずっと、クジラについての仕事をしている。
これはたまたまそのタイミングだったのだが、ちょうど今、周囲では、日本がIWCを脱退したことについての論評が山のように出ている。一家言ある感じの発言が多く、驚かされる。どの立場ということではなくて、皆さんそこまで捕鯨についての意見をお持ちだったのなら、もっと以前から議論しているべきだろう。
デマがいっぱい飛んでいることが、気にかかる。
まず、ネット上で垂れ流されている「ノルウェー・アイスランドなどからの輸入もできなくなる」という言説は、嘘、フェイクニュースである。鯨肉の輸出入はワシントン条約以外には規定がないし、IWC加盟国どうしでしか貿易できないなどという取り決めはどこにもない。
IWCという組織についての誤解もある。本来は規制のための組織ではなく、持続的な商業捕鯨の管理のために作られた。IWC自身が商業捕鯨の管理を放棄した、という言い方もできるのである。
そして、仮に政治の力学が反映する部分があったとしても、「政治主導の決定」と一色に決めつける根拠は、あるのか。「1933年の国際連盟脱退と重なる」というのは「国際組織からの脱退」のイメージから勝手に思うのであろうが、あまりにも子供じみた短絡だ。また、捕鯨を「一部利権のため」と断じるなら、証拠を示す必要があるだろう。
日本の捕獲量がこれから大きくなるはずはない。
私が信頼する方々が言うのは、「日本が公海での調査捕鯨を止めると決めた」ことこそが、事実として大きいという考え方だ。
これからの日本がどう動くかは見守らなければならない。でもそのとき決して、一部の人間の考え方でしかない「捕鯨を禁止する」という立場をとることが前提となってはならない。クジラと共に生きる人びとは、現実に存在しているのだ。
写真は、塩クジラ。
焼いて、熱湯をかけて、もどす。汁物に入れるのが一番、合う。