A PIECE OF FUTURE

美術・展覧会紹介、雑感などなど。未来のカケラを忘れないために書き記します。

未読日記353 「放課後のはらっぱ」

2009-12-15 22:11:59 | 書物
タイトル:放課後のはらっぱ 櫃田伸也とその教え子たち
編集:宮村周子(来来/LaiRai)、鈴木真子(来来/LaiRai)
デザイン:山本誠(山本誠デザイン室
翻訳:クリストファー・スティーヴンス
印刷・製本:アベイズム株式会社
発行:あいちトリエンナーレ実行委員会、愛知県美術館名古屋市美術館中日新聞社
カタログ1発行日:2009年10月23日第2刷(2009年8月27日第1刷)
カタログ2発行日:2009年10月23日第2刷(2009年10月15日第1刷)
内容:
愛知県美術館(2009年8月28日―10月25日)、名古屋市美術館(2009年8月22日―10月18日)にて開催の<放課後のはらっぱ 櫃田伸也とその教え子たち>展の図録。
カタログ1+カタログ2+英訳ブローシャ、箱ケース入り

<カタログ1>
ごあいさつ
「櫃田伸也―風景の導くままに」小西信之(愛知県立芸術大学准教授)
「遮るものと溢れるもの―櫃田伸也の絵画」金井直(信州大学准教授)
図版 凡例(略歴構成=中西園子)
櫃田伸也
「中西夏之からの手紙」中西夏之
設楽知昭
櫃田珠実
奈良美智
加藤英人
小林孝亘
長谷川繁
村瀬恭子
額田宣彦
古草敦史
杉戸洋
森北伸
登山博文
佐藤克久
木村みちか
安藤正子
加藤美佳
城戸保
小林耕平
渡辺豪
「はらっぱ、その豊かな可能性」中村史子(愛知県美術館学芸員)
「櫃田伸也という画家とキャンバスに夢を込めた若者たち」笠木日南子(名古屋市美術館学芸員)

<カタログ2>
図版 「放課後のはらっぱ」展 展示風景とその世界
「心の原っぱ」峯村敏明(美術評論家)
「放課後のはらっぱ」奈良美智
櫃田伸也の肖像画
「無事オープニングを終えて」森北伸
「黄色い箱」杉戸洋
出品作品リスト
参考文献:中西園子

<English brochure>
In the Little Playground – Hitsuda Nobuya and his surrounding students –
Contents
Hitsuda Nobuya : Leading Straight to the Landscape by Konishi Nobuyuki
Obstructing and Overflowing : The Painting of Hitsuda Nobuya by Kanai Tadashi
The Empty Spaces After School by Nara Yoshitomo
Artists’ Profiles

頂いた日:2009年11月23日
頂いた場所:なびす画廊
銀座のなびす画廊に瀧田亜子展(2009年11月23日―11月28日)を見に行った際、ギャラリーの方より頂いた図録。いつもありがとうございます。
しかし、残念ながら展覧会は見ていない。展覧会の内容は、愛知県立芸術大学で教鞭をとっていた画家・櫃田伸也とその教え子たちの作品を同じ空間に展示するものである。それは、教育者であり画家としての櫃田の芸術観の浸透と影響を検証するものであると言えよう。
「放課後のはらっぱ」は櫃田が描いた絵画に「はらっぱ」と思わしき風景が広がっていることと、愛知県立芸術大学が位置する長久手に「はらっぱ」があったというところからきているようだ。とてもいいタイトルだと思うが、放課後にはらっぱに行く時間とお金がなかった情けない我が身を呪うばかりである。

さて、本書だが2冊組箱入りの豪華図録だ。カタログ1は会期前に発行され、カタログ2は展示風景を収めて、会期中に発行されている。本書を見てまず驚くのが、ページのところどころに櫃田の作品が散りばめられていることである。きっと実際の展示風景もそうだったのだろう。「先生」と教え子を比較してしまうのも気がひけるが、櫃田作品の方が質が高く、レベルの差を見せつけられる。これは酷なことだと思う。まして、最近は発表から遠ざかっている作家も何人かおり、櫃田のようにはいかない現代という時代を思わずにはいられない。

続いて、テクストについて触れよう。カタログ2がすごいことになっているのである。いまだかつて美術評論家・峯村敏明氏と奈良美智氏のテクストが同じ冊子に収録されたことがあっただろうか?目次を見た時、なにか意図があるのではないかと思ったぐらい、同居することに違和感を覚えるお二人である。しかも、あえてかどうかタイトルの「原っぱ」と「はらっぱ」をそれぞれ使い分けている。そんなわけでとてもおもしろい図録なので、「はらっぱ」に寝っ転がって読むとしよう。
おっと、この辺りには「はらっぱ」がなかった。