A PIECE OF FUTURE

美術・展覧会紹介、雑感などなど。未来のカケラを忘れないために書き記します。

未読日記347 「Makoto MORIMURA」

2009-12-06 23:46:17 | 書物
タイトル:森村誠作品リーフレット
発行:Gallery OUT of PLACE
発行日:2008年2月21日
価格:200円
内容:
図版7点
作家略歴
「白き惑星の果て」竹内敬一(アートライター)

購入日:2009年11月13日
購入場所:TOKIO OUT of PLACE
購入理由:
TOKIO OUT of PLACEにて開催された展覧会<森村誠:Dear Thomas>(2009年10月23日―11月28日)に行った際に購入。本リーフレットは昨年、奈良のGallery OUT of PLACEにて開催された展覧会の際に発行されたB5サイズ、2つ折りのリーフレットである。

かねてより美術と地図の関係を調査・研究してきた身としては、興味をかき立ててやまない展示であった。なぜなら森村誠は、日本の現代美術においては稀なほど地図を使用した作品を制作しているからである。その作品は、地図の中にある文字から、特定の文字を構成するアルファベット以外を修正液で消すというものである。例えば、『A Map of Paris<fuck>』(2007)では、f,u,c,k以外の文字すべてが修正液で塗りつぶされている。ここでは、記号論的、情報論的な解釈も可能と思われるが、その地図の用いられ方は重層的である。
いや、重層的なのは「地図」の方なのかもしれない。文字を修正液で消すだけなら、初期の『 th d』(2002)のように、本を素材に修正液を塗り重ねていけばいい。だが、本というのは開かないことには、なにを消去されたのかがわかりにくい。しかし、地図というメディアは一望的な視認性があるため、容易に「修正」された世界を見ることができるのである。と同時に、「修正」というよりは「操作」と言いたくなるような要素も森村作品にはある。ある文字を修正液で塗りつぶし、ある文字は消されずに残される。それは、まるで版画のようである。与えられた文字情報を修正液1つで世界情報を改変させ、新たな世界を立ち上げること。そこに、昨今の私的な内省的世界観の表出はなく、世界と対峙し、取り結ぼうとする意志と倫理を感じることができるのである。地図という情報システムに果敢に分け入り、膨大な文字情報の網目を修正液1つで歩き回る森村の行為は、ひそやかでありながら、行為の痕跡を世界に確実に残しているのである。