何故に「佐渡の翼」ブログはこれほど人気があるのだろうか?佐渡観光情報から性風俗ネタまでを扱うジャンルの幅広さに加え、書き手の個性溢れる軽妙洒脱さだろう。飲食店情報に至っては、ピンは、一流料亭、客単価が三万円の銀座の寿司屋、ミシュラン★★★のフレンチレストラン、キリはB級グルメラーメン屋、ファミレス、大衆食堂と、守備範囲が誠に広く、しかも神出鬼没と軽快である。その読者層は、金持ちはもとより、一般貧乏人にまで裾野が広がり、佐渡の全人口の一割近くの支持を固めている。その知名度は、実像が見えない分、市長や地元の有力議員などよりも遥かに高い!3年後の市長選への立候補をちらつかせ、その野望を秘めているかのような幻想を振りまく手法は、生まれも育ちも佐渡島の根っからの島民には到底真似の出来ない洗練された荒技、いや、神技としか言いようがなかろう。その時々の政治経済文化ネタを盛り込みながら分かりやすく解説した日記風記事や、過去の華々しい経歴を紹介した記事を食い入るように読み貪る、佐渡の翼中毒症患者まで、その支持層に取り込む大胆豪放磊落さに人々の熱い視線が注がれている。この「佐渡の翼ブログ」は、若い女性読者に人気があるのが強みだ。猿山の世界では雌猿にそっぽを向かれたらボスになれないのと同様、昔から、選挙では女性からの支持が高くなければ勝てないのが常識だ。このブログの記事内容は、書き手の多趣味やその歩んで来た破天荒な人生の裏表かもしれない。かくも愛され、そして時にはくさされ続ける不思議な人物「翼」君!佐渡島民が興味を示すニュースとは、やれ、火事だ、泥棒だ、救急車だ、パトカーだと言った事件事故、そして、やれ、どこの島外資本のチェーン店が上陸しただの、どこに飲食店が新規開店した、どこの店が潰れた、どのスーパーが潰れそうだのと言った他愛もない日常の出来事である。そしてどこのスナックには可愛い子、若い子がいるの?ラーメンならどこが美味いのか?お勧めの居酒屋は?と言った、飲食店ネタである。だから翼君の釣りネタ記事などは格好の井戸端会議の話題に上る。「翼君は、金持ちでかっこよさそうな人らしいけど、どんな人なんだろうね?」と、かくして島民の翼君に対する興味は尽きない。高身長、高学歴、高年収と3Kが揃った完璧な翼君だが、唯一の弱点は、交際相手が貧乏人の娘と言う不釣合いだ。「釣り合わぬは不縁の元」と言うので、翼君にふられた島内女性読者達は、これを根拠に二人の交際破局を願っているのかもしれまい。
記事内容が「単なる願望、嘘、妄想、食言」ではなく、全て実体験に根ざしているから説得力がある。説得力があるからこそ、新興宗教同様、熱狂的な信者は騙されながらも付いて来る。これも5年間地道に取材を続け、書き続けたからこそ、これだけの信用を勝ち得たのだ。無論、この信用はただで手に入れた訳ではない。佐渡取材旅行に毎年約60万、5年間で総額300万近い先行投資をした結果である。そして佐渡島民にささやかな権力行使が出来るだけの環境を整えた。これらは運では無く、全て努力の賜物だ。そして誰にも真似のできない教祖崇拝のシステムを作り上げ、翼王国を築き上げる事に成功した。実に用意周到であり、いくら冗談とは言え、佐渡の政界関係者は少なくとも向こう3年間はこのブログから目を離せまい。
蜂の巣を突付っついたかの如く、島民を上を下へと大騒ぎさせた、あの5年前の盗作事件はすっかりと色褪せ、次第に人々の記憶から忘れ去られようとしている。米国のビル・クリントン元大統領同様、かつての国民的な人気をすっかり取り戻した翼君、今では、中傷・羨望輩に対する攻撃的な姿勢は影を潜め、温かみすら感じさせるブログを書くようになったと感じる読者は多いのかもしれない。これもひとえに挫折を経験したからこそである。