昨年の8月13日、筆者らは、草津温泉経由で、志賀草津高原道路に入った。この道路は、冬季は通行止めになる。夏も霧がたちこめ、更に火山性の硫化水素ガスが噴出し、見通しの悪い道路である。途中、白根山の火口湖である、湯釜に立ち寄った(画像1)。この湖は、世界で最も強い酸性湖である。噴火を繰り返し、草木を寄せ付けない白い山肌とエメラルドグリーンの湖面が神々しい。直径300m、水深30m程である。10年前のカナデイアンロッキーのバスツアーで、これのbig versionである火口湖をいくつも見たことを思い出した。特に、レイク・ルイーズの冷たい水と、エメラルドグリーンの湖面が今でも忘れられない。
レイク・ルイーズの湖面前でのショット!写真では青っぽい色に見えるが、実際は、湯釜のようなエメラルドグリーンだ
カナダのanother lake!こちらはマリンブルーだ。
バンフスプリングスホテル!
ホテルの裏側
志賀草津高原道路を降りて、長野県下高井郡渋温泉郷に到着し、今夜の宿である、「金具屋」で旅装を解いた。ここ渋温泉郷は、カランコロンと石畳の上を湯下駄を鳴らしながら、九つの外湯巡りが楽しめる、実に温泉情緒豊かな街だ。一番湯から九番湯まであり、これらを全部制覇すると、「九(苦)労を流す九つの外湯巡り」と洒落込むことができるという趣向だ。各自が宿泊している宿からマスターキーを借りて、外湯所の鍵を開けて、順番に入浴するという寸法だ。最後の九番湯は、別名を結願湯(けちがんゆ)と言い、強酸性の湯であった。残りの八湯は、ほとんど泉質が似ているので、地元の人に言わせると、結願湯に入れば、あとは無理して入らなくともよいとのことであったので、手抜きをして、結願湯だけで終わりとした。
さて、「金具屋」である。チェックインが済むと、案内係の仲居のおばさんが、一番軽そうな荷物を抱えてすたすたと歩き出した。あわてて、「重いほうを持ってくれよお~」と追いかけるはめになった。お部屋は、中庭を見下ろす作りになっており、こじんまりとした小奇麗な部屋であった。ここ、金具屋は、歴史の宿と銘打つだけあって、創業240年、非常に古い作りで、贅を尽くした趣の異なる29の客室からなっていた。館内には、五つの貸切風呂と、二つの大浴場と、一つの露天風呂の計八つの湯があり、驚いたことに、全て泉質の違う源泉であった。というのも、渋温泉は、1300年前に、行基が発見したと伝えられているが、泉脈は同じでも、採掘する場所が違うと、微妙に泉質が異なるという全国でも珍しい温泉なのだ。いやあ、温泉好きにはたまらない宿だが、「金具屋」という屋号は、御先祖が鍛冶屋職人(鋤、くわ、鎌、金槌、鋸などの金具類を生産し、道具文化を支えた職人集団)だったことに由来しているのだそうである。そのため、荷車や人力車、風車などの車輪の一部が館内のいたる所に埋め込まれていた。
夜はちょうど、渋温泉夏祭りが開かれていたので、内輪片手に浴衣と湯下駄で温泉街をそぞろ歩いた。夜店を冷やかしたり、アマチュア落語家の口座を楽しんだりした。お料理には、信州名物馬刺しが出た。生肉はO-157感染が恐いので、「食べるな」と言っておいたにも関わらず、誰かが誤ってペロリと全部食いらげてしまった。大変おいしかったとのことで、結局何事も起こらなかったようだ。よかったなあー。その他、信州牛のステーキや鯉の甘露煮など、食材はすべて山の物を使用しており、概ねおいしかった。明日は、次の逗留地である草津へ戻る旅となる。
金具屋全景
金具屋の玄関
これは荷車の車輪と思われる
菓匠清閑院の「飲むゼリー」。今人気の飲むスイーツで、爽やかに喉を潤してくれます。
今日もお弁当、喜多やまの料亭弁当です。ま、くせだとは思いますが、お弁当を45度の角度で撮影するよりも、このように90度の角度で撮影した方が見栄えは良い!