(タイトル)
お父さんの屋根裏部屋 <Her father's attic>
(作者)
フィリッパ・ピアス
(あらすじ)
ロザムンドは、ロンドン郊外で農業を営むブラニング家の一人娘で、母親の寵愛を受け甘やかされている。母は、彼女が自分の美貌を受け継いだので、大きくなったらロンドンに出てモデルになり名声と富を得ると信じている。一方、家業を継ぎ農夫となった父は、5人兄弟の末っ子でちびで内気な性格だったので、少年時代からいじめられて育ち、現在も妻から馬鹿にされている。
ロザムンドの家は、特に由緒がある家柄ではなかったが、曾祖父が生まれる前の大家族時代に建てられた大きな屋敷だったので、いくつかの使われない部屋がある。父の少年時代までは使われていた屋根裏の子供部屋もその一つである。父は、わが子の安全を考えてその屋根裏部屋に続く階段のドアにカギをかけていた。月日の経過とともにドアは虫に食われ、彼女もその前を通るたびに叩いていたので、ある日の午後そのドアが突然開いた。
ロザムンドは、その時たまたま父が外で仕事中、母も台所で来客の準備に追われていたので、ドアを押し開け入ってみようと考える。埃だらけの階段を上りもう一つのドアを開け、父がかつて過ごした子供部屋に入る。長細い部屋は、がらんとしており、いくつもの作り付けの棚や茶箪笥がある。その中に扉がゆがんで開けにくくなっていた茶箪笥を見つけ、半開きにして中を覗くが何もない。さらに窓辺に行き、屋根越しに納屋や教会の尖塔を眺め、その景色に魅了される。
そうしているうちに日が沈む。ロザムンドは、屋根裏部屋から出る時間であることを知り、元にもどろうとするが、闇に優しく包まれ、溺れていくように扉の壊れた茶箪笥のそばで横になる。彼女を暗闇と恐怖が襲う。
父は、虫の知らせでいつもより早く帰宅し、ロザムンドを探すが見つからない。娘と同じように暗闇の中で溺れるような恐怖を感じるが、階段のドアが開いているのを見つけ屋根裏部屋に向かい、茶箪笥の前で目を開けて父を見つめている娘を発見する。
妻が食堂で二人を見つける。娘はいつもと変わらなかったが、夫は疲れた様子で膝の前で指が震えて、顔は真っ青で汗をかいている。
父は、子供のころの記憶をたどる。兄たちに子供部屋の茶箪笥に閉じ込められ、その扉が開かなくなったこと。その時の暗闇と恐怖が永遠に消えない。
だが、娘の心が自分と一緒であることに気づき胸の内で喜ぶ。ロズムンドは、父を今まで会ったことのない誰かだが、今までにないような一番大切な人としてじっと見つめる
(感想)
親子は姿や形だけでなく心まで遺伝するのだろうか。本短編では、父の心の葛藤が娘にまでしっかりと受け継がれていることに父は喜び、娘が共感する物語になっている。主人公が暗闇に覆われた屋根裏部屋で自分から父の因縁の場所で体を横たえ、そのことを父が虫の知らせのように感じとる場面が印象的だ。反面、ドアが自然に開いてしまうところに幽霊の存在も感じさせる。
お父さんの屋根裏部屋 <Her father's attic>
(作者)
フィリッパ・ピアス
(あらすじ)
ロザムンドは、ロンドン郊外で農業を営むブラニング家の一人娘で、母親の寵愛を受け甘やかされている。母は、彼女が自分の美貌を受け継いだので、大きくなったらロンドンに出てモデルになり名声と富を得ると信じている。一方、家業を継ぎ農夫となった父は、5人兄弟の末っ子でちびで内気な性格だったので、少年時代からいじめられて育ち、現在も妻から馬鹿にされている。
ロザムンドの家は、特に由緒がある家柄ではなかったが、曾祖父が生まれる前の大家族時代に建てられた大きな屋敷だったので、いくつかの使われない部屋がある。父の少年時代までは使われていた屋根裏の子供部屋もその一つである。父は、わが子の安全を考えてその屋根裏部屋に続く階段のドアにカギをかけていた。月日の経過とともにドアは虫に食われ、彼女もその前を通るたびに叩いていたので、ある日の午後そのドアが突然開いた。
ロザムンドは、その時たまたま父が外で仕事中、母も台所で来客の準備に追われていたので、ドアを押し開け入ってみようと考える。埃だらけの階段を上りもう一つのドアを開け、父がかつて過ごした子供部屋に入る。長細い部屋は、がらんとしており、いくつもの作り付けの棚や茶箪笥がある。その中に扉がゆがんで開けにくくなっていた茶箪笥を見つけ、半開きにして中を覗くが何もない。さらに窓辺に行き、屋根越しに納屋や教会の尖塔を眺め、その景色に魅了される。
そうしているうちに日が沈む。ロザムンドは、屋根裏部屋から出る時間であることを知り、元にもどろうとするが、闇に優しく包まれ、溺れていくように扉の壊れた茶箪笥のそばで横になる。彼女を暗闇と恐怖が襲う。
父は、虫の知らせでいつもより早く帰宅し、ロザムンドを探すが見つからない。娘と同じように暗闇の中で溺れるような恐怖を感じるが、階段のドアが開いているのを見つけ屋根裏部屋に向かい、茶箪笥の前で目を開けて父を見つめている娘を発見する。
妻が食堂で二人を見つける。娘はいつもと変わらなかったが、夫は疲れた様子で膝の前で指が震えて、顔は真っ青で汗をかいている。
父は、子供のころの記憶をたどる。兄たちに子供部屋の茶箪笥に閉じ込められ、その扉が開かなくなったこと。その時の暗闇と恐怖が永遠に消えない。
だが、娘の心が自分と一緒であることに気づき胸の内で喜ぶ。ロズムンドは、父を今まで会ったことのない誰かだが、今までにないような一番大切な人としてじっと見つめる
(感想)
親子は姿や形だけでなく心まで遺伝するのだろうか。本短編では、父の心の葛藤が娘にまでしっかりと受け継がれていることに父は喜び、娘が共感する物語になっている。主人公が暗闇に覆われた屋根裏部屋で自分から父の因縁の場所で体を横たえ、そのことを父が虫の知らせのように感じとる場面が印象的だ。反面、ドアが自然に開いてしまうところに幽霊の存在も感じさせる。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます