ロイス ジャズ タンノイ

タンノイによるホイジンガ的ジャズの考察でございます。

ジャズはサバンナへ帰る

2007年01月21日 | 徒然の記
ネルソン・アベニュー・モーニングが低く鳴りだして、1月というのに温かい冬、登場した客はコートを脱ぐと、あらわれたスーツもまた黒ずくめだった。
室内を見回し、おやーっと笑みをこぼしている。
「コーヒーを...」
「たまたま前を通って、ちょっと休みたいだけですが」と、音楽に興味はないそうである。
豆挽きがシャーッと珈琲の香り立てると、ソフアに身を沈めたそのほかと様子の違う客に、思うことがある。
コーヒーをたまに口に含みながら、深々とソフアに身を沈めて窓の外を眺めているその客に、おせっかいとは思ったが、古ぼけた1枚の写真を見せた。
すると、サッと身を起こして、自分から話り出した。
そのときそこに、土蔵でアルテックとタンノイを鳴らす客人が、若い女性を伴って登場された。
その女性は、アナログでなく専門分野がデジタルで、パソコンの組み立てはお手のものとご紹介があって、はじめて注視すると才色兼備の麗人だ。黒ずくめの男は黙った。
土蔵のご主人は、最近の出来事を「とっておきのトランスに「2A3」をプッシュプルでA級10ワットのアンプが完成しました」と、さりげなく申されながら、フィードバックのことなど、技倆の粋を傾けた喜びを隠しきれないご様子である。
完成したアンプの音を祝して、聴き比べの参考にビッグバンドからオーケストラまで5曲ほど、盛大な音量で聴いていただいた。
ちらりと、音楽に関心のないと申される黒ずくめの客を見ると、音の洪水の中で、どうやら寝息を立てている。
2人がお帰りになると、また目を覚ました黒ずくめは話す。
「そういえば、たまたま川向うの『B』にも行ったことが有る」と。
「そこは、日本有数の『しにせ』と言われてます、良い経験をされましたね」当方は出向いたことはないが、たまに、JBLの音がなつかしく思われるのは、モダンジャズという自由な前衛がいかにもストレートに聴こえるからである。
黒ずくめは「へええ、音の何がどうなのかさっぱりわからない」と申されながら、お代わりした珈琲を飲み干すと、自分は仙台の下町に住んでいますと言い、皺のない札を出して、お帰りになった。
先週、お見えになった客人が申されるには、店舗で使用する大根の漬物150本が、暖冬のせいで、干乾燥のタイミングを計れないと。


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