ロイス ジャズ タンノイ

タンノイによるホイジンガ的ジャズの考察でございます。

『ハッセルブラッド』

2012年05月02日 | 諸子百家
むかしお世話になっていた会社で、ある時、席を並べていた隣の人物は趣味でハッセルブラッドを持っていた。
釣好きで、「きのうはせっかく皆が集合したのに、海浜丸の船長あっさり×これだって。低気圧高波でガチョーンです」
手を×印に組んで船長の断るしぐさをしたが、我々も彼の勧めに10人ほどで釣休日を楽しんだとき、竿から餌から気配りてきぱきの釣船に大満足したことがある。
普段の社内の様子にない不思議な才能を感じた。
営業が、あるとき言ってきた。
「取引先の社長が、オレの同窓会の撮影を頼むといっておりますので。成○大学二十年期クラス会だそうで、ひとつよろしく」
ほかにも、西○デパートの七五三祝い撮影応援などというのもあったり、そのころ我がチームは社内で暇に思われているらしく、いろいろなところに助っ人に駆り出される運命であった。
会場に時間ぴったりに着くと、すでに宴会たけなわで、とくにクラスメート同士で結ばれた男女がいまでも嫉妬酒の中心に座らされ照れている様子が可笑しかった。
記念撮影の時間となり、全員に並んでもらったところ、名士達はいつまでも自由に振る舞って揃わない。
ここは適当にストロボを焚くところだが、彼は頑としてシャッターを切らず、辛抱強くハッセルのタイミングを待っている。
依頼主も集団の中から、いいから撮って!と声を出しているが、彼はいっこうにハッセルブラッドのシャッタ―を切ろうとしないので、全体を見ているこちらは次第に焦ってきた。
――適当に撮ったら・・・。
「いや、あとになって写真を見たときキチンと写っていないと、必ず文句があるのです」
彼は動じず落ち着いている。
後日営業は「良く写っているとお褒めの言葉をもらいました」と礼に来て、そのときおもわず隣の席にいる表情一つ変えない、ふだんはひょうきんなところもある人間を眺めた。
『ハッセルブラッド』はブロニーカメラで、ドイツ製ツアイスレンズをセットし、画像の秀逸が評判であるが、スエーデン製というところに意外を感じる。
大戦中、ドイツの偵察機がスエーデン領内に不時着した機体を差し押さえて、搭載カメラを分解し、より以上のものに仕上げるセンスがあった。
スエーデン鋼というものか薄くて丈夫なボデイ構造は、レンズの性能とあいまって、アポロ宇宙船で月まで飛んでいったことが誉れである。
そのとき世界中の人間が見た月面に広がる風景は、アポロ専用に設計された水晶の単結晶ツアイス・レンズで撮影されたものという。
レコード盤を見るとき、デジタルカメラは銀塩フイルム時代の世界を越えたのだろうか。
またまた髪の長い、タイプの違う女性がジャズを聴きに登場した。







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