ロイス ジャズ タンノイ

タンノイによるホイジンガ的ジャズの考察でございます。

Fフイルムス

2011年08月15日 | 諸子百家
ズートが1973年に『at ease』を吹き込んだあのころ、千駄ヶ谷の坂道を登ってゆくとロスのような風景はまだ空間が多かった。
訪問したF氏の映画制作会社は、この千駄ヶ谷坂道の途中に茶色の偉容のマンションがどっしりして、初対面であるが、ツール・ド・フランスの遠征撮影や各種コマーシャル撮りなどさまざま制作に多忙でおられた。
ガラスドアを入ると、いきなり10人ほどめいめい自由かってな行動の社員がおり、さらに奥で16ミリシネカメラを三脚の上で回している三人が、そのレンズを断りなく当方に向けてジーッとやりはじめたがフイルムは入っている?。
持っていったケーキを箱につめたものをわたすと、社長は現れて、バリトン声で「忙しくてメシを食う暇もない」と菓子パンをかじりながら蜂須賀、真田といった陣羽織をイメージさせる風貌で、当方を圧倒した。
上階の自宅に専務という人が伺候していて、こちらの出身地を耳にすると、
「これから夜行でその一関を通過し、千厩まで仕事の打ち合わせに行くんですが」
と言った。
社長は聞こえないように、マインブロイの金色の紙のかかったビール・キャップを次々抜くと、めいめいに注ぎながら、大皿のサーモンのマリネなどを勧められ、当方には親御さんのポートレートを一枚見せてくださったが、広角画面でガバッと撮った仕上がりが異様に鮮烈でいまも記憶に思い出す。
きょう八月十五日は終戦記念日で、ズートのジャズを聴くと、かって太平洋に対峙した国の音楽であるというものの、彼らの演奏はこのような日にも似合った暖かいフレージングで、いつもはどのLPも二曲程度を、つい表面にまで針を通してしまった。





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