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ロイス ジャズ タンノイ

タンノイによるホイジンガ的ジャズの考察でございます。

ライトハウスのハワード・ラムゼイ

2007年04月04日 | 徒然の記
「わたしの店では、オーナーの趣味の『タンノイ・ヨーク』が備えつけてあるのです。アンプはマッキンの240で、鳴っています」
恵比須から来られたその客はテーブルにメモを広げると、いまのレコードは?とジャケットをメモされて、眼の大きな奥方とロイヤルのサウンドを楽しんで居られる。
そのお店のカウンターで、来客の話題にのったロイスのタンノイの音を、こうして卯月の4月に黄砂の風に乗って探検にきてくださったのであった。
ところで、川向こうの『老舗』について、電話のネゴシェーションが、やや御不興のおもむきである。昨夜の客の話では、新刊を出されて意気軒高とうかがったばかりだが...。
「まあ、行ってごらんになっては...、では特別に秘蔵のROYCEの車を出しましょう」
するとそれまで、つつましく無言を通しておられた奥方がはじめて言った。
「それは、ひょっとして、ロールス・ロイスですか?」

☆ジャケットは50年代ロス郊外のハーモサ・ビーチにあるライトハウス。
ハワード・ラムゼイはスタンケントン楽団出身のベース奏者。シェリーマン、ハンプトンホース、ショーティーロジャースなどの顔が見える。


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還暦のタンノイ

2007年03月11日 | 徒然の記
『タンノイ』を、これまで一度も聴いたことがないと申されて「弘前」からご夫人とお見えになった人は、困惑のただなかに居た。
マッキンでJBLを鳴らし、エバンスを聴いたこれまでが曲がるはずはないが、音の記憶に異変がおこるものである。
1947年に完成した『タンノイ・モニター15』はことし還暦を迎え、38センチ直径のウーハーに同軸ホーンを備えた単刀直入でありながら風変わりの構造を、霧のロンドンの石畳の街の、重い木のドアの奥まった書斎から、いかにも英国風の音を響かせているかのようだ。
当方もむかし、JBLのエバンスを初めて聴いたとき、タンノイで知っていた音と、まったく別物であったから、これがエバンス・トリオかと驚いた。
有名なJBLスピーカーで聴かせていただいたあとでも、やっぱりタンノイのエバンスが好みであることに、かえって戸惑ったことを思い出す。
「還暦を祝って赤いマフラーをどうぞ」と、憶えてくださった客から送っていただいたので、雪の降った3月11日、ロイヤルにかけてみた。

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東風吹かば

2007年02月23日 | 徒然の記
夜、リンホフ氏が立ち寄られた。
ご活躍の官庁も、異動の嵐の真っ最中だが、なんと、九州は太宰府ならぬ福岡にご栄転とのこと。
あの群雄割拠、文明の花開く福岡に。
「栄転だなんて、「東風吹かば」です...北海道かと思っていたのですが」
お預かりしたLPをお返ししながら、御別れにビリー・ホリディのモンタレー1958を聴いた。
「エーッ、ちょっとジャケットを見せてください」
タンノイでなければ、この音は出ないでしょうかと申されながら手帳にメモされたが、その手帳なるものの書込みが尋常ではない。
写真もジャズも、プロ顔負けの根性をみせた方である。
かの地でもさぞ発展されることであろう。



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ロマネ・サン・ヴィヴァン

2007年02月10日 | 徒然の記
1966年のロマネ・サン・ヴィヴァンが手に入る、と知って興奮した。
グラスの赤い液体は、舌の上を染み渡って、
数十種の複雑な原音のハーモナイズを舌の上に、ラターシュ、エシェゾーとならぶボーヌ・ロマネ村のロマネ・サン・ヴィヴァンが66年もので到来するとはめでたい。
品質はともかく運を天に、いちどは聴きたい舌の上の音楽である。
その話を聞いたコレクターは「ぜひ、取り寄せて」と言っている。
いよいよ宅急便が届いて、その包みの様子にギョッとした。濡れている。
開けてみると何本かのうち、肝心のロマネ・サン・ヴィヴァンはコルクが中に落ちて、ドクドクと流れ、半分は減っている。
つまりこのとき、40年分の酸化がいっきに瓶の中で済んでしまった。
若い配達人は「ボクの責任です」と様子がおかしいが、二人の責任者が駆けつけて写真を撮ったり、スローモーションのように思い出す。
仕事を抜け出し、いそいそ取りに来たお客は様子を知って「ウーッ、」としゃがみこむなり頭を抱えて、そうとうの努力で心を鎮めようとしているようだが...こちらは、自分のショックも吹っ飛んで、その様子にたじろいだ。
そういう人が、ワインの趣味のベースを支えている。
またあるとき、
「すると彼女の生まれた1981年のワインも、あるのですか?」
入ってきた眉の太い客は興味深そうに聞いていたが、抽斗の中のラベルを眼で探している。
79年、82年....ビンテージ・チャートをめくると、81年は難年度で有難みがないと、見つからないはずである。
「よかった」
客は、あぶなく大枚が消えかかったサイフに、安堵を洩らして、かわりのワインを選んだ。
ところで、「趣味がサーフィンとスキー」と言いながら、かみさんが里帰りしているから、と隣室のオーディオのことをあした来てもよいかときく。
その客に、サーフ・ボードのいろはを説明してもらった。
「まず、自分の身体に合った浮力の板を選ぶわけです」
まず自分の耳に合ったスピーカーを求めて、いつか地球のはてまで旅をしていくのか。
超小型のスピーカーで鳴るジャズをおもしろそうに余裕の表情で聴いておられたが、いよいよ大型タンノイがグワーンと鳴り響くと「久しぶりに、本格的な音を聴きましたね」と、盛岡にいるというクラシックの好きな恩師の、学生の頃の思い出を話題にしていた。






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ジャズはサバンナへ帰る

2007年01月21日 | 徒然の記
ネルソン・アベニュー・モーニングが低く鳴りだして、1月というのに温かい冬、登場した客はコートを脱ぐと、あらわれたスーツもまた黒ずくめだった。
室内を見回し、おやーっと笑みをこぼしている。
「コーヒーを...」
「たまたま前を通って、ちょっと休みたいだけですが」と、音楽に興味はないそうである。
豆挽きがシャーッと珈琲の香り立てると、ソフアに身を沈めたそのほかと様子の違う客に、思うことがある。
コーヒーをたまに口に含みながら、深々とソフアに身を沈めて窓の外を眺めているその客に、おせっかいとは思ったが、古ぼけた1枚の写真を見せた。
すると、サッと身を起こして、自分から話り出した。
そのときそこに、土蔵でアルテックとタンノイを鳴らす客人が、若い女性を伴って登場された。
その女性は、アナログでなく専門分野がデジタルで、パソコンの組み立てはお手のものとご紹介があって、はじめて注視すると才色兼備の麗人だ。黒ずくめの男は黙った。
土蔵のご主人は、最近の出来事を「とっておきのトランスに「2A3」をプッシュプルでA級10ワットのアンプが完成しました」と、さりげなく申されながら、フィードバックのことなど、技倆の粋を傾けた喜びを隠しきれないご様子である。
完成したアンプの音を祝して、聴き比べの参考にビッグバンドからオーケストラまで5曲ほど、盛大な音量で聴いていただいた。
ちらりと、音楽に関心のないと申される黒ずくめの客を見ると、音の洪水の中で、どうやら寝息を立てている。
2人がお帰りになると、また目を覚ました黒ずくめは話す。
「そういえば、たまたま川向うの『B』にも行ったことが有る」と。
「そこは、日本有数の『しにせ』と言われてます、良い経験をされましたね」当方は出向いたことはないが、たまに、JBLの音がなつかしく思われるのは、モダンジャズという自由な前衛がいかにもストレートに聴こえるからである。
黒ずくめは「へええ、音の何がどうなのかさっぱりわからない」と申されながら、お代わりした珈琲を飲み干すと、自分は仙台の下町に住んでいますと言い、皺のない札を出して、お帰りになった。
先週、お見えになった客人が申されるには、店舗で使用する大根の漬物150本が、暖冬のせいで、干乾燥のタイミングを計れないと。


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バードのクリスマス・イブ

2006年12月24日 | 徒然の記
バードといえば、チャーリー・パーカーのこと。もうひとつはタンノイで聴くレスピーギの『鳥』という管弦楽曲のことが浮かぶ。
鳥は、一般にやかましいので敬遠だが、小動物を誰かが持ってきて家に住まわせ、しかたなくつきあうことが、ままあった。
小桜インコも、その生態をながめていると、それぞれ個性が強烈で人格をすら感じる。
あるとき止り木の上でゆらゆら居眠りしていた奴が、ついに落っこちて、失態を取り繕うようにサッと餌箱に駆け寄って啄み始めたのは、鳥と言えども恥ずかしかったのか、感心した。
クリスマス・イブに一匹が行方不明になって、慙愧にたえないメリー・クリスマスだった。

☆写真は、リバーサルフィルム(スライド)からネガを作らず染色プリント

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12AX7

2006年12月17日 | 徒然の記
ウナギと梅干し、カニと氷水。
子供のころ、台所のかまどの傍に煤けた絵が貼ってあった。
お土産のヤクルトドリンクを飲みながら、幼馴染みとその話で笑った。
「松は幹を観る。ツツジは姿を観る」というそうで、子供の時にあったサルスベリの木も植えるように言われた。
神奈川の庭にも3本の柿の木があるそうで、落葉に悩まされ近所迷惑を考えて小さく切ってしまったから、良い柿が実らないという。
ところで最近届いた12AX7球は、考えていたのと違う音が聴こえて感銘した。まだまだ日本のあちこちに求める球は有るようだ。
12月のコンクリートの部屋は寒くて、タンノイも凍れる音楽であるが...。
「こんど管球アンプの販売を手がけようと考えているのです」
そのちょっと寒いROYCEに、ご婦人と目黒区鷹番からお見えになった紳士は、タンノイもお使いになったことがあると申されて、事業意欲満々の方だった。
そういえば昔、鷹番に住んでいたことが在る。
あのとき、真夏の夜更けになっても碑文谷は土砂降りの大雨で、こうなったら、会社から社員寮まで裸で走って帰ることに決まった。スーツを入れたビニ袋を頭に結わえ、若い6人は一列縦隊に大井川の川越えのようなスタイルで一斉に走りだした。
暗闇にバケツをひっくりかえしたような雨をかきわけ『鶴の湯』の前まで来たとき、ふと横の物体を見ると、いつのまにかパトカーがピタリと同じスピードで我々と併走している。挨拶ぬきで、みな懸命に走った。
そのお客によれば、銭湯はご健在とのことである。

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聴く器

2006年11月11日 | 徒然の記
その静かな客は、何も語らず、何年も、どのような人物かわからなかった。
スピーカーから流れる古今の名演を、室内の音ぐるみ観賞するジャズ喫茶は、妨げになる会話はひとまず遠慮するので、儘静かである。
出だしの一発で「あっ!」と感きわまったり、ジャケットを確認するため眼が泳いだりするのは余禄である。
「ベースはギャリソンか...」などとポツリとつぶやき、「これはVERVE盤か...」と反応して、周囲を焦らせる人も、LPの時代が終われば姿を消すか。
マークレビンソンの透かし文字の刻んだライターを席に置く人もあり、とぼけているようでなかなかジャズ喫茶は深い、能楽やパントマイムの世界なのだが、滅んだはずのLPも妙にいずこからともなく湧き出て、購入しやすくなっている。文字の上の逸話、伝説のかなたに去ろうとしていたはずなのに。
先日の或る日、その客がぽつりと漏らした一言は「SPUのMONOタイプは何故、リード線が4本あるのでしょうか」であった。
その『符丁』の意味する、デンマークのカートリッジ、オルトフォンSPUは、タンノイモニタースピーカーのために有る、といっては物議をかもす。その特異な形状と音質は、アルテックにも良いかもしれない。戸棚や抽斗の奥深く、埋蔵されていたSPUは、滅んだ恐竜のように見えて、マニアは必ず持っている。おそらく生産中止と見せて、何度も復活再販されることになるだろう。
黄門の印籠のようなSPUも、さすがにMONOタイプは正倉院のあぜくらの中で数は少なく、言葉を聞いて「出たな...」と思った。

☆江戸時代、幕府に遠慮した旦那衆が和服の裏地に凝った話になったとき、離れたところに座っていたVOLVOの客が、すかさず上着をめくってくれて、そこに美女の刺繍が現れた。

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クロージング

2006年10月13日 | 徒然の記
秋来る.
芭蕉庵にも、5次元の世界から、いろいろなダイレクト・メールが届けられる。
四季折々すぐれモノは、仙台東一番町の某メンズ・ボーテック。
朝は朝干し夜は夜干し、昼は梅干しいただいて、御用とお急ぎの方も、いざ推参のジャズメン御用達。

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パイプ

2006年09月17日 | 徒然の記
見たいもの。大きな山、広い水、白い土。
ネットで『パイプ』を競り落とした。
代金を送ったが、待てど暮らせどパイプは届かなかった。
ついに、ひっかかったか....。
先日、ポストにはいっていた皺くちゃの封筒から、そのパイプが出てきたので驚いた。9ヶ月も何をしていたのか、そうとう事情のある人らしい。
パイプはもっぱら観賞用で、タバコの葉も、香りのよいものがあって驚く。
来客が、めずらしいマッチを2個、置いていったので、一緒に記念撮影。
タンノイの上に、パイプを飾る。

☆槍を持つ部族の皆さんの、見たいものは。
大きな山はヒマラヤ山脈がよいかな。広い水は太平洋、白い土はゴビ砂漠。

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遙かなるジャズ

2006年07月24日 | 徒然の記
「こんど、お訪ねしたいが定休日はいつですか?」
血豆の引いた指先をながめていると電話があった。
最近、ふたたびオーディオ熱が沸ってきたと申されるアルテック所有者である。
「先日、天下の某ジャズ喫茶に3人で遠征し、スピーカーの前に立ってこれだな、と感激していたんですヨ。ところがマスターに....」電話の向こうは、いささか気落ちしたご様子。
当方も昔あそこで、スピーカーの脇の壁を叩いてみた。ヒエー、あぶなく地雷を踏んだ。
ジャズといっても、タンノイで標榜する音とJBLは、永遠に交わらないレールと知りつつ、それでも壁は叩いてみたくなるのがおかしい。
いろいろな御客の武勇伝を聞いて思ったが、店主はマナーのことを申されているので、あそこにはご本尊(JBL)の祀られている見えない御簾が下がっている。手前3メートルはバージンロードかもしれない。
一度だけ、神主様の話をテーブルの端で聞いたことがあった。それはJBLのジャズより、かなり良かったので納得した。オーディオ装置というのは、その人間の半分の音も出て来ない。

☆水野上氏の蒐集されたジャズマッチ
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倭人在帯方東南大海之中

2006年07月15日 | 徒然の記
横のモノを縦にする。
耳も眼も、横に二つ並んでいる人体において、縦に二つ並んでいるモノは?
スピーカーも活字文も、横の物を縦にしてみると、なぜか事情が違ってくる。

ロイス冊子は縦書きワープロ印刷で、それを読むと、憧れの『三国志魏志倭人伝』に、だいぶ近くなっている?。
廊下の文机に倭人伝と並べて、珈琲を喫しつつ庭を観るとする。
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五木のロレンス

2006年07月02日 | 徒然の記
いつのことか、かの国が打ち上げた謎の飛翔体は一関の頭上を越え、三陸沖に落下したと、航跡が雑誌に載った。
今回Ⅱ型ときいて完成度やいかに。ブログも筆を止めてひたすら、嵐の過ぎるのを待つ。
そのさなか、秋田O氏がお見えになった。
O氏は、愛読書を小脇に各地のジャズ喫茶を渉猟して、網走のジャズ喫茶に行ってみたり、金沢の喫茶「ロレンス」を訪ねたのも五木寛之氏が行きつけの店と知ったから。
「なかなか雰囲気がありましたね」と喜ばれていた。晴耕雨読の人ときいて「これからは農業の時代でしょう」と申し上げると「朝四時に、星を見ながら田圃に出掛ける仕事ですけれど」と言った。
先日も「メグ」に遠征されたそうだが、御大はPCMジャズ放送で「ジャズ喫茶はオヤジが店に出張っていなければ」と申されていたものだが、あまりの忙しさに、思うに任せないのかもしれない。

☆写真の大先生が温泉からお帰りになった。
☆柿の木のアマガエルが八叉のおろちに狙われているのでひと騒動。
☆お薬会社の重役が里帰りされて銘酒を1本御求めになった。

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続 方丈庵 3

2006年06月27日 | 徒然の記
都心から郊外に向かって県境の民家の途絶えた土手の上に、窓の一つ空いたその2畳ばかりの簡素な庵はある。
いつも見ているものの、何のための庵かわからなかったそこに、或る夕刻、大きく人影が揺らめいて、これか!と納得した。
窓際の裸電球1個の明かりで、背後の壁に映った黒い影が2拍子のリズムで一緒に踊っている。
それは『ノコギリの目立て』をする仕事であった。
新聞紙にくるまれたノコギリが、粗末な板壁に添って何本も並んでいる。
ここは、大工職人を相手の、ノコギリの目立て工房なのか。
刃を上に向けたノコギリの目にヤスリを当て、何の躊躇もなくビューッ!ビューッ!と両腕で押し切ってゆく。尖った金属の一点にすべてを集中させて、厚いレンズのメガネをかけた男は一心不乱だ。
昨日も今日も明日も、延々とノコギリの刃を引く。その庵の空間に、ニューヨークダウ平均も、シシカバブもヘンリー・ミラーも無く、単調だが力強い無心の時間が流れている。
道路に面した一方に大きな窓をつけてあるのは、浅草の露店がみな街路に面しているように、庵主の外に開いた気分を表しているのであろうか。たまにランボルギーニも通る、歩道のない道路に。
ここに、むかしオヤジが使っていた古いノコギリを持ち込んでみたいものだ...。
「このノコギリを、お願いします」
「..........」
モンテイbとシェリーマンdを窓の外において、ちょっとジャズをやってみたら、どんな2拍子?
ヤスリの音に合わせてスイングできるのはクリフォード・ジョーダンかな。

秋近き 心の寄るや 四畳半 (芭蕉)



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2006年06月03日 | 徒然の記
「いま見えただろ。羽根の下の青いやつ。あれが松風毛だよ」
ふーん、と空を横切る鳩の胴体を見上げてなんとなく解ったような気がした。子供の時、先輩の鳩の飼い主に「まつかぜけ」とは何か?と尋ねたのである。六.七羽の鳩がグルグル、高く低く旋回していた。
後年になって、それは『松風系』と言って、日本有数の鳩の品種の呼称であるとわかった。「アントワープ系」などと同じである。東欧に「鳩主はアゴの下が陽に焼ける」という揶揄したフレーズがあるが、このあいだ毛越寺の傍の道を通ったとき傷ついた鳩を見かけて、大人しく捕まってくれたので家に持ち帰りダンボールの箱で回復させた。妙な足輪が二つ付いていたので、レース中に鷹に襲われたのかもしれない。
回復した頃、堤防に持っていって放すと、一度物凄い速さで旋回してから、あっというまに消えた。そのときしばらく空を見上げていて、二か月も飼った一瞬の結末に呆然と、アゴの下を久しぶりに陽に焼いたのであった。
鳩は、電話のない頃、貴重な通信手段で、中世の城郭には鳩小屋がある。寝るところと、食事の場所を分けて、あるいはつがいの一方を残し帰巣本能を利用した。地面に降りて啄む鳩はアウトで、寄り道せず一気に巣まで飛翔してこそ鳩である。十五羽飼った鳩が、地面に降りたりすると、子供心にガックリきた。
いまではどうでもよいが、一直線に消えた鳩は流石だ。

☆なんのアンプを使っています?とたずねると「えーっと、レシーバーです」と答えた客は宮城の某ジャズ喫茶のマスターであったらしい。そうと確定したのは二か月後。
☆昨日で四度目になる客も、「ルイ・ベルソンが.....」などとぽろっと言いながら、「明日、水沢のハーフ・ノートに寄ってきます」と申されていた怪しい客だ。
☆タンノイでジャズを聴く。これがどういったらいいのか、松風けのように、見えるものではないところが奥深い。


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