初めて古代アメリカ史を。「古代メソアメリカ文明」 青山和夫 著、講談社、2007年。
アメリカ古代史についてはマヤ、アステカ、インカなど地理も年代もうろ覚えで、ほとんど知りませんでした。著者は、メソアメリカとアンデスを含めて、世界四大文明ではなく世界六大文明と考えたいとします。
古代メソアメリカ文明は青銅器も鉄器も持たない 「石器の文明」 で、しかも 「非大河灌漑文明」 で密林の中の文明でした。紀元前1600年ころに始まるオルテカ文明は巨石像で知られます。日本の縄文時代 (新石器時代にあたる) の三内丸山遺跡が紀元前3600~2100年頃といわれますから、それよりも 2000~500年ほど新しいことになります。
紀元前600年頃に始まるマヤ文明は文字を持ち、ゼロの概念を発見し、暦法に優れた文明で、いくつものピラミッドと数万人の人口をもつ多くの都市が発達して、著者は「究極の石器の都市文明」と呼んでいます。驚いたことに球技場まであったそうです。そしてマヤ地域はアステカに征服されず、スペインのアステカ征服後にもマヤ諸都市の反乱は長く続いたそうです。
さらに紀元前100年~後600年のテオティワカンは12万5000~20万人という、当時のローマにも匹敵する大都市で、600ものピラミッドが林立していたそうです。しかもそれが石器文明なのです。
その後トルテカ文明、そしてテノチティトランを首都とするアステカ文明 (1350年~) が続きますが、全体としてこれら諸文明・都市は地域的にも全体としても政治的に統合されなかった、というのがメソアメリカの大きな特徴だそうです。最後のアステカ王国は3都市連合を基盤にメソアメリカ最大の王国を築きましたが、諸都市は独立性が強く 「まだら模様の王国」で、統一帝国にはなれませんでした。(218p) マヤ地域はまったく独立していました。
ほとんどの文明世界はそれぞれ一つの帝国に統合されました。エジプトの古王朝、メソポタミアのアッカド王国、黄河文明の殷、そして南アメリカのアンデス文明は文字を持たないインカ帝国が統一したのですが、メソアメリカは統合されなかった。これが不思議です。他者を支配するのは人類の本能かと思ったりするのですが、メソアメリカの支配層は、そうではなかったのか。20万人の首都を持つなら、その力はあったと思われますが、あるいは時間が足りなかっただけなのか?
石器の大文明というのもオドロキ。全く独立的に文明が起こったというのも画期的。ゼロの発見、統一帝国が生まれなかったことなど、メソアメリカ文明は驚異に満ちています。
そしてキリスト教のスペインがおこなった文明虐殺はひどいものでした。1992年にローマ法王ヨハネ・パウロ2世がドミニカ共和国で「植民地化の下での教会の罪」ついて謝罪し、フランシスコ法王が2015年7月9日に訪問先であるボリビアのサンタクルスで「アメリカ大陸の植民地化」について謝罪したのも当然です。
しかし古代文明の子孫は生きています。マヤ諸語を話す人たち800万人をはじめ、先住諸民族は千数百万人に上るそうです。(247p)
「メソアメリカの石器の都市文明は世界6大文明のひとつであり、人類の歴史の重要な一部をなす。古代メソアメリカ文明なくして真の世界史とはいえない。」 (247p)
まだまだ学ぶことが多くありますね。
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