飛耳長目 「一灯照隅」「行雲流水」

「一隅を照らすもので 私はありたい」
「雲が行くが如く、水が流れる如く」

本当のやさしさとは何か

2024年03月04日 08時59分18秒 | 教育論
本当の優しさとは何かと最近考える。
現代の子どもたちは極端に傷つきやすい。
だから、失敗を恐れて挑戦しようとしない。
人前で恥をかくくらいなら黙っていた方がいいと考える。
教室の中でも、最近はよく見られる。
本当にそれでこれから出て行く、世間という荒波をわたっていけるのだろうか。

最近読んだ本の引用。

演出家蜷川幸雄が2016年の5月になくなった告別式でゆかりのある俳優が読み上げた弔辞には、今時めずらしいほどの厳しさへの感謝の思いが溢れていたのが非常に印象だった。
平幹二朗は、
「あなたは一度も僕の演技を褒めてはくれませんでした。
 シャイだということは分かっていましたが、僕は何とかあなたから褒めことばを引き出したく、熱演に熱演をつづけました。
 (NHK「かぶん」ブログより、以下同、一部改変)」
とほめてくれない厳しさが自分を育ててくれたという。
大竹しのぶも、
「稽古場に響き渡るあの怒鳴り声。
 他では決して味わえることのできない、あお心地よい緊張感。
 いい芝居をしたときに見せてくださるあの最高の笑顔。
 それらはこれかの私の演劇人生の中で色あせることなく輝き続けることでしょう。」
というように怒鳴り声が響き渡る緊張感とそれに負けずに頑張れたときに見せてくれる笑顔が自分を育ててくれたことへの感謝の気持ちを述べている。
藤原竜也は、
「その涙は嘘っぱちだよと怒られそうですけど。
短く言ったら長く言えと怒られ、長くしゃべろうとすれば、つまらないから短くしろって怒られそうですけど。
(中略)
 恐ろしいほどのダメ出しの数でした。
 瞬間にして心が折れました。
 『俺のダメだしで、お前に伝えたことはほぼ言った。
  今は全てが分かろうとしなくていい。
  いずれ理解できる時がくるから』と。
 『そしたら少しは楽になるから。
  アジアの小さな島国の、ちっちゃい俳優になるな』と。
 『もっと苦しめ、泥水に顔を突っ込んで、もがいて、苦しんで、本当にどうしようもなくなったときに手をあげろ。
  その手を必ず俺が引っ張ってやるから』と。
 蜷川さん、そう言っていましたよ」
 と涙ながらに語り、こちらの心が折れるほどダメ出しをしながら厳しく育てようとしてくれながら、食らいついてくれば助けてやるという優しさに感謝している。
ほめるのがやさしさだと単純に決めつけるような風潮があるが、ほんとうにやさしさというのは、そんなものではないようだ。

 〈「やさしさ」過剰社会 人を傷つけてはいけないのか 榎本博明著 PHP新書 より  〉

心に残っている言葉を思い出す。

「きびしさを欠いた優しさはない」

saitani




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