飛耳長目 「一灯照隅」「行雲流水」

「一隅を照らすもので 私はありたい」
「雲が行くが如く、水が流れる如く」

修学旅行道中記2 当日

2024年08月23日 07時30分39秒 | 学級経営
いよいよ当日だ。
前日の夜は、何度も天気予報をみた。
電話の177(当時は電話で確認していた)にも問い合わせ天気を確認した。
さらに心配になり、神奈川の天気予報まで調べたがどれもあまりよくない。
予報では、朝晩は雨、日中は曇り一時雨というところだった。
鎌倉班別自由行動の際に、雨が降っていては計画がだいぶくるう。
何より傘をさしての移動はつらい。
でも、自分は晴れ男だし、行事では必ず晴れにしてきた。
だから「絶対大丈夫」となんでか、妙な自信だけはもっていた。

夜もあまり眠れなかった。
別に興奮していたわけではないと思うが、何より心配していたのは遅刻だった。
担任の私が遅れたら話にならない。
何度も目覚ましを確認した。
けど、その気遣いは必要なかった。
なぜなら、午前2時半に目が覚めたあと、ほとんど眠れなかったからだ。
自分で「結構繊細な神経しているんだな」なんて感心してしまった。

午前5時には家を出た。
学校についたのは、5時40分頃だった。
あたりはまだ薄暗い。
子どもたちは大きなバッグをさげてぞくぞくと集まってくる。
午前6時、集合時刻には全員集まった。
あいさつをして、学年主任の先生の話をきいたあと、1組は1号車に乗り込んだ。
流石に子どもたちは心ウキウキで眠そうな子は一人もいない。

午前6時30分、定刻通り3台のバスは学校を出発した。
いよいよ修学旅行が始まった。
バスのフロントガラスに雨粒がつく。
「ああ、降ってきたな。
 でも、大丈夫晴れるさ。」
祈るような気持ちだった。

箱根を登っている途中で、すでに数名気持ち悪いと言い出した。
まだ、15分も経っていないのに。
気分の悪くなった子どもたちを前の座席に移動させる。
また、軽い子は窓を開けさせて外の空気に当たらせた。
箱根峠に近づくにつれて霧が濃くなって視界が悪くなった。
雨足も徐々に強くなっていく。

ふと気がつくと、どういうわけか私までが気分が悪くなってきてしまった。
原因はすぐに分かった。
このあと班別自由行動の際に使用する無線機(当時はまだ携帯電話というものが珍しかった)を調整していたからだ。
おまけに操作マニュアルを曲がりくねった道中ずっと読んでいたからだ。
バスにはほとんどよったことがない私も、本を読んでいるとさすがに車酔いする。
なんとか回復しようとしていい案が浮かんだ。
「そうだ。私がガイドになって喋り続ければ車いよいが治るかも。」
そこで、バスガイドさんから半ば強引にマイクを奪って話し始めた。

「皆様、左手を御覧ください。
 芦ノ湖が見えます。」
ところが子どもたちはキョトンとしている。
バスガイドさんは大笑いしている。
そこで、すかさず添乗員さんのツッコミが入る。
「先生、外!!」
そして、外を見ると当たり前なんだが、あたり一面濃霧のため視界ゼロ。
おまけに頭の中も真っ白。
これでは芦ノ湖なんて見えるはずもない。
「いつもは先生がおっしゃるように見えるんですがねえ。
 でも、今日は残念ながらちょっと…」
そんなガイドさんのフォローが虚しく社内に響く。

私はすっかい自信をなくしてマイクをガイドさんに丁重に返却。
小田原の箱根新道の出口を出る頃から「行きプロジェクト」によるレクが始まった。
まずは、伝言ゲーム。
これが結構難しい。
ローカル色豊かで、文の中に学校の近所の八百屋さんや肉やさんが出てくる。

saitnai