三木奎吾の住宅探訪記 2nd

北海道の住宅メディア人が住まいの過去・現在・未来を探索します。
(旧タイトル:性能とデザイン いい家大研究)

街と建築のReデザイン

2015年10月01日 05時28分49秒 | Weblog




きのうは、青森でビジネスの案件をかたづけた後、
前から気になっていた東京での「R不動産」の状況を見学取材。
Facebookで知り合った宮部浩幸さんという、東大の建築の計画系出身で
既存建築の再生利用、そのデザインといった新しい建築の領域に
活動を広げ、いまは近畿大学で教鞭を執られている方が関わった
日本橋馬喰町のリノベーション建築を見てきました。
既存賃貸ビルに手を加え、
IRORI Hostel and Kitchenという名前の宿泊施設に再生したもの。

既存の都市、建築空間は、
これまでの社会では、右肩上がりの経済発展が、
無条件の前提での計画に基づいていたように思います。
需要と供給の関係では、需要が無限に広がっていくような
そういうバラ色の経済構造が前提されていた。
そうした幻想は無惨に打ち砕かれて、しかし、
先進国ではムリだけれど、発展途上国ではその論理が通用すると
世界のマネーはこぞって、そういう「発展」に資金供与し、
中国などの旺盛な需要にシフトして経済発展を夢見てきた。
そういった方向が、いま世界的に大きなひずみを生んで、
中国経済の停滞、不況が露わになってきた不安感から、
世界的に株安の連鎖がなかなか止まらない。
今後、しばらくの間は、不透明な経済の状況が続く予感がします。
そういうなかで、当然のように置き忘れられた「発展期の残滓」のような
都市環境がいま、存続してきているけれど、
しかし、再投資をするにしても「見合わない」という資産として
なるべく見ないようにして放置されてきている現状がある。
とくに地方都市の中心街など、需要があった時代の残滓のような
「固定資産税」の高さと、経済効率の悪さが、手が付けられないまま、
無惨な姿をさらしているのが、現実だと思います。
そういうなかで、まだまだ使えるモノは,再生利用するという
そういった動きが徐々に見え始めてきている。
そのひとつが、この取材のような建築の再生利活用だと思います。
ここでは、十分な都市利便性立地を活かし
そしてグローバルなひとの流動という世界の流れを見据えて、
低価格な宿泊施設として、この建築を利用している。





きのうはオープニングパーティということで、
昼間に若干写真撮影させてもらってはいたのですが、
その後のパーティではゆっくりとお話を伺うことは叶いませんでした。
また、ビジネス的な案件なので、投資金額との見合いでの回収見込みなど
いちばん「あぶらっこい」(笑)、情報はなかなか取材できませんでした。
既存の7階建てビルで1階はエントランスやキッチン空間、
2階にはシャワーブースが集中配置され、
7階は事務所的な利用が考えられていて、中間階が宿泊空間。
宿泊スペースは2段ベッドが据え付けられて、間仕切りはカーテンのみ。
ベッドの造作も、印字されたままの構造用合板+ビス留め、
構造部材素地がそのまま表れている空間です。
窓などは既存の窓がそのまま使われていて、
既存の表面仕上げ材を撤去したままの素地空間を
外観ではむしろそのまま「打ち放し」のようにデザインし、
内部空間では荒々しい素地空間にペイント仕上げをしていました。
こういった宿泊空間で1泊料金は3,000~3,500円の設定とか。
そういった空間の中に、ユニバーサルデザインのアイコン的な
案内表示が適度に配されていて、使い勝手の明瞭さが際だっている。
一番コストのかかったようにみえる1階エントランス・キッチンには
名前の通り、囲炉裏を意識したテーブルが据えられていて
世界中から来るエトランゼたちにジャパンを感じさせる仕掛けがある。
いちばん落ち着く奥のリラックスゾーン壁面には
江戸期の街区地図がデザインされていて、日本の旅の宿の雰囲気。

こういう街と建築のReデザイン、
今後どのように展開していくのか、注目したいと思っています。

コメント
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