長岡京エイリアン

日記に…なるかしらん

ヒロインは私よ!! 里村典子の大逆襲  ~『八つ墓村』2019エディション~

2019年10月13日 20時17分16秒 | ミステリーまわり
 ハーイどうもこんばんは! そうだいでございまする。
 いや~、昨日はもう大変な日でしたね。台風19号! とはいいましても、私の住んでいる山形市はほとんど被害もなかったらしく、ケータイはもうしょっちゅう避難勧告でビービーピロピロビービーピロピロ鳴りまくっていたのですが、幸いそれも私の家からはだいぶ離れた地区が対象となったもので、特に大きな被害もなく、嵐も過ぎ去っていきました。
 ただまぁ~、他の地域は本当に大変ですよね、現在進行形で。1日経っていても、まだ決壊する可能性のある川があるっていうんですから。
 昨日の TV画面はもう、全局台風情報のテロップで埋め尽くされている感じでしたね。まさに古今未曽有の大災害の到来した日だったわけです。

 なんでまた、待ちに待った放送日がこんなことになんのよ……

 うむむ……令和の御代になっても、八つ墓明神のたたりは健在だということなのか。おそろしいことであります!


ドラマ『八つ墓村』(2019年10月12日放送 NHK BSプレミアム『スーパープレミアム』 119分)

主なスタッフ
脚本 …… 喜安 浩平(44歳)、吉田 照幸(49歳)
演出 …… 吉田 照幸

主なキャスティング
井川 辰弥   …… 村上 虹郎(22歳)
森 美也子   …… 真木 よう子(36歳)
田治見 春代  …… 蓮佛 美沙子(28歳)
田治見 久弥  …… 音尾 琢真(43歳)
田治見 要蔵  …… 音尾 琢真(2役)
里村 典子   …… 佐藤 玲(りょう 27歳)
里村 慎太郎  …… 小柳 友(31歳)
田治見 小竹・小梅 …… 竜 のり子(75歳 2役)
野村 荘吉   …… 國村 隼(63歳)
濃茶の尼    …… 木内 みどり(69歳)
駐在      …… 宮沢 氷魚(25歳)
駐在の妻    …… 佐津川 愛美(31歳)
井川 鶴子   …… 樋井 明日香(28歳)
新居 修平   …… 馬場 徹(31歳)
久野 恒美   …… 久保 酎吉(64歳)
麻呂尾寺の長英 …… 津嘉山 正種(75歳)
麻呂尾寺の英泉 …… 山口 馬木也(46歳)
慶勝院の梅幸  …… 山下 容莉枝(55歳)
諏訪弁護士   …… 酒向 芳(60歳)
井川 丑松   …… 不破 万作(73歳)
片岡 吉蔵   …… やべ きょうすけ(45歳)
34代目・金田一耕助   …… 吉岡 秀隆(49歳)
16代目・磯川常次郎警部 …… 小市 慢太郎(50歳)

※日本ミステリー界の巨星・横溝正史による金田一耕助ものの第4長編『八つ墓村』(1949年3月~51年1月連載)の10度目の映像化
※『八つ墓村』の映像化回数「10回」は、金田一耕助もの作品の映像化された原作の中でも最多となる(次に多いのは映像化「9回」の『犬神家の一族』)
※公式資料によると、原作で本事件の捜査にあたった時点(1948年5月)での金田一耕助の年齢は「35歳」だった


 多少、雨風で外がビュービューうるさくはあったのですが、それでもゆっくりとお茶の間で、この記念するべき『八つ墓村』ディケイドを鑑賞することができたのは、本当に幸せなことでありました。これはありがたいと受けとめないとね。
 そして、放送前に内心、台風情報で画面の外枠が占領されて、10分に1回くらいの頻度でニュース速報がバカスカ流れる惨状の中でドラマを観る覚悟をしていたのですが、今回の放送は「1回だけ速報が流れた」のみで外部情報を抑えるという放送局の英断に、私はまったく感服いたしました。さすがはプレミアム! 数年前に、あるドラマの件でかなり怒りまくったことも、今や過去のことですね。

 決して「金田一ブーム再来」とまでは言えないものの、2016年11月の、あの長谷川博己金田一による衝撃の『獄門島』(と、池松金田一のミニシリーズ)いらい、確実に年1~2のペースで映像化金田一作品の新作がおがめるという幸せな状況が復活したのは素晴らしい僥倖であります。まぁ、一般的な浸透率でいいますと、やっぱり地上波放送のフジテレビによるシゲアキ金田一シリーズの方がインパクトはあるのでしょうが、現在の流れのご本家はあくまでも、この脚本・喜安&監督・吉田による BSプレミアム版シリーズなのです。そして、昨年の『悪魔が来りて笛を吹く』のエピローグにおける予告通り、待望の最新作にして、令和最初の映像化金田一作品として、あの『八つ墓村』がやって来たわけだったのであります! うをを!!

 ちなみに、昨年末のくだんのシゲアキ金田一版『犬神家の一族』の登場によって、「金田一ものの映像化回数ランキング」において、最多の「9回」という記録で『八つ墓村』と『犬神家の一族』がタイで並ぶという状況となっていたのですが、今回の吉岡金田一版の放送によって、記念すべき「10回」となった『八つ墓村』が、再び単独の首位に躍り出ることとなりました。さすがは『八つ墓村』! そ~簡単に首位の座をシェアするわけにはいきませんよね。もんのすごいデッドヒートだ!

 さぁ、そんな経緯もありまして、いやがおうにも期待値が高まる今回の『八つ墓村』だったのですが、正直なところ、私は不安に感じている要素もあるにはありました。


また、『八つ墓村』を2時間でやるなんて……大丈夫なの?


 そうなんです。原作小説『八つ墓村』は、まさに推理+ホラー+アドベンチャー+ロマンスのおもしろ要素てんこもり宝石箱! 高さ60cm の花火つきパフェのような欲ばりエンタテインメント作なのです。これをまともにノーカットで映像化するなんて、2時間じゃあ到底ムリムリ!
 いままで9作もの先達がいならぶ『八つ墓村』ではありますが、それらのことごとく全てが、どこかの部分で必ずなんらかの「ショートカット&改変」をほどこして映像化にこぎつけていました。物語を語る時間制限「尺」という要素で、比較的余裕のある境遇にあった1977年映画版(151分)、1978年ドラマ版(239分)に関しても、原作に忠実どころか、それぞれの事情によって似ても似つかない要素を含んだ作品に仕上がっているため、『八つ墓村』の映像化には、どこか必ず危なっかしいバイパス手術が必要となる難しさがあるという印象があったのでした。
 中には、1977年映画版(渥美金田一のやつ)のように、もう勢いで有無を言わさず突っ切っちゃって独自の良さにしてしまった成功例もあるのですが、まず偉大すぎる原作小説の縮小再生産という印象はぬぐえません。しかし横溝先生は寛大だねぇ! 1977年版はもう、原作小説の論理的ミステリー要素を気持ちいいくらいにカットしちゃってます。
 個人的に最高だと思っている1991年ドラマ版(古谷金田一の2回目)もとってもいいのですが、やっぱりバッサバッサといろんな部分を切り取っちゃった、盆栽のようなちんまり感はありますよね。1996年映画版(豊川金田一のやつ)も、ダブル岸田今日子にご自慢の市川演出で雰囲気はやたら良かったのですが、改変したオリジナルのメイントリックがんまぁ~ひどいもんだったので、落第もいいところの出来となってしまいました。1996年版の真犯人は、逮捕されたかったのか!? あんなもん、金田一耕助いらんわ!!

 ……といった、個性的な9人のお兄さんお姉さんに囲まれた、今回の最新『八つ墓村』。さぁ、それを目の当たりにした私の感想はどうだったのかといいますと~!?


ここにきて、原作小説に最も忠実なバージョンが誕生! 予想以上におもしろかった。びっくりしました!!


 いや~、まさか、2時間でここまで原作の要素をあまさず取り込めるとは。今までの諸先輩方のご苦労が一体なんだったのかという、実にスマートな映像化。ほんとに驚いた。
 手離しに絶賛する、とまでもいかない歯がゆさはあるのですが、ともかく予想していた以上のクオリティであったことは確か。そして、なんといっても原作小説ほんらいの端正な構造を最大限、丁寧に映像化したその姿勢がすばらしかった! その一言に尽きます。まじめ! いい意味でも、そうでない意味でも。

 これまでの映像化された『八つ墓村』群と比較してみますと、今回の2019エディションは、以下の数々のポイントをかなり原作に忠実に描写したものとなっています。

①恐怖の「どっちかが死ねばいい」ペアターゲットリスト(しかし、実は……?)
②作品の本来のヒロインである、里村典子(主人公・寺田辰弥のいとこ)の存在
③「真犯人」の動機に深く関わる、里村慎太郎(典子の兄)の存在
④西屋の当主である野村荘吉の抱いている「ある疑惑」
⑤辰弥の「ほんとうの父親」亀井陽一の存在と、現在の姿
⑥事件の重要なきっかけのひとつである新居修平医師の存在
⑦尼子の落ち武者の財宝はどうなったのか?
⑧「真犯人」の死因

 特に、②と④と⑥をちゃんとおさえているところが、非常に大きいというか、もう2019年エディションの特色と言ってもいい新鮮さにあふれていますよね! ④なんか、今回が初映像化なんじゃないですか? そこを、國村隼という名優がガッチリ演じているんだからすごいんですが……それにはちょっと、功罪相半ばする効果があり……?
 結論から言いますと、この「原作に最も忠実な映像化」という部分がもたらす効果は、「よくない部分」も多少はあった、と私は見ました。

 言いたいことは山ほどあるのですが、まず、私が今回の2019エディションを観て「ここはいいね!」と感じたのは、

・里村典子の大暴れ!
・吉岡金田一の「こわ~いところ」が出てきたぞ~!!

 この2点でした。
 典子に関しては、映像化された『八つ墓村』といいますと、これまでヒロインといえば田治見春代と森美也子という、「オトナの魅力」に満ちたおふたりが若い辰弥をめぐってバチバチやらかすという構図が有名かと思われます(そこは2019エディションもしっかり描いています)。でも、そんなどうしようもないドロドロのしがらみの中で倦み疲れた辰弥を救う真のヒロインは、実はフレッシュな若さとピュアさ(バカっぽさ?)にあふれた里村典子だったのだ! という流れが、今回は非常にしっくりくる演出になっていました。1996年版の、「あんた一柳鈴子ちゃんじゃないの?」と見間違えてしまうほどに危うい典子でもありません。しっかり強い女性です! 典子ちゃんの底の知れない笑顔にかかっちゃあ、さすがの要蔵ミイラもかなわねぇや!!

 ところで、「戦国時代の尼子家の財宝」が、あんなに分かり易い大判の形をしていて良いのだろうか……時代考証的に、ギリギリ OK? でも尼子家だったら、やっぱりほんとは銀なんだろうなぁ。

 吉岡金田一の怖さに関しては、もう見ていただくしかありませんが、なにかというと「ギョロッ!」とむく目がこわいこわい! 何かに気づくたびに、鳥居みゆきさんばりに「逆三白眼」の目つき(黒目が下に寄る)になるのです……田治見要蔵よりも濃茶の尼よりも「真犯人」よりも、金田一さんがいちばんこわ~い!!
 さすがは、吉岡さん。伊達に1977年映画版で辰弥の幼年時代を演じているわけではない、気合の入りっぷりを見ました。
 そういえば、今回の金田一先生は、あざやかなブルーの着物も印象的なのですが、しじゅう来ているマントが、まるで「教誨師」のようなイメージも与える着こなしになっていましたね。うむ、『八つ墓村』の金田一先生は、それでいいかもしんない。

 そうそう、今回の田治見要蔵ほど、「32人、殺せんの!?」と心配になるか弱い要蔵もいませんでしたね。実際、映像の中で村人の反撃に遭いかけてただろ!
 そこはおそらく、「愛の妄執に憑りつかれた哀しい男」という部分を強調したキャラクター造形だったのでしょうが、まるで迷子のような、母親を見失った子どものような表情で村の中をさまよう姿が実に味わい深い田治見要蔵でした。特に、金田一先生がつかの間に見た幻影として現れるラストシーンがよかったなぁ。
 ただ、あれじゃ32人は絶対殺せないでしょ……モデルになった実在の事件の犯人は、かなり周到に計画して、村人が寝静まった深夜にやってたんだもんねぇ。大金持ちのボンボンが思いつきで日中に暴れだしても、相手にはむくつけき農村の若者もいただろうし、ねぇ。

 そんなこんなで、みどころがいっぱいあった今回の2019エディション。少なくとも、過去の映像化作品をまるっとトレースしたような、志の低い更新作業ではなかったという時点で、私は大いに高く評価させていただきましたが、まぁそこはそれ、ファンの勝手なつぶやきということで、ちょっとそこはどうかナ~? と、気になったポイントも、挙げさせていただきましょう。そんな、たいしたことじゃないんですけど、ま、ね!

 「真犯人」の意外性が、めちゃくちゃゼロに近い……いや、これはもう、確信犯的演出なんでしょうけどね!

 はっきりいいまして、この2019エディション、「真犯人」に対するアタリがそうとうキツイ!! ていうか、隠す気が毛頭ない! 事件の事情をほとんど噂くらいでしか知らないと思われる村人までもが、最初っから「真犯人」のことを、「あいつはあやしいぞぉ。」と何の根拠もなく疑っているんです、冒頭から! ひどいよ! まぁ、犯人だけどさ!!
 実はこれ、先ほどにあげた④のポイントをしっかり映像化したってことからも、スタンスははっきりしてるんですよね。逆に言うと、たぶんこれまでの9作品は、金田一先生以外に事件の真相を見抜いていそうな登場人物がいるとミステリーとしてつまんなくなっちゃうから、わざと④を削除していたんでしょう。
 だから、べつに『古畑任三郎』みたいな倒叙ものでもないはずなのに、「真犯人」自体ものっけからあやしいし、周囲の「真犯人」に向けられた視線も、冷たい冷たい! そんなアウェーすぎる状況の中で、ほんとにやってしまう「真犯人」もとんでもない肝っ玉なわけですが、それだけに、余りにも哀しい人生、とも言えますよね。
 いや、そんなもんキャスト表を見たら誰が犯人かなんてすぐわかるだろ、と言われてしまえば身もフタもないのですが、ここまで犯人を隠す気がない『八つ墓村』も初めて観ました。犯人がわかりやすいことで有名な市川崑演出だって、こんなに周囲の人物がこぞって「あいつあやしい! あいつあやしい!」と言うような環境は作らなかったでしょ!?

 だから、今回の2019年版は、原作にこんなに忠実でありながらも、結局はあの1977年版同様に「ミステリーであることを放棄している」『八つ墓村』になっているわけなんです。不思議だな~!! 方向性は全く違うのに。
 なのでたぶん、「ウソー! まさかあの人が真犯人だったなんて!」とクライマックスを見て驚愕する人は、まずいないんじゃない? そういう意味で、カタルシスのはなはだしく欠如した作品になってしまった感はあります。あぁ、なるべくしてなったんだなぁ、みたいな無力感が……

 あと、吉田演出にロマンを求めるべきでないのは当たり前なのですが、なんか、クライマックスにいくにしたがってクラシックやら洋楽ロックやらがジャカジャカつぎこまれていった騒がしさがあって、今までの2作品(『獄門島』の洋楽ロックと『悪魔が来りて笛を吹く』のフルート)にあった一貫性が崩れた印象は受けました。無理矢理ロマンを作ろうとした感じというか。なにをか焦ることやはある!?
 それに、ラストのブラックジョーク的なオチシーンにあんな華々しいクラシックを用いるべきではなかったし(見てもなんの爽快さもない)、そもそも辰弥と典子のシーンで終わりにしてよかったんじゃないかと。その点、同じ結果を招くシーンだったにしても、そこに多治見(この表記でいい)家の炎上というスペクタクルをドッキングさせた、1977年版の橋本忍脚本は、やっぱりちゃんと考えてらっしゃるんだなぁ、と今更ながら感じ入ってしまいました。


 う~ん、やっぱり、「原作に忠実にすりゃいいってもんじゃないよ」ってことなんですかねぇ? 難しいなぁ、映像化って!
 様々なチャレンジ精神に満ちた出来でありながらも、その一方で「若さ」「愚直さ」も目立つ『八つ墓村』2019エディションであると見ました。


 ま、なにはなくとも、「亀の湯」が出てくる次回作が楽しみ……って、それ、シゲアキ金田一が年末にやるやつじゃないの!?
 それに、『悪魔の手毬唄』は、原作小説の時間軸だと『八つ墓村』の7年後の事件ですよ~! 7年間、「亀の湯」を目指して旅をするのか!? 岡山県そんなに広かったっけ!?
 今まで割とまともだった、BSプレミアムシリーズの時間軸が、ついにゆがんできてしまった……余談ですが、本編中でちゃんと「鬼首村の事件」と言及するくらいのファンサービスをするのならば、いっそのこと令和の『夜歩く』を映像化して欲しかった……かなわぬ夢か~!

 まま、まずはフジテレビの『悪魔の手毬唄』を楽しみにしております! よろしくお願いいたしますよ~!!

コメント (34)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« これは……ジョーカーなのか?... | トップ | 死人に口なし……そんなに放庵... »

34 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
現代に即した新しい『八つ墓村』の成立 (mobile)
2019-10-15 10:37:15
これまでの作品はどちらかといえば『たたりじゃー!』のセリフに代表されるように『惨殺された八人の落武者の祟り』に焦点が絞られて『いかにおどろおどろしい恐怖を盛り上げるか』に重点が置かれていました。
-------💀💀💀-------
今回のドラマは『このご時世に祟りなんてバッカバカしい!』という考えが根底にあって『祟りの伝説を利用しようとしたドロドロの愛憎劇』に仕上がっているところが、新しい解釈で良かったのでした。
-------💀💀💀-------
濃茶の尼が叫ぶお馴染みの『タタリじゃー!』という台詞も、明るい日中に聞くと全っ然怖くナイ。完全に『何だ!?この気〇い婆ァ!』ってカンジで、もはや風景に溶け込んでます。
-------💀💀💀-------
見どころはもちろん『前半のヤマ場となる津山事件をどう演じてくれるのか?』ですが、今回はロングのショットを最後に使って淡々と描写していきます。『長閑な田舎の風景の中に乾いた銃声が響く』というカンジで『あっ!よく見ると事件あったンだ!』というくらいのイメージ。『人間の営みは自然の中ではごく些細なことである』と強く印象づける演出でした。
-------💀💀💀-------
後半の鍾乳洞のシーンは今回『祟りを怖れた村人たちがリンチに掛けようと主人公を追う』ことに重点を置き、結局は『祟りにおびえた村人たちの妄動』に終始させています。
-------💀💀💀-------
犯人は洞窟の中で亡くなるのではなく、収容された病院で亡くなりますが、これにもちゃんとした『伝説の科学的な解釈』が持ち込まれて、あくまで明るい理性の光に照らされて事件は解決し、最後に國村隼がつぶやく『なぜ人は愛を求めるんですかね』という台詞が心に残ります。
-------💀💀💀-------
これは現代に即した新しい『八つ墓村』の成立です!
返信する
ドライな時代になったもんです (そうだい)
2019-10-15 22:20:24
 mobile さま、微に入り細にうがった素晴らしいコメントを、どうもありがとうございます!!
 まさに、おそらく「淡々とした」、「現代に即した」という分析は、吉田演出のねらいを的確に突いたものであると思います。2019年に、『八つ墓村』をかつてなくドライで醒めた視点から描いたのは、楳図かずおのマンガの登場人物のように能天気に「たたりじゃ~!!」と絶叫して、世の不条理をまるっとお化けのせいに転嫁してしまえた1977年の『八つ墓村』の時代への、愛と哀しみに溢れた返歌なのかもしれませんね。全てが対極!
 ともかく、「真犯人」の醒めきったまなざしが印象的な2019年版でした。死に際して初めて生きた、ともいえる絶叫がすごかった……

 でも、私はそろそろ、テンションの高い金田一ものも見たい気がします~! 吉田演出にそれを求めるのは難しいでしょうけれども。
 『悪魔の手毬唄』も、けっこうヘビーな事件ですしね……
返信する
Unknown (あいあい。)
2019-10-18 00:11:10
初めまして。 NHKBS八つ墓村の感想楽しく読ませていただきました。

吉岡秀隆さんの目の表情、確かに凄かったですよね。 ちょっと怖かった(笑)。

後、真木よう子さんの「森美也子」ですが、 あの声のトーンも凄かったです。(ビジュアル的には良いと思いましたが)
でも、言葉遣いが。。。うーん。 中々セクシーでも有りました。

今回典ちゃんにスポット当たっていてそこも嬉しかったです。(でも、まだ彼女にツレナイ辰弥くん)

音楽は前作同様?この吉岡版は洋楽でいくんでしようか?(の、ようですね)
ラスト、ブラックシーンなのに、(多分敢えてかな?)壮大な曲で余計恐ろしく感じました(スタッフ、してやったりだったかも?)

私も全体的には高評価です(^^)

次回は民放と被る?私の大好きな「悪魔の手毬唄」 今から「青池リカ」 「大空ゆかり」 他キャストあれこれ想像して楽しみに待っています!


* (袴、袴 が可愛かった吉岡金田一😆❤️)
返信する
手毬唄対決、なるか!? (そうだい)
2019-10-18 05:04:27
 あいあい。さま、金田一愛にあふれたコメントを、まことにありがとうございます!!
 予告通り、今までのスケジュール通りにいくとしたら、今年シゲアキ版で来年に吉岡版という流れになりそうな『悪魔の手毬唄』対決! どっちも頑張っていただきたいですね~。あなたさまの挙げたキャラクター以外にも、磯川警部に多々羅放庵、そして謎の老婆おりんと、クセのある人が目白押し! 楽しみですね。
 森美也子といえば、クライマックスの演技で女優としての力量が問われるかと思うのですが、真木さんはあの声の調子で爆発しながらも、表情をひとつも変えなかったのが、かえって独自性が出ていて素晴らしかったですね! 小川真由美版や夏木マリ版とは違う、やっぱりドライなすごみでした。
 あの声、1977年映画版『悪魔の手毬唄』の白石加代子さんそっくりでしたよね! さすが真木さん、そうきましたか~、という感じでした。

 年齢相応の落ち着きと不相応の可愛らしさを持つ吉岡金田一と、若さとしゃべくりで突進するシゲアキ金田一。どっちも楽しみですね~!!
返信する
追伸 (そうだい)
2019-10-18 05:13:07
 セリフの一言一言がいちいち極太明朝体みたいな真木さんと、かいわれ大根のようなはかなさの蓮佛さんと対比して、今回やっと完全映像化にこぎつけた典子さんの明るさは、とっても良かったと思います。女優然としていないナチュラルな容姿もぴったりでしたね。

 BSプレミアム版は洋楽を押しますよね~! それはもちろんいいんですが、やるんだったら、ちゃんと『悪霊島』の『Let It Be』までつっきってほしいですね!
 『悪魔の手毬唄』では、何が流れるんでしょうかね~。
返信する
Unknown (あいあい。)
2019-10-21 21:54:55
こんばんは。 真木さんと蓮佛さんの例えが😆。 そう言えば駐在さんの奥さんのシーン推理もイイ感じでした。
佐藤さんってなんとなく顔が山下さんに似てるなぁとか思いました。(^^)
吉蔵の(みぃ〜つけた。)はヤな感じで怖ろしかったです。

感想も色々有りますね。どーしても原作意識するし、自分の中のイメージもありますし。
今の役者さんって全体的に実年齢よりも若く見えますよね? 難しいなぁ、人選が。
昭和の役者さんはエグミが有る人はよりそれらしく、ハクも品も面白みも有る演技が出来る。
放送コードも今は昭和に比べて中々大変ですし。(その点NHKさんは獄門島でバッチシ言い放っていて👍)
なんやかんや緩くも有ったけど楽しめました。

今又、「八つ墓村」再読中! あの場面はこーだったとか思い出しながら読んでおります(^^)

悪魔の手毬唄から7年? それは随分空いていますよね。
もし?W手毬唄対決ならついつい比較しそうです。(フジさんも💪😸)ちょっと間は空きますかね?NHKさんは来年?
(あっ個人的には青池リカ役、斉藤由貴さん、森瑤子さんとかイイかな?とか(^^))
返信する
Unknown (あいあい。)
2019-10-21 22:05:15
すみません。「森瑤子」さんは作家さん。「温泉大作戦」出演の「森口瑤子」さんでした(^_^*)

「悪霊島」の岩下志麻さんは綺麗で怖かったです。
音楽がジョンではなくポールなんでしたね? 当時ジョンの事件はビックリしました。
返信する
令和ならではの金田一作品とは (そうだい)
2019-10-23 00:24:58
 いや~、あいあい。さま、いつも非常にステキなところを突いてくださるコメントを、まことにありがとうございます!!
 まさにその通り! 失念しておりました、佐津川さんと山下さんの味わいも、今回の『八つ墓村』では見逃せない魅力でしたね。佐津川さんは、ついこないだまで特に何の変哲もないアイドル女優さんという感じだったのが、気が付けば、石坂金田一シリーズにおけるあの坂口良子さんに当たるいい感じの魅力がたっぷりのレディに! 山下さんも、役柄上やむないとはいえ、出番が少ないのが実にもったいないミステリアスな魔力に満ちていましたね。佐藤さんも、のちのちそういった女優さんに成長していくのでしょうか。楽しみですね!

 現代の俳優さんの個性の問題。もっとキツく言えば「薄味化」、「幼年化」の傾向は、私も昔から感じていたことでした。それは別に若手の俳優さんだけの話ではなく、今回で言えば小竹さん小梅さんクラスの高年齢までが全然おどろおどろしくないという、全年齢における大問題だと思います。
 でも、それはもう、そういう時代なのだから仕方のないこと! それでも、横溝作品には若さと美しさだけでは何ともならない複雑なキャラクターがゴマンと登場します。現役の皆様の「わたしを見なさいっ!!」という気迫を、これからの『悪魔の手毬唄』にも期待していきたいですね。特に、青池リカさん役の方に、ですかね!? 私の希望としましては、木村多江さんですかねぇ。落ち着きすぎでしょうか?

 ね~、『悪霊島』の岩下さん、ものすごくお美しかったですよねぇ。そりゃもう、旦那様の愛情たっぷりですもんねぇ。
 なんでレノンさんがらみで『Let It Be』なんだという謎は存じておりますが、実はわたくし、レノンさんが物故なされた時にはむつきも離れていない赤ちゃんでありまして……もう、レノンさんは感覚としては歴史上の人物なんですよ。まさしく、昭和も遠くなりにけり、ですね!
返信する
Unknown (ちゃっく)
2019-10-25 17:28:00
八つ墓村 2019 典子で検索して辿り着きました
過去Verとの比較が面白く楽しく頷き同意して読みました有難うございます
私はもう一つチェックしてた点があって、わかっていただけると思いポイント⑨として提案したいです
⑨大団円への段取り
犬神家の映像化で省略されがちな佐智と小夜子の子、原作で真犯人は最期に「その子を悪いようはしないで…」というのですが
これは凄惨な話の中で被害者一家に横溝先生が用意した救いだと思うのです
八つ墓村においては第2子養子と慎太郎の未婚の誓いがそれで、これ無しでは大団円とは言い難いかと……
今回もそれ無?なら典子も財宝も意味無いやん!!と思ったのですが…ああくるとは!?やられました
だからこそアレの蛇足感は厳しかったですねぇ…

もう一つ、ミステリまわりのタグから過去の記事も拝見させていただいたのですが
稲垣版好みでないようで、ちょっと残念です。八つ墓村においては私この2019版と対になる作品と思ってたので
こちらとの比較も読んでみたかったです
多々ある原作聖典の中で、わりと金田一はニヤニヤし面白がりながら最後の謎解きをしてると思うのです
言い方悪いのですが、アスペ的なその雰囲気を稲垣版は意図的に持たしていたので、わりとアリだと思うのです
私は実は内心稲垣版とは呼んでおらず佐藤嗣麻子版と位置付けております
稲垣金田一の脚本を全て手掛けてる彼女は山崎貴の嫁であり、実は牙狼シリーズに関わる雨宮慶太一派とも同窓同期だったりします
K-20の監督も手掛けており、色々とワカッテル人なので金田一のKYっぷりは意図的にやってたと思います、そこのアプローチとかは楽しめました
映像化金田一は市川版の昔から、ちょっと優しすぎかと…今作の慎太郎との会話的なのとか。
そのニヤニヤ金田一と真犯人との対峙と末期の姿!!過去記事にも書かれてましたが役立たずと言われがちな八つ墓村金田一の見せ場の映像化は痺れました。
で(藤原)竜也の辰弥も私好きなんです…嘆いてるわりに回りには悪態つかないのが誠実さがあって、藤原竜也なのに。
今作の虹郎クンも良かったのですが美也子に溺れて悪態つくのちょっと…
せっかくの3ヒロイン揃い踏み作品なのに勿体ない
美也子との関係77年版から拾ったんでしょうかねぇ…ちなみに稲垣版は落武者霊要素取り入れてましたね
と、長くなりましたが原作寄りを目指す稲垣版や今作品でも影響を及ぼす77年度版の偉大さと
言いたい事が少ないわけではないが2019版の評価は……凄く良かったですねとそうだい様と同じ感想でして、ゆえに凄く共感して記事拝読出来ましたありがとうございます
しかし今作と稲垣版で補完し合う形で原作の見たかったシーンの映像化は済み77年版の呪縛からも逃れられて良い時代になったなぁと思いつつ
まだ見ぬ原作再現完全版へと夢は膨らみます、シゲアキ版には期待できなさそうなので
実現するのならノイタミナでアニメ化ぐらいかなと思いつつ…
長文駄文失礼しました
返信する
全『八つ墓村』を比較したい~!! (そうだい)
2019-10-25 21:44:00
 いやはや、ちゃっく様……このそうだい、もはや返す言葉もございません!! 私の駄文を過去までさかのぼって読み込んでいただき、まことにありがとうございます!! 読みにくかったでしょう……頭が下がりすぎて古代怪獣ツインテールのごとき心地です。

 「あれ~、私、そんなに稲垣金田一シリーズのことキライって言ってたっけぇ~?」なんて過去の文章を読み返してみたら、ほんとにむちゃくちゃ批判してましたね……若かったです。
 ちゃっく様のご指摘、まったくその通りであると納得させていただきました。⑨のポイント、すっぱりと見落としておりました。未来への希望を必ず残すこと。横溝先生の、プロのエンターテイナーとしての矜持ですね。

 私も、『エコエコアザラク』シリーズから佐藤嗣麻子監督の非凡さには感服いたしておりましたので、特にその、女優さんをギラギラ輝かせる演出は大好きなのです。観たかったです~、菅野美穂さんがおでましになる稲垣金田一作品!! 無理だったろうけど。
 ただ、ちゃっく様の言を借りますと、私は稲垣金田一シリーズを、「星護版」と位置付けております。繰り返しの主張になりますが、佐藤嗣麻子さんの脚本よりも、私はあの、冒険活劇的な味付けがコテコテな「陣内小五郎シリーズ」を色濃く継承した星護さんの演出法が好きじゃなかったのですね。当時、必要以上に狂言回しっぽいキャラクターになった横溝先生や、冒頭で展開されるアメリカ時代の金田一耕助の様子を見て、「そんなのいらないよ~!」という単純な拒否反応を起こしていたにすぎなかったんでしょう。
 それにかまけて、原作に忠実な本編部分の志の高さを見落としてしまっていたとは……まさしく蒙を啓かれた想いであります。やっぱり若かったんだなぁ~、15年前!!

 かつて、奇跡的にヒマだった数年前に、かろうじて1977年映画版の『八つ墓村』だけで試みた「冒頭からエピローグまでタイムスケジュールをしっかりさらってみよう」企画、またやりたいな~!! 稲垣版も、映像ソフトは無いにしてもなんとか観る手段はあるかも知れませんし、それをちゃんとやって、自分の中の不当な低評価をちゃんと見直してみたいですよ。

 でも確かに、思い出せば真犯人役の方の演技も末期まで大迫力だったし、必要以上に怪しかったりょうさんの春代もステキだった……藤原さんの演技も文句はなかったし。なんとかして、2004年版『八つ墓村』を、また見たい~!

 とにもかくにも、「原作の映像化されていない要素の補完」に果敢にチャレンジした2019年エディションに感謝、感謝であります。
 おかげで今回、ちゃっく様の、かくも素晴らしいコメントをいただけたんですからね。
 本当にありがとうございます。長文駄文はこちらこそですよ~!! 失礼いたしました。 
返信する

コメントを投稿

ミステリーまわり」カテゴリの最新記事