長岡京エイリアン

日記に…なるかしらん

1977年の『八つ墓村』(監督・野村芳太郎)って、一体なんだったんですか?  「ハイ、小梅さんや」の章

2012年11月10日 22時23分21秒 | ミステリーまわり
 どひ~っ! どうもこんばんは、そうだいでございます。みなさま、土曜日の今日も働いていましたか? お疲れさまでございました……
 いや~、この1週間、私は非常に忙しかったです。まだ、明日もたっぷり働きづめの予定になっているんですが、もうひとふんばりで休みもあるしお給料もいただけるということで! かなり疲れますけど、働く現場が楽しいということは素晴らしいですな。

 最近は深夜2時ごろに寝て朝6時前後に起きるという生活パターンになってきております。こういう感じになってくると、人それぞれかとは思うんですが、私という人間がいかに「睡眠が好きなタイプ」だったかということがわかってきておもしろいですね。食事とかお風呂とか遊びとか、ストレスを発散する手段はいろいろあるんですが、私はやっぱり寝る時間が確保できるのが最高の順位になっているんですよね。
 「何時までに起きなきゃいけない」っていうしばりがない睡眠、最高ですね~!! 今のところ、そこまでたっぷり休みをとる予定は、ない! まぁ、それは高望みですね~。

 先日、1歳ちょっとのお子さんがいる親友に会いに東京に行きました。ちょうど保育園に行ってお子さんを連れて帰るのにも同行したんですが、まだ日本語はしゃべらないけど「あ~あ~う~う~」一生懸命になにかを伝えようとしているその姿勢……感動してしまいますな!
 その帰りに、地下鉄高田馬場駅ちかくの名画座「早稲田松竹」で、今週いっぱいしか上映していない映画『桐島、部活やめるってよ』を観に行こうとしたのですが、上映10分前に到着したら「立ち見まで満員」で門前払いをくらってしまいました。あそこ、最終上映は「800円」という安さですからなぁ~。無念! あれ、場内を埋めてたのほとんど、早稲田大生だったんじゃないの!? もっと早く行っておけばよかったわぁ。


 さてさてそんなわけでして今回は、映画は映画でも『桐島』とはまるでテンションの方向性が違う、昭和のトンデモ映画『八つ墓村』(1977年)に関するあれこれの後編にうつってみたいと思います。

 ほんじゃさっそく、前回に予告したここからいってみましょうかねぇ!


ドキッ☆ 1977年の『八つ墓村』 たたりだらけの本編タイムスケジュール

0~2分 プロローグからタイトルロール
 永禄9(1566)年秋、戦国時代の中国地方
 毛利家に敗れた戦国大名・尼子(あまご)家の武将・尼子義孝(演・夏八木勲)と7人の家臣が命からがら、山奥のひなびた村落(のちの八つ墓村)にたどり着く描写
 村落を背景に赤字ででかでかと「八つ墓村」というタイトルが映し出され、芥川也寸志による郷愁に満ちたテーマ曲が流れる

2~5分 1977年7月の東京・羽田空港(成田空港はまだ開港してませんでした!)
 空港でマーシャラー(航空機誘導員)として働いていた青年・寺田辰弥(演・萩原健一)に、上司が「新聞の人捜し欄に君の名前が出ていた」と告げ、辰弥は自分を捜しているという諏訪啓弁護士(演・大滝秀治)に会うために大阪に向かう
 ※このときの新聞の記載によると辰弥は「昭和22年3月16日生まれ」であり、多治見要蔵の「32人殺し」が発生したのは1949年の春であるため、辰弥は2歳になるまで八つ墓村に住んでいたということになる

5~10分 大阪の諏訪弁護士事務所
 諏訪弁護士の面談によって、辰弥が諏訪に人捜しを依頼した岡山県の資産家・多治見家の捜している人物に間違いないことが判明する
 辰弥は多治見家の使いとして大阪にやって来た祖父・井川丑松(演・加藤嘉)と面会するが、丑松は会った直後に血を吐いて死亡してしまう(第1の殺人)
 ※ここでの諏訪弁護士の発言やのちの森美也子のセリフから、八つ墓村は2~3年前の町村合併にともない行政上は消滅し、現在は「岡山県阿哲(あてつ)郡三田村川上」(岡山県北西部で鳥取県と接する)という地名になっていることがわかる(ただし、現地の住民はまだ一般的に「八つ墓村」という呼称を使っている)
 ※丑松役の加藤嘉はろくなセリフもないまま登場して5分後に死んでしまうが、その死亡シーンはこまかいカットごとに「白い食べ物」「茶色い胃液」「赤い血」を吐くという異常なこだわり方を見せている
 ※諏訪弁護士役の大滝秀治は同時期に公開されていた市川崑監督の「石坂金田一シリーズ」の常連俳優でもあったが、そちらでの間の抜けたユーモアのある演技とは打って変わって、こちらでは冷静沈着で理知的な弁護士を演じている(大滝は1996年の市川版『八つ墓村』には出演していない)

10~17分 辰弥、八つ墓村へ
 大阪府警の捜査によって丑松の死は硝酸ストリキニーネによる毒殺であることが判明するが、辰弥は多治見家の意志により予定通りに八つ墓村に向かうこととなる
 丑松に代わる多治見家の使いとして、多治見家の分家で村の有力者の森家から、当主の息子(故人)の未亡人である森美也子(演・小川真由美)が選ばれる
 森美也子は商船貿易の事業を経営しており、商用で神戸に来ていたために辰弥の付き添いを任されることとなった
 ※八つ墓村は国鉄伯備線の備中神代(びっちゅうこうじろ)駅が最寄で、駅から車で移動した山奥にあるという設定になっている
 ※岡山に向かうまでのエアコンのないすし詰めの国鉄電車や、黄色い公衆電話などの風景がいちいち昭和ですばらしい

17~29分 八つ墓村と多治見家
 八つ墓村に到着し、美也子から莫大な山林の権利を所有する資産家・多治見家のことなどを聞く辰弥
 ※セリフの内容から、森美也子自身は八つ墓村の出身ではなく多治見一族との血縁がないということがわかる
 不吉な空気を予感させる芥川の音楽が流れるなか、多治見家に向かう辰弥たちの前に村の狂女・濃茶の尼があらわれ、「八つ墓明神はお怒りじゃ、今に血の雨が降るぞ!」と不気味極まりない予言を叫ぶ(第1のたたりじゃ~!)
 ※濃茶の尼は村人からも「完全に頭がおかしい」と馬鹿にされており、この時点では村中の笑いもの扱いになっている
 辰弥は石垣づくりのいかめしい多治見家の屋敷に到着し、病床の当主・多治見久弥をのぞいた多治見家の面々と顔を合わせる
 辰弥自身は挨拶だけをすませて東京に帰るつもりだったが、多治見家の実権を握っている双子の老婆(多治見小竹・小梅)は、辰弥に多治見家の次期当主になってもらうように強く要請する
 現在の多治見家には、辰弥の母ちがいの兄・久弥と姉・春代、3人の大大伯母にあたる小竹・小梅姉妹がいるが、久弥は重病で瀕死の状態であり、春代は子宮摘出手術を受けたことが原因で嫁ぎ先から離縁されてきていた
 ※森美也子とならぶヒロインである多治見春代役の山本陽子さんがものすごい美人! 小川さんはちょっと化粧が濃い……
 辰弥は、幼いころに母から「辰弥の生まれた場所」だと聴かされてきた「龍のあぎと(顎)」という名前の土地が村のどこにあるかを尋ねるが、美也子も春代も知らないと答える

29~32分 母の夢
 辰弥はその夜、死んだ母の思い出がないまぜになった夢を見るが、自分に激しい虐待を加える見知らぬ父の姿を思い起こしてうなされる
 ※この夢のシーンで流れる芥川音楽も幻想性に満ちていて非常に印象的
 深夜に目を覚ました辰弥は、偶然に庭の土蔵に入っていく小竹・小梅姉妹の姿を目撃する

32~34分 井川丑松の葬儀
 翌日、村内で井川丑松の葬儀がとりおこなわれるが、式の最中に濃茶の尼と、多治見家に強い不満を持つ村人の片岡吉蔵が乱入し、「辰弥が村にい続ければ、必ず八つ墓明神のたたりで次の死者が出る」と主張する(第2のたたりじゃ~!)
 この時点でも、村人のほとんどは濃茶の尼の予言に動揺する気配はない

34~36分 八つ墓明神の墓所
 葬儀の後、辰弥は濃茶の尼が言っていた「八つ墓明神のたたり」の意味を美也子に尋ね、美也子は辰弥を、村はずれの小高い丘の上にある荒れ果てた神社跡に連れて行く
 神社跡に行くと、そこにはすでに麦わら帽子によれよれの白い夏背広姿の見知らぬ中年男がおり、「八つ墓明神の由来は私も知りたい」と、美也子の話を聞かせてほしいと申し出てくる
 神社跡は整備されなくなってからだいぶ時間が経過していたが、そこにある8つの石塔こそが「八つ墓明神」であり、それはかつて戦国時代にこの村に落ち延びてきた8人の尼子家の落ち武者の墓だと美也子は語る

36~42分 落ち武者狩り
 ここで場面は再び戦国時代にもどり、いったんは落ち武者たちと親密な関係になった村人が、毛利家の強い圧力と莫大な報奨金のために、夏祭りの場に8人をまねいたすきに毒薬を飲ませて皆殺しにするという凄惨なショックシーンが流れる
 ※焼いたり刺したり首切ったり……もうグロテスクきわまりない集団殺人が展開されるのだが、それに輪をかけて、死にかけた武将・尼子義孝が「お前ら(村人)全員の血筋が絶えるまでたたり続けてやる!!」と絶叫する義孝役の夏八木勲の演技が悪ノリにもほどがあるハイテンションぶりでとんでもない(だって、顔は白塗りで目にはブルーのカラコンよ!?)
 ※落ち武者の1人を演じる田中邦衛は、毒薬の入った酒を飲んで気分が悪くなり嘔吐するという演技をしていたが、その彼がのちに「食べる前に飲む!」の大正漢方胃腸薬の CM(1988~95年放送)で世間の絶大な支持を受けることとなったことを考えると、非常に興味深い
 ※完全に余談だが、この『八つ墓村』で落ち武者を演じた夏八木と田中は、のちにそれぞれ別の映画作品で、金田一耕助ものには欠かせない名サブキャラクターである「等々力大志警部」役を演じることとなる。ど~でもいいですよ~だ

42~49分 多治見家当主・久弥
 多治見家の屋敷にもどった辰弥は、多治見家の親族である久野医院の久野恒三郎医師や美也子の義父にあたる森荘吉らの挨拶を受け、病床の兄・久弥に初めて面会する
 重い病の身の久弥は健康な弟の辰弥に多治見家の全財産をゆずると宣言するが、病気の常備薬を飲んだ直後に血を吐いて死亡してしまう(第2の殺人)
 ※山崎努が演じる多治見久弥は、登場して3分後に死亡というかなり不幸な役回りとなるが、山崎の目の光り方が尋常でないために、観客に強いインパクトを残してくれる。いい仕事だ……

49~56分 金田一耕助と磯川警部
 多治見久弥の葬儀は翌々日(辰弥が村に来て4日目)にとりおこなわれることになったが、この時点でも八つ墓村の住民は「たたり」という風聞には懐疑的であり、若者には笑って冗談にする余裕も残っている
 多治見久弥の葬儀の最中に岡山県警の磯川警部(演・花沢徳衛)と矢島刑事(演・綿引勝彦)らが現れ、「多治見久弥の死に殺人の疑いがあるため司法解剖する」と宣言して土葬されるはずだった久弥の遺体を回収する
 辰弥と美也子は、磯川警部といっしょに現れた八つ墓明神の麦わら帽子の中年男に驚き、ここで初めて、この男が私立探偵の金田一耕助(演・渥美清)であるということが判明する
 磯川警部と金田一の会話から、多治見久弥の死を毒殺だと推測して警察に働きかけた人物が金田一その人であることがわかり、この段階での金田一の発言力の大きさがうかがえる
 ※原作どおりの1940年代ではなく70年代であるということで、和服の金田一も洋服姿になって今風にアレンジされているはずなのだが……なんでいっそう古臭く見えるのだろうか!? さすがは渥美清

56~61分 洞窟と武者姿の屍蝋死体
 その夜、眠れない辰弥は深夜にまた小竹・小梅姉妹が土蔵に入っていくのを目撃し、翌日(5日目)に1人で土蔵に忍び込んで、そこが地下の広大な鍾乳洞につながる秘密の入り口になっていることを発見する
 鍾乳洞に踏み込んだ辰弥は、迷路のように入り組んだ広大な空間の一角で、ミイラ化した死体が甲冑を着て祀られているのを発見して驚愕する
 屋敷に逃げ帰った辰弥は、たまたま居合わせた姉・春代とともに再び武者死体のもとに行くが、春代はその死体が自分たちの父親である多治見要蔵のものであると断定し、28年前の春に村人32人を惨殺して行方不明になった要蔵を小竹・小梅姉妹が秘密裏に殺害してここに隠していたのではないかと、多治見家にまつわる忌まわしい過去を初めて辰弥に語る
 ※ここでの回想シーンで、多治見要蔵が久弥・春代兄妹の実母である要蔵の正妻を斬殺するもようが一瞬だけ映されるが、そこで正妻を演じているのは当時人気絶頂だった超美人女優の島田陽子(当時24歳)である。島田さんクラスを妻にしていながらよその村娘に手を出す要蔵の美的センスはいったいどうなっているのだろうか……まさに狂気!

61~64分 多治見32人殺し
 ここで場面は1949年春の多治見要蔵による「32人殺し」のシーンとなる
 32人全員の殺害のもようは描かれていないが、白塗りのメイクで頭に2本の懐中電灯をさし、猟銃と日本刀を持って次々に老若男女見境なく村人を血祭りにあげていく要蔵の凶行は、このシーンが「たった3分」であるとは信じられないほどにインパクトが絶大
 鍾乳洞で静かにセリフを語る春代から、唐突に舞い散る桜を背景に要蔵がカメラに向かって疾走してくるショットに切り替わり、そのタイミングで芥川による壮絶な音楽が流れ出す演出も、見る者の度肝を抜くものすごさがある
 ※他の映像化作品や、このくだりのモデルとなったある実在の事件のイメージから深夜に発生した印象の強い「多治見32人殺し」だが、この1977年の『八つ墓村』では、村人がまだ全員目覚めていない早朝に起きたという設定になっている

64~72分 辰弥の出奔
 「自分の父親が大量殺人事件の犯人だった」という事実を隠していた多治見家に大きく失望した辰弥は、即日で東京に帰ろうと荷物をまとめて多治見家を飛び出すが、自分が多治見要蔵の息子であることから、濃茶の尼ら過去を知る村人たちの強い恨みをかう存在であり、さらに毒殺だと判明した丑松・久弥連続殺人事件の容疑者の1人として磯川警部にマークされているという事実に直面して途方に暮れる(第3のたたりじゃ~!)
 ※それほど重要な役ではないが、磯川警部について行動し、常に周囲の人間を眉毛のない鋭いまなざしでにらみつけている矢島刑事役の綿引勝彦さんの迫力がハンパない! その貫禄とドスのきいた低音で当時31歳!?
 疲労困憊する辰弥のもとに金田一があらわれ、「君は32人殺しの多治見要蔵の実の子ではない」という意味深な発言をし、疑問に感じた辰弥は自分の母・鶴子の実家である井川家を訪れて、丑松の甥の井川勘治(演・井川比佐志)にその真相を聞く

72~78分 辰弥の出生の秘密
 勘治の話によると、辰弥の母・鶴子は多治見要蔵に拉致されて強引に愛人にされてしまった後に辰弥を産んでおり、28年前の「32人殺し」は辰弥が自分の子でないと疑った要蔵が鶴子や辰弥に虐待を続け、そのために鶴子が辰弥を連れて逃亡したことが直接の原因だった
 ※このときの回想シーンで山崎努が見せる、多治見要蔵の井川鶴子への異常な愛情の演技が、ある意味で32人殺しのシーン以上にこわい! あの悪魔みたいな笑顔!! もう笑うしかありません
 さらに勘治は、村の小学校の工藤校長が「辰弥は多治見要蔵ではない別の人物と鶴子とのあいだに産まれた子である」と丑松に語っていたことを辰弥にうちあける

78~81分 工藤校長の出張
 辰弥はこの事実を森美也子に伝え、一緒に小学校の工藤校長(演・下條正巳)のもとへ駆けつけるが、工藤校長は岡山市での教育委員会の会議のために数日のあいだ村を留守にする出張に出かける直前であったため、辰弥の実父であるという人物の写真を見せただけで、詳しいことは帰ってきてからゆっくり話すと答えてそそくさと村を出発してしまう
 ※このシーンで、美也子の自宅の居間にある「巨大なレコードのオーディオセット」や「緑地に白の水玉模様のカバーのついた黒電話」といったなにげないアイテムがいちいち味わい深い

81~83分 磯川警部の捜査
 村の駐在所を拠点にして捜査を続ける磯川警部と矢島刑事だったが、駐在の新井巡査(演・下條アトム)が、今回の連続殺人事件が400年前の落ち武者のたたりによるものなのではないかと真剣に語りだすために当惑する
 ※いかにも気の弱い新井巡査らしいコメディシーンだが、それだけ「たたりのうわさ」が狭い村の中にじわりじわりと浸透してきているという変化がわかる重要なくだりでもある
 ※この時点で磯川警部は、今回の連続殺人事件を「多治見家の財産横領を狙った犯行」であると推定して親族の久野医師を容疑者とにらんでおり、犯人はともかくも犯行目的においてすでに事件の核心に迫っていたことがわかる
 ※このシーンで、磯川警部はその場にいない金田一のことを「それにしても、あの男はどうしたんだ、金田一は?」と語っている。このニュアンスから、本作での磯川と金田一との関係は原作小説ほど親しいものではなく、磯川警部からすれば金田一は、「警察としては捜査に役立ってくれる無視できない人物だが、個人的に信頼しているほどではない」存在であることがうかがえる
 ※ちなみに原作小説では、磯川と金田一は「八つ墓村」事件の段階ですでに10年以上のつきあいのある親密な関係である

83~87分 金田一耕助のまなざし
 磯川警部は、村内の寺で過去帳から28年前の「32人殺し」の被害状況を調べ上げている金田一に会って捜査状況を聞きだそうとするが、金田一は多くを語らないまま翌日から捜査の裏づけを得るために県外に旅に出かけると語る
 ※ここでの2人の会話から、今回の事件における金田一耕助の直接の依頼人は、自分の事務所で殺人が起きたことに強い憤りを感じた大阪の諏訪弁護士であるということがわかる
 ※この会話のシーンは、村のなんでもない道を歩く2人を正面から約1分間の長回しで撮るという演出になっているのだが、いかにも暑そうな強い日差し、雑草のあざやかな緑一色に染まった田んぼ端、朽ちかけた農機具置き場や放置されたトラクター、きわめつけに道ばたに置かれたかわいい道祖神といった風景になぜか激しく感動してしまう。ほら、私、田舎の出なもんですから……
 ※寺で過去帳を熱心に読みあさっている金田一のかたわらで、住職夫人と思われるおばさん(セリフなし)がゆっくりとうちわを動かして金田一に風を送っている姿がなぜか心に残る。それで冷房のつもりなのか!? どうもありがとうございます!!

87~93分 金田一の旅
 ここで、基本的に会話がなく芥川の旅情たっぷりな音楽が流れる中、金田一が捜査のための旅を続けていくという非常にメロウなシーンが入る
 金田一耕助は、具体的には2日間かけて和歌山、大阪、滋賀、京都、兵庫の各地をめぐっている
 ※金田一が駅前などの人通りの多い街中を歩いていくカットは基本的にエキストラを使わないゲリラ的な手法で撮影されたらしく、たまに通行人が「あっ、渥美清だ……」という表情で見つめる様子が映りこんでいるのがちょっとおもしろい

93~96分 工藤校長の死
 金田一がまだ村に戻らない中、多治見屋敷でとりおこなわれた久弥の初七日の席(辰弥が村に来て7日目)で、岡山市から帰ってきたばかりの工藤校長が食事中に激しく嘔吐して死亡してしまう(第3の殺人)
 ※またしても、食べたばっかりのものをスプラッシュさせながら映画『フラッシュダンス』のような激しいアクションでもがき苦しみ死んでいく工藤校長。もうカンベンしてください……
 ※多治見久弥の初七日は、東日本の慣習でいうのならばその次の日(死亡日から数えて7日目)になるはずなのだが、本作の舞台は西日本であるため、その慣習にしたがって「死亡の前日から数えて7日目」にあたるこの日に行われていた
 ※ちなみに21世紀現在のご葬儀事情では、いちいち親族に集まっていただく手間をはぶくために、葬儀の日に初七日の儀式もまとめて行ってしまう方式が浸透してきているようです。大変なのねぇ……
 工藤校長の死の原因は調べるまでもなく毒殺だったが、自身の医院で毒物を所有していたために第一の容疑者として磯川警部にマークされていた久野医師が混乱にまぎれて失踪してしまい、警部は正式に久野の捜査令状を発行して捜索する

96~99分 村の大混乱
 多治見久弥の死までは表だった動きのなかった村人の間でも、その人望からあつく尊敬されていた工藤校長が殺害されてしまったことで不満は一気に爆発し、犯人を検挙できない警察やかつての「32人殺し」の犯人を生んだ多治見家に怒りの矛先は向かっていく
 そんな中、工藤校長の死の翌日(辰弥が来て8日目)に濃茶の尼の絞殺死体が発見され(第4の殺人)、村内では「八つ墓明神のたたり」といううわさが極めて現実的な空気をおびてくるようになり、村は大混乱におちいる
 八つ墓村の連続殺人事件は TVの全国ニュースでも報じられる事態となるが、ニュース自体は「村の人の一部には『たたりではないか』という風評も強く……」と、村の雰囲気に比べればかなり冷静な報道の姿勢になっている
 ※ここでの TVニュースの報道という存在は1940年代を舞台とした原作小説にはなかった新たな視点であり、物語の舞台が1977年になったことで、実は「たたりに見せかけた犯罪」というものがすでに成立しようがない社会になっているということが如実に露呈する意味深いシーンでもある。でも、事件の真相はさらにその上をいくもので……?

99~108分 辰弥、鍾乳洞に潜伏
 たたりの恐怖にかられた村人の一部は暴徒と化して多治見屋敷に乱入し、危険を感じた春代は辰弥を地下の鍾乳洞に潜伏させる
 鍾乳洞をさまよう辰弥は旅から帰ってきた金田一や磯川警部たちにめぐり合うが、鍾乳洞内では多治見小梅の絞殺死体(第5の殺人)や、容疑者だったはずの久野医師の毒殺死体が次々と発見され(第6の殺人)、警察の捜査は暗礁に乗り上げてしまう

108~125分 結ばれる辰弥と美也子
 その翌日(辰弥が来て9日目)、金田一は美也子に会って鍾乳洞についての詳細を聞き出し、事件が解決するまで辰弥を保護する役目を美也子にやってほしいと要請し、美也子は快諾する
 ※この会話での金田一の「ほぉ~……あぁ、これ(鍾乳洞の地図)で見るとわかんないですけど、そうですか、村の真下になってるんですか。」というなにげない発言が、『刑事コロンボ』なみに観客と真犯人を動揺させるセリフでかなりうまい
 美也子は食料などを運んで辰弥の世話をするが、鍾乳洞をさまよった2人は、かつて鶴子と辰弥の実父とが密会の場所にしていた洞窟の一角「龍のあぎと」にたどり着き、結ばれる
 ※この鍾乳洞のくだりで大音量で流れる芥川の音楽が、んまぁ~ロマンティック
 ※ここで辰弥に出会ったときの美也子のファッションが、胸のあいた上下黒のライダースーツに首のスカーフというけっこう攻めている感じで、演じる小川のむっちり感もあって容易にこの先の展開を予想させてくれる

125~130分 多治見春代の死
 辰弥が1人でいるときに鍾乳洞に叫び声が響きわたり、駆けつけた辰弥は血だらけで倒れている瀕死の姉・春代を発見する
 春代は鍾乳洞で辰弥に物を運ぼうとする途上で何者かに襲われて重傷を負ったが、その人物の指を強く噛んで撃退したと語る
 続けて春代は辰弥に、実は辰弥が多治見家の血を引いていない子であるということを多治見家の家族全員がすでに知っていたが、「自分たちが死んで欲に目がくらんだ親戚に財産を奪われるよりは、まったく血のつながっていない辰弥に継承して多治見家の血を一新してしまったほうがよっぽどいい」という久弥の強い意志があったために辰弥を捜索したという真実を告白して息絶える(第7の殺人)
 ※物語の終盤にいたって男前な一面を見せる多治見久弥

130~32分 真犯人の豹変!
 辰弥は春代の死をみとった直後にある人物と出会うが、偶然に決定的な証拠を発見して、その人物が一連の事件の真犯人であることを悟る
 真犯人であることがばれたその人物は、一瞬にして白塗りに金色や真紅のカラコンというとてつもないメイクに豹変し、鍾乳洞の中で逃げる辰弥を追いかける。こわすぎ!

132~41分 金田一耕助の解明
 そのころ地上では、金田一が大阪から駆けつけた諏訪弁護士の持ってきた資料を読んで事件の真相を確信し、村人や磯川警部らが見守る中で今回の連続殺人事件の真犯人とその犯行の経緯を説明する
 ※このシーンを観てもわかるように、原作ではそれなりの必然性のあった「多治見家に直接の関係のない数名の人物」の殺害動機は、「村人と捜査を混乱させるのが目的で相手は誰でも良かった」というざっくりした説明になっており、肝心のミステリー部分を大幅に省略した本作の姿勢が如実にわかる最たる例となっている

141~46分 大崩壊
 金田一の語りと同時並行で、えんえん10分ものあいだ鬼の形相の真犯人に追いかけられ続けた辰弥はついに追い詰められるが、土壇場で発生した鍾乳洞の崩落によって九死に一生を得て地上に生還する
 鍾乳洞の崩落からピタゴラスイッチ的に引き起こされた失火によって多治見屋敷は全焼し、残された多治見小竹も炎にまかれて焼死したため、多治見一族の血は完全に絶えてしまう
 そのとき、村を見下ろす山の頂には、夕刻に大炎上する屋敷を見ながら高らかに笑い声をあげる尼子義孝以下、8人の落ち武者の姿が……
 ※真犯人が辰弥を追い詰めたときに流れる芥川のホルン吹きまくりの恐怖音楽がかなりおそろしいが、それにも増して真犯人の最後の「あなただけはと思ったけど……」というつぶやきが最高にゾクッとする!! これは多治見要蔵にゆうにタメをはる恐ろしさ
 ※ミニチュアではなく、実寸大の大屋敷セットを本当に燃やしている炎上シーンのスペクタクルがとてつもない
 ※最後の最後で再び姿を見せた落ち武者たちの姿に、観客は「あぁ、やっぱりそういう映画だったんだ、これ……」と大いに納得する

146~51分 エピローグ
 数日後、辰弥はふたたび東京に帰って空港のマーシャラーを勤める日常にもどる
 金田一は大阪の諏訪弁護士事務所に立ち寄り、八つ墓村ではついに語ることのなかった「事件のさらなる真相」を諏訪に告白する
 辰弥の見送る離陸したジャンボジェットをバックに、オープニングと同じテーマ曲とともにエンドロールが流れて、おっしま~い!!



 こんな感じなんですけど、ね……

 ギャー、長い長い、長すぎる! まとめる余地がなくなっちゃったよ。
 ということで、ここからわかるつれづれはまた次回ってことで、カンベンしてちょ~だいませ。
 予想外に話が長くなっちゃって、ごめんなさいね~! 好きってこういうことなのよ……

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