長岡京エイリアン

日記に…なるかしらん

『軍師官兵衛』  視聴メモ 第19回『非常の罠』

2014年05月15日 08時40分41秒 | 日本史みたいな
『軍師官兵衛』第19回『非常の罠』(2014年5月11日 演出・田中健二)


登場する武将の『信長の野望』シリーズでのだいたいの能力評価(テロップ順)

小寺 官兵衛 孝高  …… 知力84、統率力67
 (演・岡田准一)

竹中 半兵衛 重治  …… 知力59、統率力91
 (演・谷原章介)

明智 光秀      …… 知力93、統率力95
 (演・春風亭小朝)

高山 右近 重友   …… 知力71、統率力75
 (演・生田斗真)

荒木 村重      …… 知力52、統率力83
 (演・田中哲司)

母里 太兵衛 友信  …… 知力44、統率力80
 (演・速水もこみち)

蜂須賀 小六 正勝  …… 知力74、統率力90
 (演・ピエール瀧)

織田 信長      …… 知力115、統率力108
 (演・江口洋介)

中川 清秀      …… 知力26、統率力75
 (演・近江谷太朗)

小寺 兵庫助 利高  …… 知力78、統率力63
 (演・植木祥平)

小寺 政職      …… 知力44、統率力49
 (演・片岡鶴太郎)

羽柴 秀吉      …… 知力95、統率力94
 (演・竹中直人)

小寺 職隆      …… 知力72、統率力55
 (演・柴田恭平)


ざっとの感想

○秀吉「村重ェ! おぬしの向かうのは滅びの道じゃ、裏切りの道じゃぁ! うがぁああ!!」
 荒木村重説得の役目を主君・信長からおおせつかってはみたものの、まったくもっての「けんもほろろ」状態で村重に追い返されてしまう秀吉と光秀。光秀はどことなく熱のない態度で「とついだ娘(養女)を返してくれるんなら、ま、いっか。」といった感じなのですが、秀吉はいつにない激烈な剣幕で村重に怒りの捨てゼリフを叩きつけます。
 「毛利家や石山本願寺と手を組んだところで新しい世など創れない」という秀吉の主張ももっともらしいのですが、「じゃあ信長がおれたち家臣を大事にして新しい世を創ってくれるとでも思ってんのか?」という村重の疑問も、少なくとも天正六(1578)年の時点ではかなりシビアなものとして2人の胸に突き刺さったことでしょう。アバンタイトルの短いやりとりでしたが、非常に濃密なシーンだったと思います。
 それにしても、ここでも他人事で「裏切りなんて……ぼかぁ理解できないなぁ~。」といった軽さの目立つ光秀。そして将来、「ああいったかたち」で村重と再会することになる秀吉。これからの展開がますます楽しみになりますね。特に秀吉と村重は、どんな演技合戦を見せてくれるんだろ?
 あれ、1996年の『秀吉』では、後年の秀吉と村重(演・大杉レンレン)の再会って、描写されてましたっけ?

●私は、個人的には磯部勉さんは大変な名優だと思うし、舞台で観たときに実に存在感のある方だなぁ、と圧倒された経験もあります。
 でも、この『軍師官兵衛』で磯部さんが演じているキャラクターの貧相さ、知性の低さといったら、どうだい……
 ひどいもんですよねぇ、今回やっと! 初登場から4ヵ月後にしてやっと迫力みたいなもんが「ちろっ」と見えてきたんだもんね。しかしそれも、出た時点で「死亡フラグ」がビンッビンにおったっているという残念さ!!
 「役不足」とは、まさしくこのことよのう。なんなんだろ、このもったいないにも程のある配役。

●う~ん、やっぱり、荒木謀反の時点で小寺政職と官兵衛がドラマで描写されるほどはっきりした主従関係にあったと考えるのは、無理があるんでないかい? 政職の謀反で、お光の方が秀吉に預けたわが子・松寿丸の命を心配するのは、どうみてもおかしいような気がするんですが。
 だってもう、ここ最近の官兵衛は完全に秀吉の部将みたいに立ち振る舞っているし、信長も政職サイドの人質を政職の家臣の子どもでよしとして、しかもその子を家臣の秀吉に任せるという処遇の甘さと軽さが気になるんだよなぁ。
 こりゃもう、織田家としては官兵衛と小寺政職を「ひとつの勢力」とははなっから認識していなかったって観るのがいちばん自然なんじゃないですか? 信長は官兵衛を「秀吉の現地調達ガイドさん」としてしか認識しておらず(いや、認識すらしていなかったかも?)、ましてや政職なんかはそれ以外の「神吉」「櫛橋」とおんなじ地方領主おおぜいとしか捉えていなかったでしょう。
 ドラマはやっぱり、物語をムリに盛り上げようとして、政職の謀反を史実以上にいびつにクローズアップしているようにしか見えないなぁ。
 実際の官兵衛はたぶん、鼻でもほじりながら「あぁ~政職、あいつ絶対裏切ると思ってたんだよな~。これで縁が切れてせいせいしたわ。」くらいにかまえていたんじゃないんでしょうか。そんな、岡田くんみたいにオロオロあたふたしないって! そりゃ、村重の謀反のほうでてんやわんやになっていたとは思いますが。
 村重謀反と政職謀反じゃ、どだい重大さがまるで違っていたということですね、結局。

●前回の展開から強く確信し続けているのですが、村重の謀反の悪い部分というか、いちばんの原因と責任を、村重ではなくて家臣の中川清秀に押しつけているのは、どんなもんなんでしょうか。なんか、せっかくの村重一世一代の大バクチが、「家臣の失敗を隠すための決断」というミョ~に消極的なものになっちゃった気がするし、戦国武将にあるまじき大失態をおかした(とドラマが語っている)清秀のヒドさが、それまでなんの伏線もなかったのに前回に唐突に出現してしまったから、村重も清秀も、どっちのキャラクターの説得力も共倒れになってしまうという印象があるのです。
 確かに田中哲司さんの演技が素晴らしいことはよくわかるんですが、村重、自分がなさすぎるんじゃないのか? ドラマにおける「武将・荒木村重」の魅力はかなり減衰してしまいましたよね。なんか疲れ切った中間管理職のサラリーマンみたい。いや、そういう人が戦国時代にいても一向にかまわないとは思うんですが、それがあの荒木村重ってことはないだろう!!
 それだったら、従来どおりの「梟雄」「野心家」村重のほうがいいんですけど……だって、そんなに心の清い男が、ドラマみたいに一介の浪人から一国のあるじにのし上がれるかね!? 男はもっとワイルドに、ダーティに~。

●子持ちの人妻でありながら、昼間からまっピンクの服を着てダンナの部下と1対1で密会するだし……変わらぬ美しさというよりは、立場相応でない若作り(実際に若いとしても)からくるイタさしか伝わってこない!! 私には、有岡城内に参集するつはものどもの心の叫びがありありと聞こえてきます。

「あの……すみません奥さん。おれたち、真剣に生きるか死ぬかっていう大仕事の準備をしてるとこなんで、そういう緊迫感のかけらもないバカまるだしのファッションセンスで城内をうろつくの、本当に勘弁してもらえませんかね!? あなたがおれたちのリーダーの嫁さんだと思うと、心の底から『大丈夫か』って不安になってきますんで!!」

 私はどうしても好きになれないな、このドラマの桐谷さん……ホントに、だしを原田美枝子さんみたいなお方が演じておったら! 観たかったなぁ~、大河ドラマでマクベス夫人みたいな悪女が。悪女とはまるで逆の方向性でイヤな女性ですよね、このドラマのだしって。こういうレベルの一大事の最中でもそんなかっこうしていいのは、深田恭子さんだけ!!

●なんか今回は、だし……というか、桐谷さんの演技の耐えられない軽さが異様に目立つ。高山右近の切々とした告白を聞く表情も、どこからどう観ても、
 「ヤバい、このイケメンなに言ってんのか全然わかんない。なんか重たそうな話だから、重たそうな顔して聞いてるか。」
 って気持ちになってるとしか思えないんですよね! ホントに一昔前のフル CGアニメのキャラクターみたいな、表情筋と知性の欠如。
 でも、わざとだかなんだかは知らないけど、右近の長い告白に対して、だしからのリアクションを一言ももうけなかった脚本も脚本ですけどね。シーンの場所もキリスト教の天主堂みたいだし、だしを神にでもたとえたかったんでしょうか? ずいぶんとうすっぺらいでうす様ですこと!!
 まぁ、史実のだしさんだったら、右近の長話なんて、「あぁ、今の時代じゃよくある話ですわね。いいじゃないですか、死ななかったんですから。」って一蹴していたことでしょう。

○観たか桐谷さん、その直後のシーンでの、うちゆき姫の「まぁ……怖いお顔。」というわずかなセリフに込められた限りない愛情と色っぽさの密度を!!
 こういうのを「貴婦人の風格」っていうんですよ! う~む、これはやっぱ、実生活での経験の積み重ねも必要なんでしょうね。うちゆき姫もいろいろあったわけだ……その……北の国あたりで。

●信長とお濃の方との幸若舞『敦盛』イメージシーン、超ダサい。スタジオ撮影まるだしなのが、なんちゅうか……いいようもない劇的残念空間を演出していますね。
 でも、他人にとってはファッキンどうでもいい、あるいは純然たるハタ迷惑でしかない「夫婦のイチャイチャぶり」を、大河ドラマで表現できるギリギリのラインで可視化したとも解釈できる、実に意味のない数十秒間の世界に愕然といたしました。
 まぁ、お濃の方が信長とこんなに夫婦仲がいい時代劇ドラマも久しぶりかと思いますんでね……いいんじゃないっすか、アツアツ敦盛で。

○かなり徹底した演出で、「わざと」兵装が古臭くなっている御着城の小寺家。でも、ただ黒いだけの黒田家の当世具足よりも、やっぱこっちの南北朝の気風を残した胴丸甲冑のほうがかっこいいよね~!! あと、片岡鶴太郎さんはど~してもこの中世様式の甲冑に身をつつんでいなくちゃあ、ね! 小寺政職は、そりゃあそんなに大物な武将ではないですが、いよいよキタキタ~って感じですよ。ま、北条高時はあんまり鎧を着込んでいるっていう印象は最期までなかったけど。

●官兵衛は……バカなのね~、バカなのよ~。
 自信過剰にもほどがありますよね。自分が単身で乗り込んで説得すれば、荒木村重も謀反を撤回し、それによって主君の政職も謀反を撤回し、信長もゴキゲンをなおして最終的に人質の息子は助かる、ってか……謀反って、撤回すればなかったことになるもんなんだ……
 これはまぁ……まるまる一年は牢獄の中で頭を冷やさないと治らないバカさ加減ですよね。若さゆえの代償はなによりも厳しく、逃れようもなく必ず我が身にふりかかってくるものであることよ。人間、日々精進。

●殺陣は確かにカッコいいんですけど、まぁ、裏切られた末の行き場のない八つ当たりですからね……今回の官兵衛はホントに、いいとこがどこにも見当たらないですね。天才軍師の道は、ただただひたっすらに遠い。

●御着城も有岡城も、城下町全体を堀や土塁で防御する「総構え」式の大城塞だったらしいんですけど、そこらへんが一向に描写されないまんま、とうとう今回の謀反の段まできちゃいました……
 来週は、来週こそは、それぞれの城郭の威容が CGとかなんとかで描写される、はず!?
 松永弾正の信貴山城をあんなにサービス特盛で再現しちゃったんですから、こっちもよろしくお願いしますよ~!!


結論、「第20回がとてもたのしみです。」

 今回は、今まで引きずってきた「政職と官兵衛の親密度」がついに決裂するというクライマックスで終わりましたが、そんなの最初っからなかったんじゃなかろうかと思うより他ない、官兵衛の異常な政職LOVE がミョ~に不自然に見えてしまう回になってしまいました。ピュアすぎるんだよな、官兵衛の思考回路が……あなた、『孫子』のどこを読んでたんですかって話なんですよね。官兵衛はそんなに、現代のオタクのように頭でっかちで現実に目を向けていない甘ちゃんだったのでしょうか?

 まぁともかく、そんなヤング官兵衛を徹底的に芯から叩きなおす「牢獄イヤー」は、いよいよ来週からスタート! み~ん~な~で~み~て~ね~☆

 ……そんなん、好きこのんで観るわけないか……視聴率がひたすら不安ですが、主人公が官兵衛になった時点でこの流れは確定なんですから、かまわず突き進んでいってくだされい!!

 そういえば、今回は武将リストを見てもわかるとおり、これまでの回と比べて登場する武将が極端に少ないという、かなり挑戦的な転換点エピソードとなったのですが(新登場武将もゼロ)、そこでクローズアップされたのがただかわいいだけのピンクかかし1本だったということで、人が少ないことだけがよくわかるスッカラカンな回でしかなくなってしまったような……「有岡城編」はかなり心してかからないといかんぞ、これは。
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