華やぐ時間

時の豊潤なイメージに惹かれて 。。。。

 ” 冬の標 (しるべ) ”   乙川 優三郎 著

2009-09-07 11:34:24 | ★本
 本を読んでいる時間が 好き
 気持ちがざわついてるときは読もうという気になれないから  読める環境が好き であるのかもしれない
 しなければならない用事がない時間・・   ひとりぽっちでシーンとしている時間・・
 こういう境遇が 好きなんだなぁ
 どれどれと ウキウキ 気になってた本の世界に入っていく

 人の生きる一瞬を切り取って描くような短編小説も  その簡潔な冴え冴えとした技に 心を震わせて読むけれど
 わたしは 長編の物語が好き
 主人公の生きていく時間の経緯  境遇の変容  心の深浅 成長に  こういう人もいるかもしれないと 肯い
 読んでいる数日間は  身近の人のように親しく 主人公たちのことが気になる

 藤沢周平の小説も好きだけれど  最近 乙川優三郎の時代小説を よく読む
 先週は 図書館の ”本日戻ってきた本コーナー”で見かけて  直木賞受賞の” 生きる ”を 久しぶりに再読した
 ” 生きる ”の主人公の厳しい人生は  乙川自身の辛い人生の手記かと思うほど 読んでいて 胸に迫る

 男性が主人公の話が多いが  この” 冬の標 ”で 女性の主人公の熱さに触れることができた
 幕末の頃 下総に住む 絵を描くのが好きな 高禄の武家の娘が主人公である
 親や社会に縛られて自由に生き難かった十代から三十代後半までの歳を  絵を描くのが好き ということを
 心の拠り所にして生きる
 結婚させられ 舅姑を見送ったあと  単身 江戸に出て絵を描いて生きようと旅立つまでが 描かれている
 家族に訣別し平穏な暮らしを捨てて  江戸での生計のあても 住むところもなく  それでも絵を描いていたいと思う心 
 生まれてくる時代が違うと こうも余計なしがらみに囚われ 不自由なものかと思う
 幕末の 時代が変わろうとしているときに  信念を貫く武士や 自分のやりたいことを見つめる女性の強さ
 主人公たちの数十年に寄り添いながら  人のまっすぐな生き方に付き合えたような喜びと厳粛を感じる物語である




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