華やぐ時間

時の豊潤なイメージに惹かれて 。。。。

映画  ” トリスタンとイゾルデ ”

2006-10-26 00:52:40 | ★映画  
ワーグナーの楽劇でも有名な二人の名前  シェークスピアのロミオとジュリエットの下地にもなった
悲恋物語らしいけれど  どんな物語なのか知らないので  よき機会と 映画を観てきた

イギリスが一つになる前の 古い古い時代のお話
コーンウォールの領主マークに育てられた騎士トリスタンは戦闘の末 重傷を負い 死んだと思われて
葬送の舟に乗せられて弔われる
舟は敵国アイルランドに流れ着き  アイルランド王の娘イゾルデから 献身的な介護を受ける
トリスタンは やがて彼女と恋に落ちるが  イゾルデはマークと政略結婚することになってしまう

愁い顔のトリスタン  かわいらしい顔立ちのイゾルデ  誠実なマーク王も勇者たちも かっこいい
重そうな剣を振り回して 斬るというより なぎ倒して戦ってるような戦闘場面
お城といえども 石造りの床の上にはわらが敷かれている   質素な料理   重そうな衣装
そんなこんなの時代背景を見ているのも 楽しかった

恩あるマーク王の后になったイゾルデを  苦悩と共にみつめるトリスタンなのだけれど
ヒロインのイゾルデは  今どきの女の子のように 積極的だなぁ
乳母が 二人の恋 逢引きに 「 若気の至り 」という言葉を言う場面があるけれど  それにしても
若気の至りは  あのように  まっすぐ 自分たちの気持ちしか 思っていないのだろうか
自分の立場や義理や人情を越えて進む恋は  他人を巻き込んでの破滅と背中合わせの若気の至り
どちらかというと  愛  愛 と叫ぶイゾルデは  困ったチャンに見えた

イゾルデの父王は  戦の中で手柄を立てた家来に 娘を嫁そうとする男である
あるいは 剣の試合で勝った者に 領土と娘をやろうと言う男である
そういう時代もあったのだろうなぁと  今の目で驚いてしまう
心から 妻のイゾルデを愛しているマーク王は  誠実で賢く  とても魅力的な存在だった
男の純情な心  善悪を見極める心  人への包容力  人を統べる理想的な男性像に見えた
マーク王の側近の勇者たちの存在感  味方を裏切る者たちの心理も なんとなく共感できたけれど  
トリスタンとイゾルデの恋には  なんとな~く  共感できかねる

恋に限らず 人への気持ちは表わしていいときと 隠していなければならないときがあると 思う
かつて  わたしは 心の正直は美徳であり 善であると思っていた
やっと この頃  事は そう単純なものではないらしいことに 気づいた 
正直な本心の表出  あるいは恋していることの告白  これらは なんだか利己的な独善の匂いがする
わたしが  わたしは  わたしを・・・   事々は  まず 自分が優先 なのだろうか 
行動したり表わすか否かは  まず 相手の状況を慮るのが 先なのではないだろうか    
こんなことを考えているようでは  わたしには 若気の至りが もう ゼロになってるのかしらン  
ン~   いいんだか まずいんだか・・・  (-_-;)

  
コメント (5)
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映画  ” 16ブロック ”

2006-10-23 11:42:38 | ★映画  
ブルース・ウィリス主演の映画を観てきた   
映画が始まっても なかなか主役が登場しないなぁと 画面のしょぼい初老の警官を見ていた
え”!  酒の瓶を手放せない くたびれて 陰の薄そうなこのおじさんが ブルース・ウィリス!
だって  ”ダイ・ハード ”の精悍さが ブルース・ウィリスだと思い込んでたんだもん

なにを こんなに疲れてるのだろうと思わせるほど  やつれて 精彩さに欠け  活気がない
夜勤明けの朝8時 帰宅しようとしているとき  上司から 急な指示を言われる
「 証人を裁判所へ 10時までに護送してくれ  担当の警官が渋滞でこっちへ来れないから 」と
16ブロック(区画)先1.6キロほどの道路は車の渋滞で進まず  黒人青年のお喋りにウンザリする
刑事ジャックは車を停めて 酒屋へ酒を買いに入る  と 車中の黒人青年へ銃口が向けられている
ここから 話が急展開していく
法廷でこの青年は 警察内の悪事についての目撃証言をするのだということが わかってくる
同僚刑事が 護送は自分が替わろうと申し出る  口封じに証人を殺害しようとの雰囲気ぷんぷん
振り切って 証人と共にマンションの一室に隠れる    囲まれたのを振り切ってバスに乗り込む
そんなところに入ったら まずいのに・・    バスは またたくまに 警察の狙撃班に囲まれる
   
どうやって 刑事と証人は この場の危機を逃げれるのだろうかと 心配になる
8時から10時の閉廷までに証人を護送する   映画の上映時間も ちょうどそのくらい
なにやらリアルタイムの時間の進行が ハラハラ ドキドキである
アメリカ映画なので 銃撃戦もある   クルマがクルマに体当たりでぶつかっていく場面もある
バス内の人質解放のために交渉人が登場し 重装備の狙撃班がバスに突入する場面
タイヤのパンクした大型バスが車輪から火花を散らしながら 道路の乗用車にぶつかりながら走る場面

饒舌な証人が 取り留めないお喋りの中で言う  ( 話の詳細は うろ覚えだけれど・・ )
「 悪天候の野を あんたがクルマで走ってるとき  バス停に 今にも死にそうな病気のおばあさんと
 自分の命の恩人である親友と  理想の女性の3人が立っている
 クルマには一人しか乗せられない  この答えで人柄がわかるんだ  さぁ あんたなら どうする 」

長いエンドロールを見つめながら 席を立たない観客たちは きっと このたとえ話への回答にも  
黒人青年へも ジャック自身へも  あたたかい安堵感をもらって ほっこりしていたのかもしれないなぁ


 
コメント (2)
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映画  ” カポーティ ”

2006-10-14 10:13:18 | ★映画  
水曜日レディス・ディに  映画 ” カポーティ ”を観に 東京へ行ってきた
「 ティファニーで朝食を 」の作家トルーマン・カポーティが  ノンフィクション・ノベル「冷血」を
書くにいたる6年間の経緯の話である
カポーティは 文壇で名声を得  俳優や女優とも親しく アメリカ上流社交界で人気があったが
1950年代の社会でホモ・セクシャルであることを公言し スキャンダラスな存在であったと言われる  

カポーティ役のフィリップ・シーモア・ホフマンは  この映画で アカデミー賞主演男優賞を受賞した
役作りのために 半年間の減量をし  カポーティの声 くせ しぐさを 徹底的に研究したという
生前のカポーティを知っている人たちがいる現在での演技が 本人に近似だからの受賞ではないはず
部屋の中  飛行機の中で一人でいるときのカポーティは  妙に静かで 過剰じゃない
ホフマンは 黙して横顔を見せている演技の中で カポーティの心の底の静けさを醸したのだろうか
 
人の集う場での賑やかな楽しい話術  社会的名声を利用し初対面の人に自分の過去を語る話術
刑務所所長に大金を渡し  頻々と殺人者に面会し  独房で犯人と二人だけで話をする
あごを突き出し 目線を下にして人を見下ろすような一瞬の表情    神経質そうな声のトーン
本のタイトルを ”冷血”に決めたとき「 それは犯人を指すのか 作者自身を指すのか 」と問われる

犯人のひとり ぺリー・スミスに惹かれ 親しくなっていく 
「 同じ家に育ち わたしは 表口から出て行き  君は裏口から出て行った 」と話す
犯行を書いて本にしようと思ったとき  すでに ぺリー・スミスを利用しているのかもしれない
有能な弁護士を見つけてきてやり  犯人二人の死刑判決が延期されていく  
ペリーの死刑執行を畏れながら  それを望む矛盾    本が完結できない焦燥

犯人の死刑執行を見届け  本を出版し  高く評価されるが  こののち一冊の本も書けずに
アルコール中毒で亡くなったという
いまだに高く評価される文学”冷血”を書くことは 自分の心を削って為す業であったのかもしれない
この本は 若い頃に書評が褒めるので 殺人のことを書いた本なんて・・と しぶしぶ読んだ
読み終えて  いい本だなぁと 感動し  すぐに 自伝の要素の強い ”遠い声遠い部屋”も読んだはず
さっそく この二冊を再読したいと準備中である 
カポーティほどの人の ものを書く生業の欲望と業  あるいは 矛盾 焦燥 悔い 自尊心 驕りなどの  
人の心の真っ黒い部分を 映画ではもっと踏み込んで描いてほしかったなと 少々 物足りなかった

    

コメント (8)
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