タイトルで富貴蘭の羆だと思った方、ごめんなさい。わざと狙いました。
一番好きな普通系カンラン『羆』です。
高知県室戸市吉良川町名ノ浦産の大輪更紗で、その舌の巨大さから'柿のヘタ'と呼ばれていたものを、『羆』と命名し、
土佐愛蘭会に登録してあります。
名前は他の候補も考え蘭友に選んでもらったら、一番堂々としたこの名前が良いと言うことになりました。
花は最大13センチにも及ぶ超大輪で、弁幅広く(広過ぎ無いとこがまた良いです)舌もものすごく大きいですが、この品種の最大の魅力は、
これだけ大きな花なのに、豪快さや迫力以上に女性的な優しさを備えた上品な花であることです。
これだけの大輪花になると、大概はゴツさが前面に出て、ややもすると下品な花になりがちで、
同じ名ノ浦産の有名品種にも、そういった花がありますが、この花は弁質は柔らかく、
弁先のキレ良くゆったりとした花容で、たおやかな佇まいです。
そしてこの花にしてこの葉、と思える素晴らしい優しい葉姿をしています。
そして更に、性質も大人しく、私にとっては全てが好きな花です。
たおやかな佇まいなのに、羆と言う名前はどうかとも思いましたが、
伝統園芸植物をやってる方ならこの名前を聞いて想像するのは動物のヒグマではなく、富貴蘭の羆でしょう。
その両方に因んだ名前です。
展示会では良く入賞してますが、この花の大きな特徴として、極めて写真写りが悪いです。
しかも我が家のこんな木に咲いて、さらにもうくたびれた花ですから、この程度の花だと思わないでくださいね。
それに、今日では花茎は真っ直ぐに、花配りは機械的にグルグルと、外弁はピシッと伸ばして、内弁はきちんと閉じて、
舌はふっくらと巻くように整形するのが寒蘭界では当たり前のようですが、この花はいじったりしてません。
何もしなくて、植え替えもしなくて、肥料もやらなくて(自分で書きながら酷すぎるとは思ってます…)、
この木に、これだけの花が咲くのですから、素晴らしいポテンシャルの高さだと思います。
私が40年以上寒蘭と向き合って来て、日本寒蘭の中で一番好きな花です。
見たことの無い方にはぜひ実物を見ていただきたいものです。
もちろんちゃんと真面目に栽培されてる木の花を、です。