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USS「ハワード」アーレイバーク級ミサイル駆逐艦〜よこすかYYのりものフェスタ

2022-12-15 | 軍艦

今回のよこすかYYのりものフェスタの一番の目玉、
それはなんといってもアメリカ海軍の駆逐艦、

USS「ハワード」Howard(DDG-83)

であったのはまちがいありません。

「ハワード」は、アメリカ海軍の「アーレイ・バーク」級駆逐艦です。
艦名は海兵隊のジミー・E・ハワード一等軍曹(USMC)に因みます。



ハワード一等軍曹は、朝鮮戦争、ベトナム戦争のベテランですが、
名誉勲章を与えられた「ヒル488の戦い」で、
小隊15名の海兵隊員、2名の海軍兵を率いて敵陣の背後に降下し、
ベトコンの1個大隊(300人以上)と交戦し、12時間の戦闘で、
6名の犠牲者を引き換えに、敵200名を殲滅するという働きをしました。

ハワードは敵の手榴弾で重傷を負いながらも指揮を続け、
帰還して無事に退役しています。

ベトナムで一緒に戦った部下は、彼のことを

「ジョン・ウェインのような、ポーカーフェイスのハードな男で、
彼を見ていると『硫黄島の砂』のテーマソングが聞こえてくるようだった」


と回顧しています。

ハワード軍曹は64歳で亡くなりましたが、USS「ハワード」は、
サンディエゴから出港する時、彼が葬られている
フォート・ローズクランス国立墓地(コロナド近くのカプリロ国定公園)
の前を通るときに、必ず敬礼を行う慣習になっています。


ここで唐突に、元自衛官の方からいただいた、
「トップガン」のサンディエゴ聖地マップです(笑)

左にある
『アイスマンの葬儀をやった国立墓地』
ここに、ハワードさんも眠っているわけです。


「アーレイ・バーク」級というのもとてつもなく数が多くて、
「ハワード」はDDG-51からDDG-121までの現役艦、
そしてDDG-139までの建造中、建造予定艦のうち33番艦となります。

同級の命名基準はお察しの通り人名なので、
まあいうたらネタは無尽蔵です。

リソースには全く困らない上、艦名に名前を残すことが、軍人にとっては
至高の褒章となるのですから、言うことなしのシステムですね。

同級にはリチャード・オケインローソン・ラメージ
チャールズ・’スウェード’・モムセンなど潜水艦畑の人、
ジョン・ポール・ジョーンズなど古の海軍軍人、ルーズベルトなど政治家、
ミッチェル、スプルーアンスなどという海軍の英雄がいるかと思えば、
同じ船に乗っていて戦死した三人兄弟「ザ・サリバンズ」などの、
名もない水兵たちの名前もあります。

女性の名前もあります。



第一次世界大戦で海軍看護隊に加わり、女性として初めて十字賞を受けた
レナ・サトクリフ・ヒグビー
(ネットニュースでHigbeeを”ハイビー”としていたけどそれはないかと)
そのミドルネームを含むフルネームを
USS Lenah Sutcliffe Higbee (DDG-123)に残しました。

また、日系アメリカ人の政治家(元陸軍第442日系部隊)の、


左・イノウエ(爆弾で右手を失い医師の道を諦めた)

「ダニエル・イノウエ」USS Daniel Inouye 
(DDG-118)

また、史上初のアジア系アメリカ人将官となった、


Gordon Paiʻea Chung-Hoon
ゴードン・パイア・チュン=フー(1910ー1979)

の名前をとった、

「チャン・フー」USS Chung-Hoon (DDG-93)

さらに、第一次世界大戦時、USS「サンディエゴ」がボイラー爆発した際、
顔に火傷を負いながらも現場を離れなかったフィリピン人の消防士、


テレスフォロ・デ・ラ・クルス・トリニダード(1890-1968)

の名前をつけた、

「テレスフォロ・トリニダード」
USS Telesforo Trinidad (DDG-139)

が、建造予定となっています。

おっと、つい艦名由来の話になると夢中になってしまいます。
先に進みましょう。



持ち物検査は一応基地の入り口で済んでいるということで省略ですが、
「ハワード」に乗艦するためには免許証などの身分証明が必要でした。

乗艦するためのラッタルは通行を制限するため、
(ときどき写真のように荷物の積み下ろしが行われる)
5〜10分くらい並んで待ちました。

この様子を見ていただいてもお分かりのように、
並んでいるのはわたし以外全員が男性です。



積み下ろした物品は、なんとアメリカのお菓子。
TWIXというのはアメリカのパーキングエリアの食堂のレジなんかに
ちょこっと置いてあるようなクッキーバーです。

M&M(これをアメリカ風に発音すれば”エメネム”)とか
チーズイット(チーズクラッカー)なんかも。
艦内のPXの在庫整理をかねて(しらんけど)売るつもりのようです。

ところでセーラー服の二人、全く日本人のようで、
自衛官が制服だけ替えていると言われても信じてしまいそうですが、
この人たちも当然アメリカ軍人なんだなあ。



並んでいたら横でなにやら修理らしい作業をしているのに気がつきました。
乗員と海自の女性隊員、そして民間人らしいアメリカ人のおじさん。
これはどういう状況かな?
(多分ヒントは上から下された青いホース)



ラッタルの途中で通行者の見張り?をしているのも東洋系。
第7艦隊に配属される軍人はやはり東洋系が多くなるのかしら。
日系でなかったらあまり意味がない気がしますが。



舷門には5旒の旗が。
左から、

アメリカ合衆国海兵隊旗
🇯🇵日本国旗
🇺🇸アメリカ合衆国国旗
アメリカ合衆国海軍旗

 POW戦争捕虜/MIA任務中行方不明者の旗

となります。

また、左側の赤いテントに黄色い文字で書かれた、

”READY FOR VICTORY”
(もうこれで勝つる:意訳)

は、「ハワード」のモットーです。



構造物に掲げられている15とトロージャンが描かれたパッチは、

第15駆逐戦隊(Destroyer Squadron 15, DESRON 15)

のもので、「アーレイ・バーク」級DDGの8隻から成ります。



舷門から右側に進み、トンネルのようになった通路を通り抜けます。

「負荷容量」

「パント」(The punt)は少なくとも3人が乗れるものとし、
総荷重600ポンド(人員・機材)でなければなりません。

「パント」とは、一般的に小船の意味なので、
おそらく作業艇のことを言っているのだと思います。


赤い札というのはだいたい危険を告知するものですが、これも

危険
ここ(今いる場所)はミサイル爆破エリアに通じています。
うろつかないでください。
警告なしに発射が行われる可能性があります。


となっています。
ミサイル発射のときに甲板をうろうろしていたら
大変なことになるのはこれを読んできるみなさんならよくご存知ですね。



通路を抜けると前甲板に出ます。



Mk.41 垂直発射システム(Mk.41 Vertical Launching System)

自衛隊のほとんどの護衛艦に搭載されているのでお馴染み。
「あさひ」型以降の「まや」型、そして「もがみ」型もこのタイプです。

今回観艦式に参加した外国艦では、
タイ海軍の「プミポン・アドゥンヤデート」フリゲート
王立オーストラリア海軍の「アンザック」級フリゲート「アランタ」
同じくRASの駆逐艦「ホバート」

などが同じVLSを搭載しています。


甲板に出てとりあえず振り返ってみよう。

上部構造物の正面に鎮座するのは、

Mk.15 20ミリファランクスCIWS

「アーレイ・バーク」級の中には
前部にファランクスCIWSが搭載していない艦もあります。
2002年に就役したDDG-85以降は後部の1基だけになりました。

おそらく代わりに
Sea RAM(Rolling Airframe Missile)
を搭載するようになったからと思われます。

近接防空ミサイルとしてSea RAMを搭載している自衛艦は
「いずも」型護衛艦と「もがみ」型護衛艦となり、
「いずも」型はCIWSを2基にSea RAMを2基、
「もがみ」型はSea RAM のみでCIWSは搭載していません。


続く。


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3 Comments

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諸々 (Unknown)
2022-12-15 08:28:41
>並んでいたら横でなにやら修理らしい作業をしているのに気がつきました。乗員と海自の女性隊員、そして民間人らしいアメリカ人のおじさん。これはどういう状況かな?

米海軍NavSup(補給処)のFuel Depot(燃料廠)が自衛隊基地での米海軍艦船への補給の可否(継ぎ手がきちんと合うか等)の実証作業をやっていたと聞きました。

>第7艦隊に配属される軍人はやはり東洋系が多くなるのかしら。

今はどうかわかりませんが、旧植民地だったフィリピン国民は、米軍で一定年数勤務すると、アメリカ国籍がもらえる優遇措置があり、米軍を志願するフィリピン人が(少なくとも過去は)かなりいました。

アーレイバーク級は、途中からCIWSは積まなくなり、Sea RAMになったり、レーザー兵器(ODIN(Optical Dazzling Interdictor, Navy))になったりしています。横須賀のDewey(DDG-105)もこのODINを積んでいます。
https://orca-oruka.hatenablog.com/entry/2021/05/04/221329

「もがみ」型へのMk-41 VLS搭載は後日装備になっていて、今のところ、7番艦以降分しか予算が付いていません。
返信する
アーレイ・バーク級 (お節介船屋)
2022-12-15 14:33:38
イージーズ・システムを搭載した安価な防空艦で数を揃える構想で建造されました。
1991年から就役し、現型のフライトⅠがDDG-51「アーレイバーク」から71「ロス」までの21隻、電子戦能力強化のフライトⅡがDDG-72「マハン」から78「ポーター」までの7隻、ヘリコプター2機搭載のフライトⅡAがDDG-79「オスカー・オースチン」から124「ハーヴェイC・バーナムJr」までの48隻、新型レーダーとされたフライトⅢがDDG-125「ジャックH・ルーカス」から139「テレスフォロ・トリニダード」までの20隻、ただし127「パトリック・ギャラガー」が番号が飛んでいますがフライトⅡAと言われていますので隻数がⅡAが1隻増えて、Ⅲが1隻減るのかもしれません。
83「ハワード」はフライトⅡAで2001年10月就役です。現型が満載排水量8,364tに対して9,425tです。全長も153.8mに対し増えて155.3m。
フライトⅡAは対潜哨戒ヘリコプター2機搭載で収容できる格納庫を装備、SQQ-89ソーナー装備で防空艦とともに対潜艦の能力があります。

「ズムウォルト」級建造打ち切りにより、建造が継続され、フライトⅡAリスタート艦としてDDG-112「マイケル・マーフィー」2012年就役と113「ジョン・フィン」2017年就役が5年空いています。

古い艦は順次近代化されています。

フライトⅢのDDG-125「ジャックH・ルーカス」が来年就役しますがイージーズ・システムがSPY-1からSPY-6への変更でAMDR(Air and Missile Defense Radar)の組み合わせにより能力向上となり、なおかつ将来改造のため発電量の大幅増強がされます。

日本がイージーズアショア用として採用したSPY-7を設置出来ないことでイージーズ搭載艦とすることが問題となっています。SPY-7をイージーズアショア以外で艦載とする国がカナダ等2か国がありますが、モジュール数やシステムが違う予定であり、日本のSPY-7搭載艦が世界初であり、米海軍はSPY-6と会社もシステムも違いがあり、米海軍からの情報や支援がどのようになるのか色々問題もあり、搭載艦の大きさや船型で情報が出たり、変更されたりしています。現在は2万トンから縮小され「まや」型と同程度となっていますが買ったSPY-7がそのまま搭載出来るのかアレイのサイズ減少させるのか?です。

フライトⅢも重量や容積、発電量も将来的には限界に近く、2028年から建造されるDDG(X)への橋渡し役になると言われています。

なお2017年 フライトⅠのDDG-62 「フィッツジェラルド」が伊豆沖でコンテナ船と、56「ジョンS・マッケーン」がシンガポール沖でタンカーと衝突事故を起こし、「フィッツジェラルド」は艦長以下3名の負傷でしたがイージズシステム損傷、「ジョンS・マッケーン」は居住区の損傷で死者10名、負傷者数名を出してしまいました。この年は他にも太平洋艦隊に事故があり、問題となりました。2件とも人為的な事故として軍事裁判で艦長等が処罰されました。

参照海人社「世界の艦船」No844、873、975
返信する
のしろ竣工 (お節介船屋)
2022-12-16 13:47:02
昨日12月15日護衛艦「のしろ」が竣工しました。
NHKが報道したので下に添付します。
https://www3.nhk.or.jp/lnews/nagasaki/20221215/5030016756.html

なお「のしろ」は掃海隊群ではなく、佐世保の護衛艦隊第13護衛隊に配属されました。13護衛隊はDD-157 「さわぎり」、DE-230 「じんつう」、FFM-3「のしろ」と全く違う種類の護衛艦での編成となりました。
監視業務が優先されるものと思います。

またFFM6番艦(第1306号艦)が12月21日三菱重工長崎造船所で進水とも発表されました。
艦名はどうなるのでしょうか?
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