goo blog サービス終了のお知らせ 

ネイビーブルーに恋をして

バーキン片手に靖國神社

ガンナーズメイト〜USS「リトルロック」艦内展示

2025-05-14 | 海軍

ミサイル巡洋艦「リトルロック」6インチ砲塔内にある
ちょっとした展示をご紹介しています。

■ ハッシュマーク(勤務章)とシェブロン(善行章)

冒頭写真は前回まで紹介していたのと別コーナーで、
’クラッカージャック’ユニフォームことドレスブルーがあります。


ペティ・オフィサー・ファーストクラス
(ガンナーズメイト)


ドレスブルー”クラッカージャック”ユニフォーム

ガンナー・メイトの主な任務は、艦砲およびミサイル発射機の操作、
メンテナンス、トラブルシューティングであり、
基礎的な爆薬、誘導、安全にも重点的に取り組んでいます。

展示された袖の階級章(ハッシュマーク)に注目してください。
ハッシュマーク

3本の線は、それぞれが4年間の「良好な」勤務期間を表しています。

つまり、4年勤務ごとに線が一本ずつ増えていくのです。



12年間の「良好な」勤務期間を終えると、
着用者は赤い線を金色の線に変えることが許可されます。

米国海軍、米国海軍予備軍、米国海兵隊、米国海兵隊予備軍において、
懲戒処分を受けることなく12年以上勤務した軍人には、
金メッキのサービスストライプが授与されます。

また、海軍の斜めストライプは、E1~E6のCPOに与えられ、
長さは男性と女性で少し違います。
もちろん女性の方が少し小さいらしいですが、女性より小柄な男性がいたり、
恵まれた体型の女性がいたりするから男女同じにせよ!
とその筋の方から出そうなクレームは今のところないようです。

ストライプは、ドレスブルー、ドレスホワイト、
ディナードレスブルージャケット、ディナードレスホワイトジャケット、
これらの制服の左袖に着用され、下端が前側になるように付けます。

ちなみに、これはその資格が得られると自分で購入するらしく、
海軍のストアでは2025年現在、21.50ドルで販売されています。

山形のシェブロンと一緒に買うと安くなるのでお得です。


そのシェブロンですが、こちらを

Good Conduct 

とアメリカ海軍では呼んでいます。
以前当ブログでもご紹介しましたが、もう一度説明しますね。

帝国海軍では「善行章」という名称で同様のマークが使われていましたが、
これは英語の「グッド・コンダクト」を訳したものと考えられます。

本来金線は「善行勤務」の要件を満たさなければ与えられませんでしたが、
2019年の6月1日に条件が改正となり、善行のあるなしに関わらず、
12年以上の勤務をしたすべての水兵に金色が与えられるようになりました。

ただし、この間規律違反があった場合、特にAWOL(無届外出)などで
軍法会議扱い、あるいは非司法的処罰(NJP)対象となってしまったら、
金色のストライプはもらえず、もしすでに持っていれば剥奪されます。


画像は、以前ご紹介した映画「ザ・ダイバー」で、
デニーロとキューバ・グッティングJr.が法廷に向かって歩くシーンですが、
キューバの袖のマークは金色であるのに、マスターチーフから降格された
デニーロの袖は(写真でははっきり見えませんが)赤線です。

設定そのものは割と無茶苦茶な映画なんですが、
デニーロが3回NJPで降格されていることはちゃんと考証してありました。

まあ、3回降格されても不名誉除隊になっていないのもどうかって話ですが。
不名誉除隊になる条件は、さっくりと

殺人/過失致死(Murder/Manslaughter)
詐欺(Fraud)
脱走(Desertion)
反逆(Treason)
間諜(Espionage)
性暴行(Sexual assault)

などをやらかすことですが、実は

無許可離隊(Being Absent Without Leave, AWOL)

も1発アウトで不名誉除隊のはずなんですよね。

下士官および上級下士官の等級(レート)と専門職(レーティング)を、
山括弧と専門職マークの組み合わせで表す歴史は古く、
初めて導入されたのは1886年のことです。

それ以前から数十年にわたって使用されていた鷲のマークに、
レートを表す山括弧と、水兵の専門職を示すマークが追加されたのです。

上の写真はBoatswain's mate(甲板員、甲板長補佐という意味)のもので、
「リトルロック」展示の専門職は、


このマークの表すGunnner's mateです。

シェブロンの本数は金属年数ではなく、レート(階級)を表すので、
3本線の赤というのは一等砲手という意味しかありません。


こちらにも6インチ砲のパウダーケース(薬莢)があります。


6インチ47口径 口径 海軍銃用真鍮製火薬ケース

6インチ47口径砲は空中と地上の標的に対して、
150ポンドの弾丸を13マイル飛ばすことができる
「ライフル」と呼ばれていた。

仰角41度での最大射程は14.5マイルである。
弾丸の重量は様々であった。

徹甲弾は130ポンド、高容量の砲弾は105ポンド(約48kg)、
対空砲弾は65ポンド(約30kg)であった。
弾薬は半固定式(砲弾と火薬のケースは別々)であった。

これらの銃の火薬ケースは真鍮の容器に収められ、
総重量は65ポンド(約30kg)であった。

■ ガンナーズメイト

ガンナーズメイトの略称はGMです。
そしてモットーはギリシア語で、

"Non Solis Radios Sed Iovis Fulmina Mitto."
ノン・ソリス・ラジオス・セド・アイオヴィス・フルミナ・ミット
=私は太陽の光ではなくゼウスの雷を放つ


なんと厨二病的なかっこいいモットーでしょうか。

神話に伝わるところによると、全知全能の神ゼウスは
ラスボスの怪物の王テューポンとの最終決戦で雷を用いて勝利しています。

つまり太陽の光などという生ぬるいものじゃなく、
俺らが放つのは、怒れる殲滅武器であると言いたいわけですな。多分。

ガンナーズメイトの等級は1794年から、つまり
帆船時代から存在する由緒正しいものです。

GMにはそれではどうやってなるかですが、イリノイとジョージアにある
ガンナーズメイト「Aスクール」という訓練学校を卒業します。

そこで砲兵としての基礎知識を、現在はコンピュータベースで学び、
実践訓練で艦砲、ミサイル発射装置、魚雷操作、保守、
もちろんトラブルシューティングに加えて爆発物、誘導追跡システム、
小火器、海軍弾薬について学んでいきます。

現在は電子理論の基礎もカリキュラムに組み込まれており、
シミュレータなども日々進化しているため、
訓練のリアリズムがより深化し充実したものになっています。

例えば、以前は射撃訓練の際有線のシミュレータが使われていましたが、
現在では圧縮ガスカートリッジを使用したリアルな武器が使われます。

このMILO(Multiple Interactive Learning Objectives)シミュレータは、
数百ものシナリオが実行可能で、シナリオは、訓練目標を達成するために、
スキル構築とストレス誘発を組み合わせたものにすることができます。

シミュレータはMILOシステム搭載であらゆる動きに対応し、
反動を再現し、ソフトウェアからスピーカーを通して音が発せられるため、
訓練生は実弾射撃場で経験するのとほぼ同じ感覚を得ることができます。


さて、そうやって訓練生は「A」スクール課程に合格すると、
「C」スクールで自分の選んだ専門分野を極めます。

「A」と「C」の間になぜBがないのかは知りません。

下はイリノイ州ミシガンにあるグレートレイク砲術学校紹介。
昔の映像も見られるのでおすすめ(字幕はありません)。
US Naval Gunnery School, Building 521, Great Lakes SSC, Gunners Mate, GMM, GMG

大きな体育館のような建物の中に実物大の甲板があって、
実際の大きさの艦砲を扱ったりできる模様。

■ 6インチ三連砲マニュアル


ドレスブルーの後ろに立てかけてあるのは、
CL55「クリーブランド」、CL56「サンフアン」、
CL106「ファーゴ」
以降を対象にした6インチ砲のマニュアルです。

このマニュアルの中から、砲塔内に人がいる写真を抜粋しました。

(レンジファインダーステーション)
ポインター(照準手)、レンジファインダーオペレーター、トレイナー

(右方砲室ステーション)

砲長、クレイドルオペレーター、ランマー(突き棒)オペレーター

(ガントレインオペレーターステーション)

オペレーターが右手に持っているファイアリングキーですが、
これどこかで見たぞ?と思ったら、



展示の中にありました。
右側にはターレットトレインのなんとかのピン、とありますし、
このお魚の形のキーも砲塔内で使われていた馴染み深い道具でしょう。

おそらくピンとかキイとかは、いざという時に外され、
そうでない時には作動しないように装着されるものだと思います。

(薬莢ホイストオペレーターステーション)

手動です

(砲弾ホイストオペレーターステーション)

(ローディング)


(砲ストレージ)

「シェルマン」(砲殻員)が砲をParbucklingする、と説明があります。

パーバックリングとは、海事用語で、転覆した船舶や構造物に
ケーブルを取り付けて直立させることで、それらを正す方法のこと。

この場合は砲弾にそれを行っているというわけです。


続く。






最新の画像もっと見る

1 Comments(10/1 コメント投稿終了予定)

コメント日が  古い順  |   新しい順
AWOL (Unknown)
2025-05-15 05:45:56
無許可離隊(Being Absent Without Leave, AWOL)は「帰隊時間に遅れる」(帰隊する意志はある)ことで、脱走(Desertion)は帰る意志はない(逃亡)ので、一発、不名誉除隊(懲戒免職)なんだと思います。
返信する

post a comment

サービス終了に伴い、10月1日にコメント投稿機能を終了させていただく予定です。
ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。