ネイビーブルーに恋をして

バーキン片手に靖國神社

平成30年度陸上自衛隊総合火力演習

2018-08-27 | 自衛隊

今年も総火演の季節がやって来ました。

ただし、2018年8月26日日本時間現在、わたしはまだアメリカにおり、
今回は、遠く離れたアメリカで現地のライブを観ながら
エントリ制作をする、
という画期的なご報告をすることにします。

 

例年総火演の行われる8月下旬は帰国している時期なのですが、
今年は滞在のちょうど半ば頃にかかってしまうことになりました。

今回チケットがいただける話を頂いた時には、
途中で一度帰国して
総火演に参加後、もう一度とんぼ返りをする、
ということも真剣に考えていたのですが、そんな企みも
息子の大学のオリエンテーションと当日が重なってしまい砕け散りました。

しかもここだけの話ですが、春頃、某所から来賓扱いで
本番を観戦させていただくというお話をいただき、
お受けしておいてもしダメなら代理でもいいか、と聞いたところ、

「これはご招待なので本人でないと駄目です」

と言われ断腸の思いで断念したという経緯がありました。

頂いたチケットも紫だったし、どうしてこんな年に限って・・・(涙)

 

しかし、その代わりと言ってはなんですが、いつも自衛隊イベント関係で
お世話になっているKさんが予行演習に参加し、
その時に撮った写真を送ってくださったのです。
というわけで、頂いた写真を見ながらお話していこうと思います。

これは今見ている画面のキャプチャ。

それにしても本番の富士演習場、激しく霧で曇っていますか?
体感的には暑くなくていいかもしれませんが、これじゃ見えないのでは・・。

 

さて、前段演習は、装備紹介です。
遠距離、中距離、近距離火力、ヘリ火力などを順番に紹介していきます。

特科火砲の実演は、155ミリ榴弾砲、FH70の入場に始まります。
この火砲を40キロ平方の島に一つ配置すると、島全体をカバーすることができるそうです。

この予行演習の時にはご覧のように裾野が欠けてしまいました。

そして今行われている現地の曳火射撃の結果・・・・
集中砲撃も、富士山も、な〜〜〜んにも見えません。

現地で観戦している人とリアルタイムで会話したところによると、

「全滅でした

何も見えなかったってことでよろしいか?

続いて迫撃砲部隊。
これは、実際に見るより射撃準備がわかりやすくていいですね。
81ミリ、120ミリ迫撃砲の砲撃合図を行なっていたのは女性でした。

つまり隊長は女性であるということでよろしいか?

しかしこの時もニコニコのコメントでは「弾着なう」「見えない」「霧が」・・。
これは本番というのに、いまいちというかかなり盛り上がりには欠けるかも・・・。

 

87式対戦車誘導弾。
これはインターネットで見ている人だけが見られる角度。
こんなことして撃ってたのね。

ただし、現地の報告によると、各種誘導弾は

 

「目標が見えないので軒並み射撃してません」

 

だったそうで・・・。


いて近距離火力など。

狙撃手の大アップもライブ映像ならではです。

当たったかどうかも肉眼よりよくわかる。
狙撃はちゃんと行われ、見事窓を撃ち抜いたようです。

WAPC96式装輪装は頂いた写真になかったのでキャプチャ画像でどうぞ。

出たー!これが今年の目玉、16式機動戦闘車。
総火演初お目見えのはずです。これ見たかったなあ・・。

後進高速走行しながらの砲撃に会場は湧いているようです。

ヘリAH-1Sの対戦車弾発射。
ニコニコのコメントでは「おじいちゃん無理しないで」という声が・・・。 

今年、アパッチは姿を見せませんでした。
佐賀で墜落事故があったからだということです。

フライング・エッグは偵察で顔を出しますが、OH-1も
ここのところ総火演には来たことがありません。

10式戦車が射撃が行う頃には会場は晴れて来たように見えましたが・・。

この日、本番で一台、的を外した!という声がコメントに上がっていました。
これはあとで正座反省会コースかな・・・。

後進しながらの一撃。

続いて90式戦車。
90式は後退射撃は行いません(行えません)。

特筆すべきは、最後だ最後だと言われながらも去年まで参加していた
74式戦車の姿が今年見えなくなっていたことです。

74さん、ついに・・・・(´;ω;`)。


さて、ここまでで前段演習が終了しました。

休憩後、後段の演習は名付けて「電磁スペクトラム作戦」
島嶼奪回作戦という言葉は今年はなくなり、その代わりより具体的な
内容を表す作戦名になったということですね。

警戒、監視を行うP-1が会場に進入してきました。

・・・ただし本番の行われている画面上、音はすれども姿は見せず。
雲の上を飛んでいたような気配は確かにありましたが。

 

電磁スペクトラム作戦というのは電子戦で、新型の装備で電波情報を収集し、
情報を共有し、電子戦部隊が相手を叩く電子攻撃を実際に行います。

電波攻撃は敵のレーダーを縮退し、電磁優勢を獲得するのが目的ですが、
こればかりは総火演でいくら何かをしても、何もお見せするものはありません。

「電波攻撃を実施せよ!」「了解!発射!」「攻撃成功!」

とか言われても、へーそうですかとしか・・・。

レーザーJDAMに寄よる対地攻撃でレーザー照射したところが無事爆発。

「ミッション、サクセスフル!」

F2が来てるってアナウンスがいうんですが、もちろん見えません。

「F-2が飛行しています!」

ごおおおおおおお。

どかーん。

って感じ。

この後も電子戦は継続されます。

ドローンとか。

ボート持って走る人(情報小隊)とか、初めて見るものも多数。
あー、行きたかったなあ。

ネイ恋的におっ!と思ったのは、この時情報部隊から情報を受けた
護衛艦「てるづき」が
「シルバームーン」という英語名で交信していたこと。

となると、あとの「つき」型護衛艦は
「オータム・ムーン」「ウィンタームーン」そして「クールムーン」?

水陸両用車AAVが真っ白に煙幕を張るのも初めて見ました。

AAVから降りて来た「アンフィビアン」部隊。
みなさん重い装備を担いで信じられないほど俊足です。

こ、これがMCV、16式機動戦闘車の攻撃ですか!

写真がまたすごいわ・・・。
ちなみにKさんの武器はキヤノンの60Dでレンズは18-300mmだとか。

これ、ライフル砲ならではの曳火なんでしょうね。

ところでMCV、時速は100キロ出るそうです。
タイヤを装着し、市街戦を想定しているということでしょう。

続いて敵前地の施設小隊による障害処理が始まりました。
まず発煙弾で支援を行い、もともと霧がかかっている上、先ほどAAVが煙幕を張り、
ただでさえ白い周囲をさらに真っ白にしてから
地雷原処理ロケット弾を発射します。

MCV、施設小隊を支援するため、陣地変換の走行しながらの射撃です。

ヒトマル式が総出演で一斉射撃。

これは最後の総攻撃をしている90式。
90式もかなりのお歳ですが、まだまだこの先も活躍しますよね?
自衛隊は物持ちがいいから・・・。

 

さて、無線機が電子戦で妨害されたのに対し、こちら側は
通信衛星「きらめき」から敵の部隊の所在位置を味方に送り、
その後誘導弾の火力で相手をやっつけます。

もうこの頃には現場は自然の霧と煙幕により、山など何も見えません。

シャレになっとらん。

そして最後の「状況終わり」のナイアガラの滝。

本番では流石にこれはそれなりに見えていましたが、
やはりこの写真の日に比べると
いまいちの効果だったと思います。

Kさんの参加された予行日は気温も30度まで上がらない
比較的涼しい日で、楽な観戦だったようです。

フィナーレ。

Kさんが行かれたのは19日で、予行は予行でも陸自広報のご招待、
人の少ない日だったらしく、真ん中に誰も座ってません。

Kさんのご報告にもありましたが、本番の総火演を見ていて、
これからの主役は完全にMCV、
そして電子戦と水陸両用部隊に移行したと思われました。

ヒトマル式戦車が陸自装備の「主役」だった頃、

「戦車の出番がある頃には日本はもう終わり、って聞くし、
確かにすごい装備だけど、専守防衛の日本で、いつどこで使うんだろう。
ってかそもそも戦車って抑止力になるんだろうか」

というかすかな不安というか疑問がないではありませんでしたが、
時代はすでに水陸両用部隊を必要とする段階に来ていたのです。

防衛省は陸上イージスの取得に具体的に動き出しましたし、
より実践的な装備こそが国防の現場に求められているということでしょう。

 

ところで今回の総火演、Kさんに言わせると、

「4回程予定されている予行・本番のうちで19日は最初の予行の為か、
曳火射撃での富士山模様は裾野部分が欠けたり、戦車小隊の一斉射撃は
バラついたり、状況終了!は自衛隊らしくない15分遅れだったりして、

相当の修正が必要と感じました。

ということですが、現状を鑑みた結果、前年度から訓練の内容が
ガラッと変わったことも、これらの不手際の一因だったのではないでしょうか。

何れにしても、水陸機動団と電子戦が、これからの陸自の
中心になっていくことが如実にわかった総火演でした。

 

ともかく、Kさん、現地で観戦された皆さん、お疲れ様でした。
そして、74式戦車さん、長い間お疲れ様でした。

あなたの遺志はMCVが引き継ぎます。
沖縄前知事と同じく遺言の音声データは公開出来ませんが。

安らかにお眠りください。 R.I.P.

涼しいアメリカで画面だけを見ているのは楽は楽でしたが、
空気の振動も、耳栓も必要のない総火演なんて!と、
去年のあの現地での感覚を懐かしく思ったのも事実です。

来年は参加できるといいなあ・・・。

 




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3 Comments

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出来ることはやる (Unknown)
2018-08-27 20:47:03
我が国の防衛の考え方の基本は「防衛計画の大綱」という文書に記されます。1976年に初めて作成されたものですが、自衛隊が創設されてから実に約30年後のことで、防衛庁(当時)内部には「防衛計画」はありましたが、政府レベルで公の文書にはされていませんでした。

1976年版に記されたのは「基盤的防衛力」という考えで「ソ連が樺太や北方領土から北海道に侵攻して来た場合、米軍が支援に来てくれるまでの間、持ち堪えるだけの防衛力」を持ち、自衛隊は我が国を守る最低限度の力を持つ楯となり、侵攻勢力を打ち払う矛の役割は米軍に担ってもらうという考えでした。

「基盤的防衛力」は北朝鮮が日本列島越えに弾道ミサイル発射を行っても変更されませんでしたが、民主党が政権を取った翌年(2010年)に見直されることになりました。自民党がやって来たことをまずは否定することから入った民主党政権ですが、政権交代がなければ、今でも「基盤的防衛力」でやっていたかもしれません。

民主党政権の見直しで「基盤的防衛力」は侵攻を受けた場所に迅速に防衛力を振り向ける「動的防衛力」となり、地域密着型だった配備を見直し、機動性を持たせることとなりました。16式機動戦闘車(MCV)は「動的防衛力」の落し子です。現在、開発の最終段階ですが、155ミリりゅう弾砲FH-70の後継はMCVのように装輪化され、高速での移動が可能になります。

「防衛計画の大綱」は、この年末に向けてまた改正中ですが、次は領域横断(Cross Domain)という言い方になる予定です。従来の陸海空という分け方では割り切れない「宇宙」と「電子戦」に取り組もうという考えで、今回の総合火力演習はそれを捉えたものです。

中尉のレポートから見るに、敵の位置の標定に電子戦的なアプローチをしていた(敵の通信を傍受、発信源を標定することにより、敵の位置や意図を把握する)のではないかと思います。国民が普通に生活しているところではなく、離島のように普段、人がいない場所を敵に占拠された場合、敵の位置を知るには、そこまで見に行くか耳を澄ますしかありません。

あくまでも個人的な意見ですが「防衛計画の大綱」のような政府の正式見解には出ない考え方として、今までのアメリカとの役割分担の「アメリカが矛で日本が楯」というのを見直し、出来ることは自分でやろうという意識が出て来ていると思います。

「水陸機動団」ですが「攻勢作戦」(攻めること)が主体になります。総合火力演習でお得意の10式戦車のバックしながらの射撃は、敵から撃たれるのから「逃げながら」反撃している訳ですが「水陸機動団」では、水陸両用車でひたすら前進して、奪われた島を取り返します。

「攻勢作戦」は従来「矛」の仕事だと考えられてきましたが「楯」だけに甘んじていたら、離島をあっさり盗られてしまうかもしれない。取られてしまって「基盤的防衛力」で米軍を待っておくだけなら、自衛隊は戦争ごっこと言われてしまいます。だから「出来ることはやる」という方向に舵を切ったように思います。

去年から空母型DDHの南シナ海、インド洋巡航が始まりました。去年は「いずも」今年は「かが」基幹の3隻(いずも、いなずま、すずつき)が昨日(8月26日)出港、10月末までの二ヶ月間、南シナ海とインド洋を巡航します。https://flyteam.jp/news/article/98820

防衛省は、国際親善が目的だとしていますが、南シナ海の自由航行の原則を守る意味もあると思います。一時期、米軍は中国が作った人工島のすぐ側をわざわざ通る「航行の自由作戦」をやっていましたが、最近はパタリなので、こちらも「出来ることはやる」だと思います。

航空自衛隊も米軍のB-52やB-1に対する「護衛訓練」を時々やるようになって来ました。「出来ることはやる」これこそが我が国は自ら立つという意志を周辺諸国に知らしめるために防衛省・自衛隊が出来ることだと思います。

「かが」のニックネーム「White Base」もすごいですが「すずつき」はなんと「Sailor Moon」です(爆)
返信する
花火と総合火力演習はライヴでないと~(笑) (鉄火お嬢)
2018-08-27 22:04:46
あっ!見たさに一時舞い戻ってきたな中尉!と思ったら、違ごたんですな、なぁ~んだ。
私は去年予行とはいえ憧れの紫スタンドに座れて満足しきってしまい、今年はお休みするつもりが、そんな時に限ってチケットがわさわさ降ってきて、平日に代休取れてしまい、多分雨になるなと分かっていても23日木曜の学校予行に行きました。経験則から考えた雨対策での観覧撮影を試したかったので。まあ雨中耐用訓練としては(笑)やはり富士山ファイアもガタガタで「今まで見た中で一番へた」と思いましたがww隊員さんたちと話したら「実は自分も実際に見るのは初めて」という方が多くて(゜ロ゜;なに!?まあそりゃ30万人自衛官の何割が総合火力演習生で見たのか……陸上に限っても、自分たちの装備以外の実射見る機会すら少ないかなと。そんなんでイザ戦争できるんかい?戦闘で「はぇ~っ誘導弾スゲー」とか感心してるわけには(笑)今年は頂いたチケットを予備自君たちに回し感謝されましたが、現職自衛官も休みに合えば是非見たいんじゃないかなと、来年もし余分貰ったらそっちも当たろうと。
やはり画面で見るもんじゃないですね。花火と総合火力演習は。キナ臭さとビリビリズシーン!がないと。
返信する
皆さま (エリス中尉)
2018-08-28 02:09:51
unknownさん
防衛大綱についてもそうですが、現状についてのわかりやすい解説ありがとうございます。
改めて何度も読み直しました。

民主党の悪行について回顧し、忘れまじとする動きが今ネットにありますが、
大局的な視点で見ると必ずしも悪いことばかりではなかったということは、
ちょっと自分自身にも肝に命じておかなくてはならない教訓です。
1976年に制定された基盤的防衛力が形を変えたのは時勢のおかげだと思いますが、
おっしゃる通り自民党政権が続いていれば変革は起こらなかったかもしれません。

水陸機動団にシフトしていく動きは、私たちレベルが気づいたのが
だいたい3年くらい前ですから、その変革後「やることはやる」に舵を切り、
実際に動いて現在に至っているのか・・。
自衛隊が「攻撃する」ことには重箱の隅を突くように騒ぐ連中は、
不思議なくらい水陸機動団に何も言わないのは、そこまで読んでないからかな(笑)

すずつきは「Cool moon 」ではなく「Sailor moon」・・・。(絶句)
なるほど、「月に代わってお仕置きをしてくれる」わけですか。

鉄火お嬢さん
流石にオリエンテーションが25日では、どんなに頑張っても無理(涙)
あの現場を知ってるからこそ画面で観るこの他人事感は虚しかったですよー。
最初に行った時に、戦車砲の轟音に身がすくみ上がりましたからね。
あの体験を一度でもすると、まじで戦争はいかん!と思うこと請け合いです。

陸海空自衛官が他のことを全く知らない、というのは、
いろんな場面で目撃してきましたが、同じ自の中でもそんな場面はいくらでも、
というか結構あるようですね。
防衛大学校は学生のうちに三自衛隊の公開に参加して見ていますが、
志望の時に地本に連れてきてもらって見学した経験がない自衛官は
案外観艦式も総火演も知らないままになってしまうこともあるようです。
一般公開の前に全自衛官に公開するべきではないかと確かに思いますね。

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