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空挺団の”ライト・スタッフ”〜平成28年陸自降下始め

2016-01-16 | 自衛隊

まず自由降下によって何人かの空挺団員が地上に降り立ちました。
ここからは次々と航空機が飛来し、諸島部奪回のための作戦が展開されます。



ヒューイ、UH-1Jからの降下が始まりました。
陸自は「J」と「H」の2種類のヒューイを持っていますが、
両者は似ているようで、顔つきが割りと違います。
こちらの「J」はノーズが突き出している感じで、ワイヤカッター付き。
額に当たる窓ガラスの上にツノが付いているのが「J」と覚えてください。
「J」は「H」より全長も大きく、エンジンもパワーがあります。



チヌークから飛び降りるより、怖そうに見えます。
落下傘を開くための環をかける器具は、、床にあるようですね。
ヘリのパイロットは振り返って降下の様子に注目しています。



最初の回の時、「ヒューイから降りるのは3人くらい」と適当に書いてしまいましたが、
この写真を確認すると間違いで、6人が飛び降りていました。
「J」タイプは乗員4名以外に11名の兵員を輸送することができます。



次に飛ぶ順番が来たら、降下員は入り口のハッチ上部を掴んで
そこで体勢を保ったまま待ちます。



右側に座っている人が、飛び降りるタイミングを知らせるようです。
中谷大臣が飛び降りた時に、まず両手をバツにして胸の前で組み合わせていましたが、
あれが降下の際の基本姿勢なんですね。
また大臣は、下から「あご引いてください!」と声をかけられていました。



中谷大臣のニュース映像を見ると、飛び降りたとき、上から引っ張られる衝撃があったようですが、
もしかしたら実際の降下においても、傘が開く瞬間には同じような衝撃を感じるのかもしれないと思います。



この隊員はまっすぐ飛び降りているように見えますが、



この最後の隊員は明らかに後方に向かって飛んでいます。



ヘリが推進してしまったので、後ろに向かって飛ばなければならなくなったのでしょうか。



これは12傘(ひとにいさん)と言われる従来型の落下傘。
去年は新型の13傘が初めて登場したということですが、いまのところ
新しい傘が使用されている様子はありません。

新しいタイプは傘同士が接触しても潰れないので、短時間に全員が降下でき、
降りる範囲が狭いので降下後にすぐ集合して作戦行動に移れるというメリットがあるそうです。



続いてチヌークからの降下。
先ほど防衛副大臣の若宮氏を運んできたチヌークなので、操縦席の足元には
防衛副大臣旗たる海老茶の桜4つ印がまだ付けられています。
おそらく帰還の時にも同じ機が使われるため外せないのでしょう。 



傘を開くための索がピンと引っ張られる時、必ず降下者の姿勢はこうなります。



続いてC-1からの降下が始まったのですが、何か違和感が・・・・・。
と思ったら、降下しているのが向こう側のハッチでした。



飛び降りるなり思いっきり足を開く人はあまり見たことがありません。
体勢を崩したのでしょうか。



CH−130Hからの降下。
ご存知空自の戦術輸送機で、愛知県の小牧基地から来ています。
これも向こう側からの降下ですね。



ハッチの部分を拡大してみました。
使用されていないこちら側のハッチから人影が見えますが、どうも
落下傘を装着している降下員が、こちらから飛び降りるために待機しているようです。



3機の種類の違う航空機から、これまでにすでに26人が降下したことになります。



派手に転がっているように見えますが、衝撃を逃すためにわざと行います。
場内のアナウンスでは「2階から飛び降りたくらいの衝撃」と言っていましたが、
空挺団の超人ぶりを知っている私たちは「なんだ2階か」と思ってしまいがちです(笑)

現に空挺団の人たちは宴会などで酔っ払って2階から飛び降りるらしい、という
中の人の話を聞いたことがありますが、普通に考えて2階から=3mの高さから飛ぶのは
一般人には結構大変なことですよね。



「降下するだけが空挺隊員の任務ではなく、その後に戦闘を行うのが目的」

と現地でも放送されましたが、降下始めでは、降下を行った隊員はこのように
落下傘を抱えて退場し、戦闘訓練は別の隊員(偽装&メイク済み)が行うようです。



再びC-1からの降下が始まりました。
先ほどと同じ機体番号「029」で、今度はこちら側のハッチから降下します。



つまり「029」と「018」が2回ずつ航過し、最初はどちらも向こう側、
2回目はこちらがわのハッチから降下したということのようです。



C-130Hも2航過し、先ほどこちら側のハッチ越しに見えていた隊員が降下を行いました。



着地した後落下傘を巻き取る基本的姿勢。
まるで背泳ぎをするように腕を後ろに回しては索を手繰り寄せるようにして
自分が近づいていきます。



まるで舞踊をしているよう。



こうやって索を巻き取ったら、後は傘の部分を小さくたたんで運びます。



フィールドは広いのですが、結構その広範囲にわたって降下が行われます。
この辺りは家族席なので、その前に降下する隊員はいいところが見せられてラッキーかも。



さて、空から空挺団が続々と降下を行っている間にも、某国の侵略は続きます。
占拠した島の一部(実は小さな山)から威嚇するために降りてきた敵国の車両。
我が軍の96式装輪装甲車に非常に似ているが、それはいいっこなしだ。



そんな敵の様子を偵察するために、我が海自のP-3Cオライオンが通り過ぎる(だけ)。
何か情報を得てそれを陸戦隊におくった(のだと思う)!



連絡偵察機LR-2を作ったビーチクラフト社は現在の「レイセオン・エアクラフト」です。
レイセオンはご存知ファランクス・シウスを作った会社で、こちらはその子会社。

レイセオン社はボストンのウォルサムに本拠を置く会社で、2年前の夏、
車で6分の距離に3週間も泊まっていたことに、たった今気づきました(笑)
このブログ的には、実際に会社を見に行って写真の一つもアップするべきでした。

この機体は木更津駐屯地からやってきているようです。
公式愛称は「ハヤブサ」だそうですが、寡聞にして聞いたことがありません。



いきなり黄色い煙を噴出させる某国軍の装輪装甲車。



よくわかりませんが敵軍は攻撃に出たようです。
専守防衛を旨とする我が自衛隊としては、相手が攻撃してくれたので、
これでようやく反撃ができるというわけですが、最初の一撃がしょぼくて助かりましたね。



そこで先ほど空挺隊員を10人降下させたチヌさんが、今度は高高度から上空に侵入。
実際肉眼では、降下員がこのように落下しているところは、ほとんど捉えることができません。



傘が開いて初めて、その存在がわかります。



横にいた人たちが

「敵は落下傘が落ちてくるところを狙ったらいいんじゃないかな」

「そんな簡単に当たりませんよー」

という会話をしていました。
でもまあ、別にシモヘイヘでなくても、傘を狙うくらいはできるんじゃないかな。

ちなみに、落下傘降下中の敵を撃つのは、大東亜戦争中であっても一応ハーグ条約
(Art. 20項参照)ダメと決まっていたようですが、まあ有名無実ってやつですよね。
(台湾の”神様になった”海軍搭乗員も、脱出中の落下傘を狙われて墜落死しています)

今の傘は銃撃の穴くらいでは落ちないようにできているに違いありません。




すごく近いですが、自由落下の傘も、接触したとしても潰れたりしたいのでしょうか。

それにしても絵になるなあ。 



せっかくなので隊員の姿をアップ。
手前は部隊長クラスの貫禄。



飛び降りるときの恐怖さえ克服できれば、きっとこれ気持ちいいと思うな。



我々のほとんど頭上に飛来してきた傘。
みんながほぼ真上を見上げていましたが、難なくフィールドに着地。



普通の傘と違って衝撃もほとんどなさそうだし、地地面に降りる時、
皆ふわふわっと地面に降り立って実に楽しそう。



着地すると同時に傘の回収にかかります。
降りるのよりこちらの方が難しいかもしれません。



回収のち退場。
ところで自由降下の予備傘というのはどこに装着されているんでしょう。
『空の神兵」の映画で、 初降下を明日に備えて遺書を書く隊員が映っていましたが、
最初のころは傘が重く、予備傘がなかったので、何かの事故で傘が開かなかったら墜落死でした。

現実に、降下靴が紐に絡まったための事故というのがあったそうです。 



降下員が次々と着地して何処へともなく消えていくフィールドでは、
いかにも偵察隊のような人たちが手に何か器具を持ってやっています。

これら降下中、会場ではずっと音楽が連続して流されていました。

「ふくしまーがふくしまーがふくしまーが好きー」

という何度聞いても音程の壮絶な悪さにイラっとする歌も待ち時間に流れましたが、
(たった今、猪苗代湖ズというさらにイラっとくるバンド名の
I love you & I need you ふくしま」であることがわかりました)
降下の時には全体的に雰囲気の上がる曲を編集して流していました。
今でも事実上の隊歌である(はずの)「空の神兵」がちょっとしか流れなかったのは
残念でしたが、わたしが大変今回評価したのは、あの「ライトスタッフ」の
テーマソング(チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲にそっくりな部分があるというあれ)
がフルで使われていたこと。

この音楽、妙に合っていたんですよ。空挺降下に。

The Right Stuff Theme  Bill Conti


「ライトスタッフ」というのが「正しい資質」の意味であることを聴きながら思い出し、
空挺隊員に必要な適正資質とは、どんなものなのかなとふと考えました。


続く。




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6 Comments

コメント日が  古い順  |   新しい順
2階、3階、いやゴカイ? (鉄火お嬢)
2016-01-16 22:26:37
朝礼に遅れそうになると、階段が面倒で2階から飛び下りは当たり前で、新年会で酔った上官が「俺に続け~!」と3階から飛び下りるのに皆が習うと聞いた、と仲良しの地本のおじちゃん=元第1空挺団に尋ねたら「ゴカイだ!」「そうですよね~、せいぜい2階」「いや、だから、5階から」「はぁ?」大昔、5千円ニンジンに出されて、5階から飛び下りて、流石に骨折したと‥‥しかも腕吊って翌日訓練に出たと‥‥.

去年たしか北海道で降下訓練中、スカイツリーの高さからパラが半開きで落下しちまったのに(たった60cmの積雪がクッションになったとは思われず)なぜか無傷!ですぐ訓練に復帰したという、新たな伝説的ニュースにたまげた記憶が。殺しても死なないとは、このことか。
私は「機密かもしれないが『600万ドルの男』に何人か更新済みなのではないか」と疑っている。
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二階から飛び降りたくらいの衝撃 (佳太郎)
2016-01-16 22:39:26
二階から飛び降りてもそこまで大けがをすることは無いから、万が一、二階にいて火事にあって逃げ遅れた時は飛び降りた方がいいというのをどこかで見ましたね。ただ火災の時気を付けなくてはいけないのは高い場所でも地面に近いように感じてしまうので転落死することもままあるというのも聞きました。実際正解は何なんでしょうね。
しかし、落下中の兵士を狙うのは条約違反だったとは…初耳です。
そして二次大戦中ですが、カメラマンのロバートキャパは落下傘で降りて木に引っかかってしばらく宙づりになったという逸話があったそうです。ほかにも用を足そうとしたらそこが地雷原だったり、ノルマンディーに従軍したりと逸話が多い人だったりします。
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離島防衛 (雷蔵)
2016-01-17 05:58:37
今は占拠された離島の奪還シナリオだと思いますが、そのうち、台湾防衛シナリオになったりして!
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皆様 (エリス中尉)
2016-01-18 15:38:44
鉄火お嬢さん
「酔った時に2階」という話は別の駐屯地の方から聞いたのですが、
実は2階は普通で、「酔ったら3階」だったのですね。やっぱりあいつら人間じゃねえ。
パラシュートが半開きで落ちた時のニュースは当ブログでも扱いましたが、
目撃者によると「ものすごいスピードで落ちた」ということでしたね。
普通の人なら絶対死んでます。
でも、それより驚いたのは「そのあとも訓練は普通に続けられた」ということです。

佳太郎さん
そういう話題になると思い出してしまうのが911の時WTCビルの最上階近くから
火災が進むにつれて人が飛び降りたことですね。
確実に墜落死することがわかっていてもそちらを選ぶ状況というのは、
いったいどのようなものであったのかと想像しようとしただけで身が竦みます。
火を恐れるという動物的本能が最後にそれを選ぶのかもしれません。

雷蔵さん
台湾との関係、どうなっていくんでしょうね。
李登輝元総統には蔡英文さんが総統になることとこれからの台湾について
ぜひご意見を伺いたかったのですが、お会いきず残念でした。
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はじめまして (あや)
2016-03-25 18:06:10
彼氏が習志野駐屯地の隊員で興味深くblog拝見しました!
自衛隊よく分からないので勉強になります!
ちなみに13式傘が使われないのは去年北海道で訓練中に傘が開かないまま落下した事故があり奇跡的に隊員は無傷でしたが13式傘が原因だった為、今は使用は見合わせているそうです!
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あやさん (エリス中尉)
2016-03-27 18:23:00
初めまして。
空挺団の記事をあげると、隊員の家族や恋人という方からよくコメントをいただきます。
この度の落下傘降下では、たまたまご兄弟が写っていたということでわざわざ
お礼のコメントをいただきました。
ご本人にも目を通していただけたようで、わたしにとっても望外の喜びでした。

彼氏がいるので自衛隊のことをもっと知りたい、と思う女子は多いですが、
自衛隊の男性は自分の恋人や妻に「理解」以上のことは求めていないと思うので、
(むしろ戦車の型式やpack3の配備状況を事細かに知っているような女性は
どんびきされる可能性高し)あまり詳しくなりすぎない程度に(笑)
わからないことがあったら彼氏に聞くなりして楽しく勉強していってくださいね。
当ブログはそういう方が軽〜く読み流せるように平易に書いているつもりです。

13式傘の情報ありがとうございます。
北海道の雪の中に半開きで落ちた事件ですよね。
あの件は「書き変えられた陸自最強伝説」としてここでもお話ししましたが、
それが13式傘だったんですね・・・・。

この日一つも現れず、アナウンスでの説明にもなかったので気になってました。
わかってよかったです。



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