ネイビーブルーに恋をして

バーキン片手に靖國神社

自由降下〜平成28年陸自降下訓練始め

2016-01-15 | 自衛隊

指揮官降下に始まり、中谷防衛大臣ら賓客が入場し、いよいよここからが「本番」です。
まず、今までと打って変わって高いところにチヌークが現れました



超望遠してもこれが限界の機影。
肉眼では見えませんでしたが、明らかに人が飛び降りております。



普通の傘は開傘するための環を機体にかけて、飛び降りる重みで自動的に開きますが、
これら「フリーフォール」、FFと言われる自由降下の傘は、自分で開傘を行います。
だから、飛び降りているその瞬間、人が落ちているようにしか見えません。



1秒置きに連続して傘が真横に開く普通の降下と違い、自由降下は
このように縦に傘の列が並びます。



自由降下傘はアメリカのパラフライト社の製品で、陸自の需品科の装備です。
正式名はMC-4、スペックは次の通り。

 

  • 傘体長:約8.7m×約4m
  • 重量:約20kg
  • 開傘時間:3.5秒以内
  • 降下速度:吊下重量約160kgで4.9m/秒以下


昔、自由降下には白い60式空挺傘(ろくまるしきくうていさん)が使われていたそうです。
パレンバンの空挺作戦の時に大量に傘を生産して以来、現在でも気球やパラグライダー、
はやぶさのカプセル回収用のパラシュートなどを作っている藤倉航装の製品ですが、
今主力として使われている696M1、12傘(ひとにいさん)でもできる操作ができず、
さらに着地した時の衝撃が大きいことから、このタイプの導入となりました。 



傘の操作が行われている分かりやすい例。
左側後方の傘の角が折れていて、この隊員は左側に進むべく操作しているようです。
スポーツパラシュートと同じ形であるからこそできる細かい操作です。



ところで、なぜ普通降下以外に自由降下が必要なのでしょうか。
普通の落下傘よりも操縦性、安全性が向上、高高度、低高度問わず好きな場所で開傘でき、
さらに滑降性も備わって、地面に降りた時のダメージも受けにくい。

自由降下作戦は基本隠密に敵の後方に降りるのを目的に夜間行うからです。

だから高高度から密かに飛び降りるわけですが、ちょっと待った。
まず、ちぬさんだとそんなに高く上がれないよね><(上昇限度2,670m=8,760ft)


一般に、視認外である高高度というのは対地高度1万mだそうです。


んが、もしC-1でその高度から降下させるとなると、気圧は地上の4分の1、
大気温度はマイナス50度なので、酸素マスクと防寒装備が必要になります。
ここまでいくと、これは

高高度降下低高度開傘、High Altitude Low OpeningHALO(ヘイロウ)

という別分野の作戦になってしまうのです。
HALOが使用されるのは、特に国境付近に侵入する際などです。

というわけで、我らが陸上自衛隊では、高高度を6,000mとしております。
しかしこれは個人的な考えですが、この高度では航空機は視認されるし、
(特にC-1は音も大きいし)いわゆる「自由降下作戦」には非実用的なのでは?

いやまあ、国境もなく海に囲まれたわが国では空挺作戦そのものが非実用的なんでねー、
といってしまうと身も蓋もありませんが。



どこに着地をするか狙っている顔。

この傘では好きなところに傘をコントロールして降りることができます。

12傘などとは別の技術であるため、専用の降下資格が必要です。
胸に付けられた空挺団ウィングマークの上に丸で囲んだFF(Free Fall)徽章が
自由降下資格ですので、付けている隊員を見たら指摘してあげましょう。

自由降下資格は空挺隊員の中からさらにに選抜されて自由降下課程に入り、
訓練課程を修了することで得ることができます。


最初に参戦した空挺団の降下始めで、当時の第1空挺団長前田忠男陸将補が
この自由降下をやったのですが、傘が流されて皆「あーあ」とか言っていたのを思い出しますね。
後から思えば、陸将補なのに自由降下を行うというのは、それだけでも凄かったのに。



傘の操縦は、赤い先端の紐を両手で操作して行います。



着地寸前には両手を地面と平行に開いています。
後ろの一般家屋の洗濯物との取り合わせがシュール。



お見事。二本足同時の着地を決めました。
彼が着地したのは大臣ら来客席の真正面です。



自由降下傘の落下速度は毎秒4.9m以下となっています。
先代の60式、現行の12傘は毎秒6.2秒なので、 比べるとかなりスピードが抑えられており、
その分着地による衝撃が少ないことになります。
自由落下で着地のときに地面に転ぶ人がまず皆無なのもそのせいで、
12傘や13傘で転がるのは、衝撃を逃がすため、わざとそうしているのです。



こちらの隊員は傘を畳み中。
で、この様子が・・・



自重を使って空気を押し出しているのですが、お布団に飛び込んでいるようです。
これだけやってみたーい(笑)



この隊員だけヘルメットが変なんだけど。
これは・・・・・・カメラ撮影機能付きですね。



こちらでも傘とたわむれております。



抱えられるくらい小さくたたんだら、あとは抱えて全力疾走。
実際に会場で傘を触らせてくれるコーナーがありましたが、それ自体薄くても
全体の重量は20キロあるので、大変です。

あ、危ない!足に落下傘の紐が引っかかってるよ?



「おっと・・・」
自分で踏みかけて気づいたようです。
この隊員のヘルメット搭載カメラで撮影された映像をみてみたい。


続く。



最新の画像もっと見る

2 Comments

コメント日が  古い順  |   新しい順
非公開コメントに (エリス中尉)
2016-01-16 12:36:39
別にわざわざ返事することはないのかもしれませんが、そうだったんですか!
驚きました。というか安心しました。
返信する
そうでないと (詠み人知らず)
2016-01-16 15:50:16
空と海の向こうで待っているめぐみさんをお迎えに行けません。
返信する

post a comment

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。