
音楽まつりに出演する地方の音楽隊は年によって少しずつ違います。
陸空海のメイン音楽隊(防衛大臣直轄のもの)である海自東京音楽隊、
空自航空中央音楽隊、陸自中央音楽隊以外は駐屯地、方面隊、地方隊所属の
音楽隊ということになるのですが、それらは毎年持ち回りで出演します。
まずは陸上自衛隊東北方面音楽隊の演奏。
東北民謡である「斎太郎節」とミュージカル「サウンド・オブ・ミュージック」の
フュージョンという面白いプログラムできました。
ドリルだけでなく、空自がよくやっている「旗振り」トワラー投入です。
前で「ブーン」している人がいる・・・。
トワラーのいでたちは着物のイメージで、旗は大漁旗でしょうか。
斎太郎節のあと、「マイ・フェイバリット・シングス」「すべての山に登れ」
など、サウンド・オブ・ミュージックの名曲がメドレーで繋がれます。
旗を投げ上げて受け取る技ももちろん失敗なし。
事前に流された練習映像では落としている人もいましたが、
さすがに本番では皆ピタリと決めてきます。
いつの間にか「すべての山に登れ」と「斎太郎節」が一緒に鳴っていました。
続いては陸自中部方面音楽隊ドリル演奏です。
伊丹駐屯地に拠点を置く音楽隊で、この制服のかっこよさは異常。
今回もしかしたらもっとも注目が集まったのではないかという理由に、
「進撃の巨人」のテーマソングを「超高速ドリルとともに」行う、
という予告があったことがあります。
音楽まつりで他国軍のドリルと自衛隊のそれを比べていて思うのは、
ドリルのキレというか、極限までステップを細かく刻むことを、日本のブラバンは
もっとも重視しているのではないかということです。
米軍音楽隊はそういうのとはまた別のところに重きを置いているように思いますし、
ましてや他の国、今回ゲストだった韓国軍バンドなどは、全く問題外でした。
この「超高速ドリル」予告にわたしと連れは大変ウケてしまったわけですが、
その少し前に「ブルーエンジェルス」がGスーツもマスクもなしで飛ぶという話をしていて、
「伝統とはいえ、彼らは何に挑戦してるんでしょうねえ」
と言いあったことを少し思い出したりしました。
日本のブラバンっていうのは・・・何しろ独自の体質と世界観を持っていましてね。
音楽関係者から見てもそれは時として異質なものなのです。
そして、今回注目陸自イチオシの新人歌手、鶫真衣1等陸士。
この可愛らしい「陸自の歌姫」が、「進撃の巨人」のドイツ語の部分を歌いました。
可愛らしいだけでなく、透明感のある伸びのいい声質を持った歌手だと思いました。
普通歌手の体が出来てくるのは30歳くらいからと言いますから、
20代前半はまだまだ「発展途上」です。
彼女はこの若さでこれくらい出るのですから、先が楽しみです。
しかし、わたしが本当に驚いたのは、彼女が歌い終わってすぐ
キーボードの前に座り演奏を始めたことでした。
どうやら鶫1士は専門の歌手ではなく、ピアノが本業であるようですね。
ということは、楽理を含む音楽的な基礎については完璧にできているということです。
しかし自衛隊、本当に人材豊富だなあと思います。
こういう人材が集まってくることに先鞭をつけたのは、もちろん
海上自衛隊の三宅由香莉3曹であることに疑いの余地はありません。
超高速ステップ作動中(笑)
ホーンセクションの中心でサックスのメロを取るのは女性。
「進撃の巨人」はいずれにせよどこかが取り上げたと思いますが、
真っ先に選曲した当音楽隊の機を見るに敏な作戦勝ちと見ました。
わたしは観ていないし原作も読んでいないのでわからないのですが、
話に通暁している人にはわかる演出だそうです。
当音楽隊独特のこの赤のタスキのようなスカーフのような、
これがズボンに挟んでいるだけだとしたら踏んだりして取れないか、
ということが個人的には気になりました。
アメリカ軍のトップバッターは米空軍太平洋音楽隊。
何回か音楽まつりに来ていて、空軍のパフォーマンスを見るのは初めてのような。
いかにもアメリカらしく、ジャズのチューンでのオープニングです。
「ブギウギ・ビューグル・ボーイ」を歌うこの三人の軍人さん。
粒ぞろいの美人トリオをいきなり投入してきました。
センターの人が一番うまかったです。
ネクタイをシャツのボタンの中に入れてしまっているのが粋です。
この腰つき、いいねいいね〜!(ってわたしはおっさんか)
しかし、この雰囲気、どこかで見たぞ。
これだ。
アンドリューズ・シスターズ。
そういえば「ブギウギ〜」はこのコーラストリオの持ち歌。
彼女らのこのいでたちは、第二次世界大戦の時に彼女らが
ヨーロッパ戦線に頻繁に慰問に行っていた時のものでした。
この一番右のラバーン・アンドリューズは、
つい最近の2013年、94歳の天寿を全うして亡くなっています。
続いて、ここでこれを持ってきますか?いいとこ取りすぎてずるくね?みたいな文句無しの名曲。
サクソフォーンをクラリネットに持ち替えて、グレン・ミラーの
「ムーンライト・セレナーデ」の美味しいソロを取る奏者。
(サクソフォーンとクラリネットは機構が似ているので大抵どちらも吹ける)
わたしはこのクラリネットソロで思わず鳥肌が立ってしまいました。
そしてここで、米空軍から我々日本人に、心温まるプレゼントが!
なんと空軍の”アンドリューズシスターズ”が、日本語で「ハナミズキ」を
歌ってくれたのでした。
しかもその時のモニターの映像には、水害の時、出動してくれた
空軍のパイロットと少女の映像が・・・。
これは泣ける。
これもその時の写真だと思うのですが、物資を受け取っているおじいさん、
「金」と書かれたシャツ、毛沢東の写真等を貼り付けたカバンと、なんだか微妙な・・・
ま、これが日本人であると疑わないのがまたアメリカ人らしいというか。
(実際日本人かもしれませんし)
そして、最後に敬礼をするのは、小柄ながらきりりとした女性だ!
アメリカ空軍太平洋音楽隊隊長、クリスティーナ・ムーア-ウルティア少佐と仰せられます。
Major Cristina M Moore Urrutia
太平洋音楽隊というのは、横田基地とハワイのヒッカム基地に拠点を置いて
活動している音楽隊で、ムーア-ウルティア少佐の専攻はホルン。
卓越したホルン奏者でありながら指揮法とオーケストレーションの学位を取り、
軍での活動歴は1992年、ネブラスカ州州兵軍楽隊を最初に、2001年から米空軍で活動、
彼女の在職したバンドは多くの賞を獲得するなど、優秀な指揮官として評価されています。
この凛々しさから、指揮台からひと睨みしたら大の男が震え上がったり、
指揮棒でびし!っと間違えた指を叩いたり、というような妄想をついしてしまいました。
HPの写真を見ると、完璧な歯並びで(ホルン奏者ですからやっぱりね)微笑んでいますが、
目に妙に凄みがある(個人の感想です)ので、やはり厳しい指揮官なのかもしれません。
続く。
15日のチケットを頂いたのですが防衛大の開校祭と被っていて、つい若者らしく?恋人の方を優先してしまいました…
来年は開校祭とバッティングしないことを祈ります!((´;ω;`))
中部方面音楽隊は夏服で出演することが多いんですが何故なんだろう、他との違いを印象付けるため?
以前からそういう疑問を持っています。それと肩にかけている”タスキのようなスカーフのような”って本当は何というの?
ということも。それからこれ、右肩からかけたり左肩からかけたり、何故?
米空軍音楽隊の男性の制服は詰襟というのがちょっと意外だったんですが、女性の陸軍っぽい色は何?という感じです。
音楽隊長、勲章が凄い!自衛隊のグリコのおまけ(失礼)と違います。
新人歌手、鶫真衣さんですが、以前ニュースで大学院卒でソプラノの勉強をしたと読んだ記憶があります。
女性ですから敢えて年齢は書きませんが、20台前半ではなく、中尉のいう声がよく出る年代に近いです。
恋人は防大生ですか!そりゃもちろん記念祭でしょう。
音楽まつりと重なるのでここ2年行っていませんが、タイミングが合えば
また記念祭に潜入して、「小原台の青春」シリーズその3をやりたかったです。
もし今年そちらに行っていればAurorikaさんと彼が目隠しで登場していたかも?
coralさん
空軍の女性歌手が着ていたの、あれなんでしょうね。
どう考えても昔の軍服でアンドリューズシスターズをやるためだけに借りてきた、
という感じですが、軍隊なんですからそんなことやらないでしょうし・・・。
中部音楽隊のタスキ状のものはリボンという位置付けだと思いますが、
右左が決まっていないのは、楽器によって邪魔になる側が違うからだと思います。
エリスさんの文章や、写真とってもすきです!
女子大生と防大生の私たちも彼が一足先に任官して社会人になってしまいます…詰め襟も見納めです(笑)
そういえば今年は儀仗隊も音楽まつりに行ってしまってて、特別儀仗?という儀仗隊ではない学生がでていました。
来年こそ音楽まつりを、楽しみたいので開校祭と被りませんように!(開校祭なんかの事情は自衛隊の上の方は考慮しないでしょうが…)
新聞で読みましたが、入隊時、腕立て伏せは1回も出来なかったそうですが、頑張って、新隊員教育を乗り切ったそうです。
防大や普通の自衛官なら、ある程度、覚悟して入る訳ですが、音楽で食って来て、わざわざ、そんな苦労をする必要なんてないのに、それをあえてやろうという気概に、頭が下がります。
Aurorikaさんのコメントも感動しました。「恋人」なんていう言葉はもう忘れていましたし「卒業したら社会人」というのは新鮮でした。「社会人」というより、学生(見習い)が終わって「部隊に行く」という感じでした。
ありがとうございました!
また、エリス中尉殿が観艦式の体験航海で、ご覧になられた、海上自衛隊横須賀音楽隊の歌姫、中川麻梨子さんも、愛知県立芸術大学の卒業生です。
しかし意味深てのか「進撃の◯国」を食い止めなきゃ~って、受け取りましたが(笑)
防大生は学生という立場でありながらお給料をもらっているという意味で
すでに「社会人」という考え方もできますね。
いずれにせよ特殊な「学生」であることには違いありません。
先日、自衛官の息子さんが任官して早々に結婚されるという方と話しました。
何でも相手がいるなら早く結婚することを上から?勧められるということです。
自衛官の結婚問題については以前一稿を割いてお話ししたことがありますが、
こういう上からの指導も、同調圧力というより、結婚が自衛隊全体の問題として
捉えられているからなのかなと思われました。
海堂良さん
初めまして・・・・ですよね?素敵なHNですね。(本名だったりして)
そうそう、中川さんは県芸の大学院出てるんですよね。
今回同行した方が「クラシック畑の人でポップスを歌うのは苦手らしい」
という情報を教えてくれました。
三宅3曹は声量的にも音域も本格的なクラシックの歌手とは違いますが、
それが彼女の特色でもあります。
自衛隊にいる何人かの歌手がそれぞれ自分のカラーを持ち、
それを音楽隊が生かして使いこなしていけばいいのだと思います。
松永さんの声にはわたしも感嘆しました。
特に高音の安定と天井のない伸びの良さ。
彼女にはジャンルを問わずいろんな曲に挑戦していただきたいです。
鉄火お嬢さん
そうそう、突っ込み忘れてました!
真面目な顔してなんかつけてたんですよねー(笑)
実はさっき、Amazonで注文したコミック「進撃の巨人」16巻が届きました。
これを読んでいたら会場でピンときたのに・・・!
アメリカ空軍の音楽隊長、女性とは気が付きませんでした。(コメントのせいもありますが)
アンドリューズシスターズ、元ネタがあったのですか。知りませんでした。
ニコ動では、いろいろコメントされていましたが…。
今回は、「あの国」がいないとよかったのですがね。あの演出はなんなんだか。。
あの国については次回エントリで少し突っ込みます。