雨の楽家

2001年06月19日 | 暮らし

所沢は夕方から雨になった。
私の会社は川越のはずれにあり、
会社からの帰りには、
ワイパーを使ってきた。
今日は女房が、
「前の会社の人たちと飲んでくる」
といっていたので、晩メシどうしょうと考えた。
スーパーでなんか買ってこよう、
と昨日から思っていたが、楽家に行くことにした。
近所の居酒屋です。
会社での労働のあと、何もする気がしない。
息子たちのメシのことは考えないことにした。
かってに食べるだろう。

傘を差してとぼとぼ行くと、
カウンターにSさんがいた。
九想話「らくやの花見」でギターを弾いたひとだ。
あとお年寄りの“夫婦”がいた。
私は、楽家に行く目的に、
「Sさんに会いたい」という気持ちがある。
感性が合うひとなんです。
ギター、ケーナの話をした。
九想話のことも話題になった。
「この前、マスターが仕事場に来て
 九想庵見せたんですよ」
と、Sさんがいう。
マスターはパソコンをやらないので、
インターネットに無縁のひとです。
そのうち、もう1人客が来た。
ああ…、名前を覚えていない。
そのひとも九想庵の旅人の1人です。
“夫婦”が帰っていった。
かなり飲んでたようだ。

しばらくして、外から緊迫したママの声、
「わるいけど、誰か来て、
 **さんが転んじゃって歩けないの」
私たち3人は、急いで店を出た。
さっきの老人が店の外で倒れていた。
右の額をぶつけたようで、血が出ていた。
“夫婦”と思っていたが、1人暮らしの老人らしい。
“奥さん”と思っていた女のひともいた。
Sさんが背負い、私ともう1人が後ろで支えた。
「申し訳ない、もうしわけない」
と老人はいっていた。
目の前の公団に老人は住んでいた。
1階の家の前に来て、Sさんの背中から降りた老人は、
背丈ほどある植木の中にぶらさがっている鍵を取り、
ドアを開けた。
これじゃ、簡単に泥棒に入られてしまうな、
と私は思った。
「ここが1人暮らしの年寄りの部屋です。
 みなさん、入って下さい」
と老人が血だらけの顔をしていう。
「消毒する薬ありますか?」私が訊く。
「私がしますから、みなさん大丈夫です」
“奥さん”と私が思い違いしていた女性がいってくれた。
「名前をおしえて下さい」と老人がいう。
私たちは、名のらず楽家に帰った。
私は、自分の老後を見た。
いや、私は女房よりさきに死ぬだろうが、分からない、
私が1人残るかもしれない。
寂しくて近所の居酒屋に飲みに行って、
帰り道で転んで血だらけになり、野垂れ死に。
そんなところか私の末路か…。

マスターにいって、
この前持ってきた、
ウニャ・ラモスのCDをかけてもらう。
居酒屋にフォルクローレ、いいな。

コメント
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