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柿の味

2004年09月30日 | 家族

0時に目を覚ます。
「柿が安かったからパルコで買ってきた」女房がいう。
テレビでは、NEWS23をやっていた。
筑紫哲也が北京から、TBSの初代中国特派員の人と、
むかしの中国のことを話していた。
(あ…、こういう仕事をおれはしたかったな)
中学、高校と何も将来について考えず、勉強もせず、
本も読まず、ブラスバンドでトロンボーンを吹いていた。
高校を出てからは、
メシを食うために、目の前の仕事をしてきた。
やりがいのある仕事なんてものにはほど遠く、
高卒の私が就ける仕事をしてきた。
所帯を持ち、子どもが生まれると、
よりよい収入を得ようと12、3会社をかえた。

立ち上がって台所にあった柿を見る。
和歌山産とバーコードのシールに書いてある。
透明のポリ袋に9個入って500円だという。
このパッケージをした人のことを考える。
和歌山の授産施設でやったかも知れない。
いや、主婦のパートを雇ってやっている
パッケージ会社も沢山ある。
本日うちの作業所では4人の職員が全員集合で、
みかん、たまねぎ、じゃがいも、きゅうり、etc
パッケージしまくった。週末、スーパーの注文は多い。

柿を水でざっと洗ってテーブルの前に坐る。
「あれ、皮むかないの?」と女房。
子どものころ、柿の木に登って食べていた私に、
柿の皮をむいて食べる習慣はない。
がぶりとやると、果物の甘さとはほど遠い
渋みを含んだ甘さがあった。
むかし食べた百目柿の味を想う。
あのコガ(一般にはゴマというらしい)の
たくさんある百目柿が懐かしい。

0時半、Uが帰ってきた。
台所で無言でコンタクトをはずし、洗浄してる。
女房が味噌汁を温める。
今夜の晩飯は、おいなりさんだ。
私はベランダ側で煙草を吸っている。
めずらしく台所に3人がいる。無言で。
シャワーを浴びるためにUが風呂場に行った。
「もう少し愛想がよくてもいいのにね」
と、小さい声で女房。
家なので気を遣わないからああなんだ。
きっと会社では、それなりにやっているのだろう。
まるで、柿の味のような息子なのだ。

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     9月の九想話

  9/1  手術の重み
  9/8  退院
  9/9  手術 1
  9/10 手術 2
  9/11 手術 3
  9/12 天使はいた
  9/13 喫煙室 1
  9/14 喫煙室 2
  9/15 阪神戦
  9/16 義父の病状
  9/17 プロ野球スト
  9/18 痛飲
  9/19 お見舞い
  9/20 少年H
  9/21 深夜便への「おたより」
  9/22 すいません
  9/23 三遊亭円楽
  9/23 よみがえる動物園
  9/24 退院以来の病院
  9/25 息子の見舞
  9/26 悔しさバネに
  9/27 いろいろな月
  9/28 手術 4
  9/29 越中褌
  9/30 柿の味


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小倉遊亀

2004年09月29日 | 美術

今日は、東京国立近代美術館で行われている
小倉遊亀展に行ってきた。
私はこれまで、この日本画家を知らなかった。
ASAHIネットの
「かしの木亭談話室」のオフで行かなかったら、
私はこの女性の絵を見ることはなかったろう。

入って最初に展示してあった「浴女 その一」がいい。
2人の女性が入浴している絵だ。
母親と娘か、それとも姉と妹か、
世間を未だ知らない感じの少女がいい。
湯船の底のタイルが
お湯で屈折して歪んでいるのも唸ってしまう。

「花屑」という絵がある。
右3分の2ぐらいのところに丼に乗った
バラと桔梗となんて花か忘れたピンクの花があった。
「花屑」という名前がいい。

「コーちゃんの休日」という絵があった。
越路吹雪を描いた絵だ。
彼女が、いった。
「この絵は私の悪いくせを全部描いている」

ああ…、なんて名前か忘れたが、その絵がよかった。
縦長の小品で、女性が紅い着物を着ていた。
メモしないで、
こうして頭に残っている記憶をたどって書いてるので、
いけません。

「青(セイ)さん」と読むのか、この絵がいい。
「さん」という字は、
「恋」の旧字の「心」の部分が「山」になっている。
富士山を描いた絵だ。
あの単純な線描の富士が斜めでいい。
麓の牛が可愛い。

最後のほうにあった絵(この名前も忘れた)の
背景の紅が綺麗だ。

だめだだめだ、メモしてないから、
さっぱり分からない。
105歳まで生きた小倉遊亀、
私の好きな画家になりました。


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越中褌

2004年09月29日 | 家族

私の父は越中褌をしていた。
パンツを穿いた父を見たことがない。
私は子どものとき、父の越中褌が恥ずかしかった。
父が越中褌をしめていることなど、
私が黙っていれば誰にも分かるはずないのに、
恥ずかしかった。

私の家には子どもたちが集まって、いろいろな遊びをした。
そんなとき物干し竿で風に揺れている
父の越中褌がいやだった。
だから、近所の子は知っていたはずだ。
でもそんなこと話すやつはいなかったから、
父の越中褌のことをいわれたことはなかった。

夏の暑い日など父は、
風呂上がりに褌だけでいるときがあった。
パンツを穿けばいいのになんて、子ども心に思ったものだ。
ちなみに祖父は猿股を穿いていた。

最近私は、越中褌を体験した。
手術が終わって気がつくと、
私の下半身にT字帯がしめられていた。
T字帯はガーゼでできた越中褌です。
まんざら悪い感じではなかった。
どちらかというと“いい気分”だった。
腰の両脇が開放されていることがいい。
トイレでおしっこをするときも楽だ。
ただ、寝ているときはグズグズになってしまう。

越中褌をしめて、
なんとなく父に近づいたような気がした。


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手術 4

2004年09月28日 | 健康・病気

いまごろになってなんですが、
手術のことで書き忘れたことがありましたので書きます。

「手術が終わって、浴衣を着せようとしたとき、
 浴衣が短いので驚きました」
そんなことを病室に戻ったときに、看護婦が私にいった。

入院するときに、
手術で必要なものが書いてある印刷物をもらった。
浴衣、T字帯、箱ティッシュ、バスタオル、などなど。
T字帯はいわゆる越中褌です。
浴衣は着物の寝間着ですね。手術が終わって、
麻酔で動けない体に着せるのに簡単だからでしょう。

それを見て27歳で盲腸の手術のときに使った浴衣が
どこかにあるはずだと思った。
貧しいわが家ではなるべく不要な出費は避けたい。
その浴衣を手術の前に女房は苦労して見つけ出した。
見つけてそのまま、手術に必要な品物と一緒に、
紙袋に入れた。それを手術の前に看護婦に渡した。

「看護婦に『浴衣が短い』といわれた」
と女房にいうと、突然笑い出した。
「Kが鼠径ヘルニアの手術をしたとき、
 あの浴衣着せたんだわ」
それで納得した。小学5年生の息子に合わせて、
私の浴衣を裾上げしたしたままだったのだ。
看護婦たちは、短い浴衣を私に着せながら、
どんな話をしていたんだろう。
そのとき私は眠っていたようで何も覚えていない。
そのことを思うと冷や汗が出る。

看護婦がいうのには、
普通の人は手術で使ったものは縁起が悪いので、
退院すると捨てるらしい。
ところがどっこいわが家では、
1枚の浴衣を使い回ししている。
「あの浴衣を着て受けた手術はうまくいっている。
 こんどまた手術があったら使おうね」と女房がいう。
私は浴衣をとっておくのはやぶさかではないが、
できればもう、手術はしたくない。


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いろいろな月

2004年09月27日 | 暮らし

明日は、十五夜、中秋の名月です。
陰暦の8月15日なんですね。
芋をそなえるから芋名月ともいう。
前夜の十四夜に見るのが宵待月(よいまちづき)。
次の夜は、十六夜(いざよい)。
十七夜は、立って待つ立待月(たちまちづき)。
十八夜は、坐って待つ居待月(いまちづき)
十九夜は、寝て待つ寝待月(ねまちづき)
二十夜になると、夜更けまで出ない更待月(ふけまちづき)
陰暦9月13日は十三夜、後の月(のちのつき)ともいい、
枝豆や栗を供えるので、豆名月や栗名月ともいう。
(実はさっきあるサイトでこれらのこと調べました)

同じ月なのにいろんな名前があるな。
それだけ月は、むかしの人に愛されていたのでしょうね。

先日、気象予報士の森田正光がいっていた。
立待月、居待月、寝待月というのは、
むかしのやんごとなき女性が月を見ながら
訪ねてくる男を待っていたことをいうらしい、と。
そのころ夜は真っ暗で、
月明かりでもないと外出できなかったらしい。
ほんとかどうか知りませんが、
そうだとしたら夢のある艶っぽい話だなと思った。


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悔しさバネに

2004年09月26日 | スポーツ

仕事から帰ってきて何気なくつけたテレビに
ベルリンマラソンが映っていた。
そして女子でトップを走っていたのが、渋井陽子だった。
私は作業ズボンのまま坐って画面を見つめた。

ブランデンブルグ門が目前にせまっていた。
私はうれしくなった。
日本の女子マラソンランナーは沢山いるが、
私は明るくてあっけらかんとしたこの渋井が好きだ。

涙の2年間だった。昨春の名古屋を左ひざ痛で断念。
夏の世界選手権では1万メートルで14位。
意気込んで臨んだ今年1月の大阪国際も惨敗。
アテネオリンピックに出られなかった。
そして今日、高橋尚子の日本記録を破り、
2時間19分41秒で優勝した。

増田明美が渋井にいっていた。
「しぶちゃん、やめないでよかったね」


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息子の見舞

2004年09月25日 | 健康・病気

昼のころ、息子のKから女房にメールがあった。
御茶ノ水に来ているけど、
おじいちゃんのいる病院にはどう行ったらいい?
という内容だった。
それを聞いて私はうれしかった。

あらためて息子に見舞に行けとはいってなかった。
毎日会社からの帰りは遅いし、
休みの日は家でのんびりしたいだろう。

夜、Kに会ったとき、
「おじいちゃんのお見舞いに行ったんだって。
 よろこんだろう、おじいちゃん」というと、
「うん」と相変わらずの素っ気ない返事だった。

午後9時ごろ、おかあさんから電話が来た。
「Kちゃんが今日来てくれたのよ。じいさんがよろこんでね。
 でも、最初はUかKか分からなくてね。
 Kちゃん、きれいな顔してて大人になったね」
とうれしそうに話してくれた。

Kは去年、池袋の会社に勤めだしたころ、
仕事で帰りが遅いときに何度か、
おじいちゃんの家に泊まったことがあった。
女房の実家は練馬区にあり、池袋と所沢の中間あたりだ。
Kと会うのはそれ以来、Uとは何年も会ってない。
親の私でも一卵性双生児のふたりを見間違うときがある。
おとうさんでは見分けはつかないだろう。

自分のこと以外何も考えていないような息子だが、
それなりに義父のことを思っていたのだろう。
親としてまんざらでもなかった。
でも、私のところにも見舞に来て欲しかった。
いや、来られたらどんな顔したらいいか困っただろうな。


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退院以来の病院

2004年09月24日 | 健康・病気

今日は、病院に行く日だった。
退院してから2週間が過ぎている。
9時前に行ったのに、診察されたのは11時半だった。
手術をしてくれた女医が傷に貼ってあるテープを剥がし、
傷口を診て終わりだった。

この人は初めて会ってからずーっと腰の低い医者だった。
こちらが申し訳ないくらいに控えめに、
すべてのことを運ぶ女性だった。
今の世の中でこんな医師がいるのかな、
と思うような人だった。

今日の料金は220円。
テープを剥がし傷口を診るだけだったが、
それでも220円は安いと思った。

12時に会計がすんだ。
喫煙室に行くと、知ってる人がいた。
「今日は外来ですか?」といわれた。
その人は車いすに乗っている。
なんかこっちが健康でいることが申し訳なかった。

入院していたとき同じ部屋にいた人に会いたいと思った。
3年前に胃の3/4と食道の半分をとり、
今回、胃に別な癌が発見され、
内視鏡でそれを取るという患者だった。
しかし、その人に会ってどうする、と考え病院を出た。
駐車場から出るとき、この病院に入院していたことが、
ずいぶん前のことのように思えた。


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よみがえる動物園

2004年09月23日 | 生き物

今夜のクローズアップ現代(NHK 19:30~)
「よみがえる動物園~北海道・旭山動物園の挑戦~」を観た。
北海道旭川市の郊外にある旭山動物園が、
驚異的な入園者数を記録し続けているらしい。
ことし8月の入園者数は32万人。
東京・上野動物園を抜いて全国1になった。
先週の木曜日、日本全国8時です(TBSラジオ 8:00~)でも、
月尾嘉男(東京大学名誉教授)が話していた。

旭山動物園が評判なのは、
「行動展示」と呼ばれる独自の見せ方のようだ。
動物の一番魅力的なところを、
「飼育展示係」と呼ばれるスタッフの一人ひとりが
アイディアを考え見せるようにしている。

8年前、入場者の減少が続き、閉園の話も出た。
7年前に園長になった小菅正夫さんを中心にして
現在のようによみがえった。

地上17mに張られたロープを悠々と移動するオランウータン。
あざらし館では、
6メートルの円筒の水槽を泳ぐあざらしを間近で見られる。
ペンギンのコーナーでは客は水中のトンネルを歩き、
頭上をペンギンが自在に泳ぎ回る。
冬は雪がある園内をペンギンが散歩する。
しろくまが水にダイビングするところを、
水槽の真横から見られる。

今、日本中の動物園の人たちが視察に来ている。
どこの動物園もテーマパークなどに客をうばわれ、
入場者数が落ちているらしい。
復活のカギは意識改革、と園長はいう。
私もそう思う。会社でもなんでも「意識改革」です。
消えてしまった私が在籍していた2つの会社も、
「意識改革」がなかった。
どんな組織でも同じことだと思う。


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三遊亭円楽

2004年09月23日 | 落語

昨夜、楽家で飲んでいるうちに、
Sさんとマスターと3人で落語の話になった。
いろんな噺家のことを話しているうちに、
マスターが「桂雀々が面白い」といった。
NHK のテレビで観たらしい。
最近私は、テレビで落語を観ていないし、
寄席にも行っていない。
ラジオでは週に1、2回は聴いている。
時間があれば、東京まで行って噺を聴いてみたい。

Sさんがむかしのことを話してくれた。
行政書士として独立しようとするとき、
寄席で三遊亭円楽の「中村仲蔵」を聴いた。
下っ端の役者であった仲蔵が座長から
ある役を与えられる噺だ。
(このサイトに「中村仲蔵」のことが書いてあります)
それを聴いていて、
Sさんはこれから独立する自分が励まされたらしい。
「中村仲蔵」の噺を嬉しそうに話してくれた。

私は二十歳のころ上野の鈴本演芸場で、
三遊亭円楽の「薮入り」を聴いて感動した。
ほんとうにあのとき私は、円楽の噺が身にしみた。
円楽が好きになった。
しかし、最近の円楽は…。

昨日、こんなことを九想話に書こうとしましたが、
“酔”魔に負けてしまいました。


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