0時に目を覚ます。
「柿が安かったからパルコで買ってきた」女房がいう。
テレビでは、NEWS23をやっていた。
筑紫哲也が北京から、TBSの初代中国特派員の人と、
むかしの中国のことを話していた。
(あ…、こういう仕事をおれはしたかったな)
中学、高校と何も将来について考えず、勉強もせず、
本も読まず、ブラスバンドでトロンボーンを吹いていた。
高校を出てからは、
メシを食うために、目の前の仕事をしてきた。
やりがいのある仕事なんてものにはほど遠く、
高卒の私が就ける仕事をしてきた。
所帯を持ち、子どもが生まれると、
よりよい収入を得ようと12、3会社をかえた。
立ち上がって台所にあった柿を見る。
和歌山産とバーコードのシールに書いてある。
透明のポリ袋に9個入って500円だという。
このパッケージをした人のことを考える。
和歌山の授産施設でやったかも知れない。
いや、主婦のパートを雇ってやっている
パッケージ会社も沢山ある。
本日うちの作業所では4人の職員が全員集合で、
みかん、たまねぎ、じゃがいも、きゅうり、etc
パッケージしまくった。週末、スーパーの注文は多い。
柿を水でざっと洗ってテーブルの前に坐る。
「あれ、皮むかないの?」と女房。
子どものころ、柿の木に登って食べていた私に、
柿の皮をむいて食べる習慣はない。
がぶりとやると、果物の甘さとはほど遠い
渋みを含んだ甘さがあった。
むかし食べた百目柿の味を想う。
あのコガ(一般にはゴマというらしい)の
たくさんある百目柿が懐かしい。
0時半、Uが帰ってきた。
台所で無言でコンタクトをはずし、洗浄してる。
女房が味噌汁を温める。
今夜の晩飯は、おいなりさんだ。
私はベランダ側で煙草を吸っている。
めずらしく台所に3人がいる。無言で。
シャワーを浴びるためにUが風呂場に行った。
「もう少し愛想がよくてもいいのにね」
と、小さい声で女房。
家なので気を遣わないからああなんだ。
きっと会社では、それなりにやっているのだろう。
まるで、柿の味のような息子なのだ。
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9月の九想話
9/1 手術の重み
9/8 退院
9/9 手術 1
9/10 手術 2
9/11 手術 3
9/12 天使はいた
9/13 喫煙室 1
9/14 喫煙室 2
9/15 阪神戦
9/16 義父の病状
9/17 プロ野球スト
9/18 痛飲
9/19 お見舞い
9/20 少年H
9/21 深夜便への「おたより」
9/22 すいません
9/23 三遊亭円楽
9/23 よみがえる動物園
9/24 退院以来の病院
9/25 息子の見舞
9/26 悔しさバネに
9/27 いろいろな月
9/28 手術 4
9/29 越中褌
9/30 柿の味