国際情勢の分析と予測

地政学・歴史・地理・経済などの切り口から国際情勢を分析・予測。シャンティ・フーラによる記事の引用・転載は禁止。

米国の金融バブル崩壊で必要となる救済額は1500~2500兆円

2008年10月20日 | 経済
●日本経済を後追いする欧米。(今は世界規模でのLTCM破綻!):貞子ちゃんの連れ連れ日記 - AOLダイアリー 2008/10/11 16:35

「そうなんだ!今は1998年当時のアメリカのLTCM(ロングタームキャピラルマネジメント)の破たんをさらに大規模にして、世界規模にしたような破たんが起きているのだ!」と、やっと思い当たった。
LTCMとは、アメリカのノーベル経済学者などが集まって1994年に立ち上げたヘッジファンドである。金融工学の先端を駆使したヘッジファンドということで、設立当初は、大いに設けて、大いに崇拝されたヘッジファンドだった。けれども、彼らのやっていることの中身は、実は、非常に小さな市場の揺らぎを見つけて出しては、それに思いっきりレバレッジを掛けて、さやとりを根気よく続けるといった、けっこう古典的ものであった。LTCMについて、詳しく知りたい方は、↓
http://ja.wikipedia.org/wiki/LTCM
など、グーグルなどなどで、検索してみてください。

「金融工学」といった、一見先端を走っているかのように見受けられる新技術を駆使する頭脳集団によるヘッジファンドということで、LTCMは多くの幻想をふりまきながら、設立当初は世界中から崇拝者を集めていた。しかしながら、ロシア通貨危機といった想定外のリスクが起きたことが引き金になって、急速に破たんしてゆく。
このとき、破たん処理をしたのが、前FRC議長のグリーンスパンと、ゴールドマンサックス出身のルービン前財務長官だ。
このとき、LTCMは、およそ1,400億ドルとも1,500億ドルとも指摘される資金を運用していた。そして、LTCMの1998年の穏やかな破たん処理で必要になった救済額は、その運用金額のおよそ0.025%。、もとい2.5%弱に当たる35億ドルだった。
<中略>

世界中にばら撒かれてしまった金融派生債券(金融派生商品ともデリバティブ商品とも呼ぶ)の総額は、IMFが今年2008年5月に発表した一番新しい数値では、およそ6京円弱だ。
6京円とは、6,000兆円の10倍だ。
この金融派生債券6京円とは、欧米型投資銀行がレバレッジをかけて思いっきり膨らませて創り上げた金融派生債券の一部を、ごちゃごちゃに様々な金融派生債券に混ぜ合わせた金融商品の総額である。
この6京円弱の天文学的数値の金融派生債券が、今、「資産インフレの中では、土地、株式、不動産、資源、新興国がWin-Winの関係を保つはずだから、永遠に住宅価格も上がり続ける」といった神話崩壊で、急速に破たんし始めているのだ。
先端の金融工学を駆使したと自称していた「金融派生債券バブル」が崩壊しているのが、今なのだ。(話がくどくなって、ごめんなさい。)

こんなことをブログで書いてよいか、分からないのだけど、思いっきりレバレッジをかけた派生債券を大量に含む金融派生証券6京円が破たんしたら、その救済には、LTCM並みの「運用金額の2.5%相当の救済額」が必要だと仮定するのがノーマルなのではないか?

この仮定がノーマルなら、今回の世界規模での金融危機では、公的資本投入やら公的資本注入やらで、およそ、「6京円×0.025=1,500兆」円規模の救済額が必要だということになるのではないか?

アメリカが続々と総額200兆円規模の救済額の計画を発表しても、あるいは、欧州が一時銀行の国有化を次々表明して資本注入を実施すると声明を発しても、「救済額の桁が一桁違うような気がするのだけど・・・????」との思惑から、世界中の株式市場がなんとはなしに全く反応しなで、「どこまで続くか・・・このぬかるみぞ・・・」の精神状態になってしまっているのではないか。。
http://diary.jp.aol.com/uvsmfn2xc/1152.html







●米証券化損失25兆ドル、ドル90円・ダウ7000ドルへ-三井住友銀・宇野氏  更新日時 : 2008/10/17 08:03 JST ブルームバーグ

 米国の証券化商品などに関連した不良資産は25兆ドル規模に膨らむ。米国経済の減速には歯止めがかからず、ドル安・米株安がさらに進む―。三井住友銀行市場営業推進部の宇野大介チーフストラテジストは16日のインタビューで、「控えめに見積もっても、ドルは年内に1ドル=90円、ダウ工業株30種平均は7000ドルまで下落する」と予想した。

  宇野氏は、米住宅市場の崩壊や景気悪化を背景に、米証券化商品をはじめとする不良資産は一段と増加していると指摘。時価評価額の算定が難しいとして自社で独自に価値を推定する「レベル3」区分の資産や簿外での運用分も考慮すると、損失は米政府の公的資金注入額より「2けた大きい」と述べ、米国内総生産(GDP)の2倍弱に当たる25兆ドル規模に達するとの見方を示した。

  米財務省は14日、銀行に対し、上位優先株と引き換えに合計2500億ドルの公的資本を注入すると発表。3日成立した金融安定化法で認められた総額7000 億ドルから拠出する。ワシントンで10日開かれた財務相・中央銀行総裁会議(G7)は「システム上の重要性を有する金融機関」の破たん回避や信用市場・短期金融市場の機能回復、銀行への公的資本注入、預金保護など5項目を列挙した行動計画を採択。各国が相次ぎ対策を講じている。

  米欧を中心とする金融危機が実体経済に波及するとの懸念が広がっているが、宇野氏は「因果関係が逆だ」と指摘した。米住宅市場が崩壊したから、住宅ローンを原資産とする証券化商品が劣化し、金融危機に発展したと強調。米欧の公的資本注入額は「全然足りない」と述べ、G7後の相次ぐ金融危機対策も「景気悪化と損失拡大の流れを変える力はない」と語った。

  国際通貨基金(IMF)は7日、米融資と担保資産に関連した損失見通しを1兆4000億ドルと、2週間前の1兆3000億ドルから上方修正。世界の主要銀行の回復には、今後数年間に6750億ドルの追加資金が必要との見方も示した。

           ・ダウ平均、年末7000ドル

  米連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長は15日の講演で、「金融危機の解消に向け、全ての手段を講じる」と述べる一方、景気回復には時間がかかるとの見通しを示した。9月の米小売売上高は前月比1.2%減と、2005年8月以来の落ち込みとなった。

  宇野氏は、米景気の悪化には歯止めがかからず、米株価の下落が続くと予想。ダウ平均は「年末までに7000ドルとの予想すら楽観的過ぎる」と述べた。不良資産の損失処理が重荷となるため、当面の底を打つのは10年にずれ込み、13年後の21年には3000-3500ドルまで下落するとの見方も示した。

  ダウ平均は10日、一時8000ドルの大台を割り込み、03年3月以来の安値をつけた。昨年10月の最高値からは44.5%下げた。13日には過去最大の上げを演じたが、15日には1987年10月のブラックマンデー以来の下落率を記録。16 日の終値は8979.26ドル。

  宇野氏は、米金融政策に関しては、FRBが現在1.5%の政策金利をゼロまで引き下げるとともに、金融機関に対する巨額の資金供給量を調節目標とする量的緩和政策に踏み切るべきだと主張した。

            ・年内、1ドル=90円

  ドル資金需要のひっ迫を背景に堅調なドル相場については、日欧と比べた米国経済の悪さに焦点が当たると予想。日本は金融機関の損失が米欧より小さく、ユーロ圏の景気は米国ほど低迷しないため、ドルは年内に対円で少なくとも90 円、ユーロに対しても1ユーロ=1.44ドル程度まで下落するだろうと語った。

  ドルは10日、対円で一時97円92銭と、約7カ月ぶりの安値を記録。ユーロに対しては1.3259ドルと、07年3月以来の高値をつけた。17日午前8時時点では101円29銭、1.3489ドル。日本銀行が1日発表した企業短期経済観測調査(短観)によると、大企業・製造業の08年度下期の想定レートは102円48銭。

  宇野氏は、「日本政府は景気低迷下での円独歩高に対し、世界的な金融危機が背景であっても歓迎できないと明言すべきだ」と述べた。為替市場での円売り介入や日本銀行による利下げは「実施してもいいが、効果は薄い」とし、財政支出が有効だと主張。「赤字国債を気にしている場合ではない。5-10兆円はやるべきだ」と語った。
http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=90003017&sid=ai_5PsQtgoVg&refer=jp_news_index








【私のコメント】
ブログ「貞子ちゃんの連れ連れ日記」では、今回の金融危機で1500兆円規模の救済額が必要になると推定している。根拠は、全世界にばらまかれた金融派生債券の総額が六京円、1998年に破綻したLTCMの場合「運用金額の2.5%相当の救済額」が必要だったことを踏まえ、六京円×2.5%で1500兆円という数字を算出している。三井住友銀行市場営業推進部の宇野大介チーフストラテジストは、米証券化商品をはじめとする不良資産からの損失額は米国国内総生産の2倍弱に相当する25兆ドル=2500兆円規模になると推定している。日本のバブル崩壊に伴う損失が100兆円~150兆円で国内総生産の2-3割だったのと比較すると、米国のバブル崩壊はスケールがかなり大きいと言うことができるだろう。

金融派生債券は米国だけではなく、欧州の金融機関も大量に購入している。その割合は不明だが、仮に米国と欧州で半々とすると、米国政府が支出すべき救済額は750兆円~1250兆円程度ということになるだろう。現在の米国国債の発行残高は約500兆円であるが、米国政府はそれを2.5~3.5倍に増加させる必要が出てくることになる。その他に、経済恐慌突入を回避するためのニューディール的政策の資金としての国債発行も必要になるだろう。近未来の欧米諸国はこの天文学的な国債発行を支えるという困難な事態に立ち向かうことになると思われる。中でも最も困難なのは、双子の赤字を伴っており借金を返済する能力が乏しい米国である。米国国民は消費を縮小して貯蓄を大幅に増やさねばならないが、それは米国の内需を大幅に縮小させ、恐慌を更に深刻なものにしてしまうはずだ。

それにしても、1500兆円~2500兆円の金はどこに消えてしまったのだろうか?私は、これは2001年から2008年まで(丁度ブッシュ政権の時期に相当する)の期間、資本主義経済システムを維持する為のコストだったのではないかと想像する。1997~2000年のITバブルが破裂した後、何も手を打たなければ米国経済はドル安・株安・債券安のトリプル安となって大恐慌に突入し、資本主義経済システムは崩壊する筈であった。1930年代の大恐慌と同様に米国の国内総生産は40~50%程度縮小していたかもしれない。その恐慌突入を先延ばしにするために、一年あたり200~300兆円程度の金が金融派生債券を通してウォール街で生み出され、資本主義システムに投入され続けてきたのではないか、と言うのが私の想像である。





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3 コメント

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シャボン玉トンだ (七面鳥)
2008-10-21 16:11:12
>1500兆円~2500兆円の金はどこに消えてしまったのだろうか

元々金融などというのは、退職金の前借みたいなものでアブク銭ですから、文字通り消えてなくなったのです。商取引と違って、後には何も残りません。

前借した退職金をばくちにつぎ込んで大損してついでに借金のカタに手足一本取られて、会社を自己都合で退職するのですから、退職金も戻さないと。でも、一体誰が戻せるのですかね?
返信する
世界中が共犯だ!! (CatSit1)
2008-10-22 06:22:03
イラクの戦費が1兆円/日でしたっけ?
年間で約300兆円。
これでアメリカに残った唯一の実体産業である軍需産業にカンフル剤を投与し、雇用と消費を賄っていたと。
まあこの間日本も貿易(外需)で儲けさせてもらいデフレ対策の足しにさせてもらった訳だし、ほかにどんな手があったかと問われると誰も正面切っては文句言えないのかもしれませんね。
返信する
Unknown (ななし)
2008-11-09 01:07:56
>まあこの間日本も貿易(外需)で儲けさせてもらい>デフレ対策の足しにさせてもらった訳だし、ほかに>どんな手があったかと問われると誰も正面切っては>文句言えないのかもしれませんね。

日本の対米黒字=約8兆円より遥かに大きい額を貢いでますから気にする必要はないですよw
しかも米国の要求で内需切り捨て政策=小泉改革をやりましたからね。
恩に着る必要なんてないです。
日本の外需依存率の推移をご存じですか?
96年にはわずか9%でしたが07年には16%に急増しております。
改革の結果、中間層が没落、国民の購買力を著しく損ねましたからね。
日本のGDPの6割を占める個人消費が落ち込む事=デフレって事ですよ。
単に米国の要望に従って内需を切り捨て、米国依存度を高めただけです。
03年には33兆円も米国債買ってますしね。
平たく言えば、朝貢金ですよ。
それに欧米の金融機関に比べて損失が少ないとは言え、農林中金をはじめどれだけ損失を出しましたか?
インチキ金融とインチキ格付け機関によって。
これで日本は小泉以降の外需頼み一辺倒の政策が取れなくなりましたね。
内需拡大路線に転向する必要が出て来ました。
新車市場だけ取って見ても90年代半ばには700万台あったんですからそれは可能だと思いますがね。
今は500万台切るところまで来てますからね。
改革路線を逆行させれば良いだけです。
日本企業の最大の強みだった分厚い中間層の分厚い購買力を蘇らせれば良いんです。
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