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 2005年6月、茨城県水海道市で「鳥インフルエンザ」が発生しました。およそ25,000羽を飼育する養鶏場で、春から1か月間に300羽前後のニワトリが死亡し、経営者が民間の検査機関に調べてもらったところ、鳥インフルエンザの疑いが強まったのです。その後、農林水産省と茨城県が検査し、この養鶏場のニワトリが鳥インフルエンザに感染していることが判明しました。感染したウイルスは、H5N2型鳥インフルエンザウイルスで、病原性はそう高くない「弱毒性」のものでした。分離されたインフルエンザウイルス株は、「A/ck/Ibaraki/1/2005(H5N2)」と名づけられました。

 養鶏場のニワトリから採取した鳥インフルエンザウイルスを解析した結果、このウイルスが2002年に中米のグアテマラで流行したものと遺伝子がほぼ一致することが分かったそうです。しかし、アジア諸国に蔓延していたのは、「H5N1型」の鳥インフルエンザウイルスでしたから、中米から鳥が運んできたとは考えにくかったのです。そこで考えられたのが、「ワクチン説」です。

 東京大学医科学研究所の河岡義裕教授著の集英社新書「インフルエンザ危機」(2005年刊)からの引用です。

 ニワトリに使われる鳥インフルエンザワクチンは、不活化ワクチンというタイプで、鳥インフルエンザウイルスを殺したものから製造されている。もし製造段階でワクチンのもとになる鳥インフルエンザウイルスが完全に死んでいなければ、このワクチンを接種したニワトリが鳥インフルエンザに感染してしまう。実際、ほかの動物のワクチンで、こうした感染例が報告されたこともあった。茨城の事件も、こうして起きた可能性は否定できない。

 鳥インフルエンザワクチンは、鳥インフルエンザが発生している地域で使用した場合、万が一ウイルスが生き残っているものが使われても、その危険性が見えにくい。なぜなら、仮に生きたウイルスがワクチンに混ざっていても、すでにウイルスが流行しているので、流行中のウイルスとワクチンに混ざっていたウイルスとの区別がつかないからだ。ところが鳥インフルエンザが発生していないところで生きたウイルスが混入したワクチンが使われると、接種したニワトリが感染してしまう。つまり鳥インフルエンザ流行の確率が極めて低い地域でのワクチン使用は、かえって流行を起こす結果になる危険性もはらんでいるのである。茨城事件が果たしてワクチンによってもたらされたものかどうかは分からないが、鳥インフルエンザワクチン導入の危険性を示す例かもしれない。


 これはあくまで「鶏」に接種された「トリインフルエンザワクチン」の話であって、「ヒトインフルエンザワクチン」に結びつけるのは、ワクチンの製造工程が厳重に管理されていることから、暴論かも知れませんが可能性がまるでないとも言い切れません。人為的ミスは起こりえるのです。インフルエンザウイルスの世界では、「新型」が登場すると、いままでの「型」は完全に姿を消すと言われています。1918年に登場したH1N1亜型の「スペイン風邪」は、1958年に登場したH2N2型の「アジア風邪」に取って代わられ、このアジア風邪のインフルエンザウイルスも1969年のH3N2型の「ホンコン風邪」に取って代わられました。しかし、1977年にスペイン風邪のウイルスが復活しました。このウイルスを保管していた研究所から流出した可能性があるのだそうです。人為的ミスです。

 「医薬品副作用被害救済制度」という制度があります。この制度は、医薬品を適正に使用したにもかかわらず発生した副作用による健康被害者に対して、各種の副作用救済給付を行って、被害者の迅速な救済を図ることを目的としています。「医薬品医療機器総合機構法」に基づく公的制度として設けられています。医薬品副作用被害救済給付の種類は、医療費、医療手当、障害年金、障害児養育年金、遺族年金、遺族一時金、葬祭料となっています。

 「生物由来製品感染等被害救済制度」(2004年創設)は、生物由来製品を適正に使用したにもかかわらず、その製品が原因で感染症にかかり、入院治療が必要な程度の疾病や障害等の健康被害を受けた人の救済を図るため、医療費、医療手当、障害年金などの給付を行う制度です。この救済給付に必要な費用は、許可生物由来製品の製造販売業者がその社会的責任に基づいて納付する拠出金が原資となっています。(アメリカの制度では、National Vaccine Injury Compensation Program (VICP)が補償を行っており、その財源は、ワクチンメーカーが税金としてワクチン1本に75セント支払ったものが充てられています。)

 「別表第一 1 次に掲げる成分を含有する製剤 (18) インフルエンザHAワクチン (19) インフルエンザワクチン」によって、インフルエンザワクチンは、「生物由来製品」とされ、「生物由来製品感染等被害救済制度」の適用を受けます。 

 ワクチンなどが原因で感染症にかかり、入院治療が必要な程度の疾病や障害等の健康被害を受けた人を救済する「生物由来製品感染等被害救済制度」は、「独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)」が運用しています。法定予防接種以外のワクチンの被害は、この制度で救済されます。「法定予防接種以外」と限定がつくのは、法定予防接種では「予防接種健康被害救済制度」という別個の制度があり、「生物由来製品感染等被害救済制度」より補償は手厚い。しかし、インフルエンザのワクチン接種は、法定予防接種ではありません。

 1976年に、ニュージャージーでH1N1型の新型インフルエンザA(A/New Jersey/8/76(HswN1)など)が流行したときに、アメリカ政府は、ワクチンを開発し、4,000万人以上に接種しました。しかし、ワクチン禍(ギラン・バレー症候群)が多発し、ワクチン接種は中止されました。1988年に、National Vaccine Injury Compensation Program (VICP)が設立され、ワクチンによる副作用が発生した場合は、十分な補償を受けることができる制度になりました。それも、「無過失補償制度」で、国・ワクチンメーカー・医療関係者などを相手取って訴訟を起こすということをしないでも、補償を受けられるのです。日本には、ここまでの法律はいまだありません。

 新型インフルエンザ(A/California/07/2009(H1N1)株)のワクチンの接種は、我が子にも受けさせ、自分たち夫婦も受けようと考えています。しかし、接種を受けたからといって、インフルエンザに関するあらゆるリスクが大きく軽減するとは考えていません。感染予防効果が100%あるとも、ワクチン禍の可能性が0%であるとも思ってはいません。日常の予防習慣が大事だと考え、実行しています(マスク着用、手洗い、咳エチケットなど)。人とインフルエンザウイルスとの戦いは、まだその緒についたに過ぎないのです。インフルエンザ研究が大いに進むことを期待しています。

Q.感染救済給付の支給の可否等は、どのようにして決定されるのですか。

A.生物由来製品を介した感染等による健康被害者またはその家族から機構に提出された請求書や診断書をもとに、その健康被害が生物由来製品を介した感染等によるものかどうか、生物由来製品が正しく使用されたかどうかなどの医学的・薬学的判断について、機構から厚生労働大臣に判定の申出を行い、厚生労働省の薬事・食品衛生審議会(副作用・感染等被害判定部会)で審議され、厚生労働大臣の判定結果をもとに機構において感染救済給付の支給の可否を決定します。 請求者には、機構からその結果を文書で通知します。


          (「独立行政法人 医薬品医療機器総合機構」のサイトから)

         (この項 健人のパパ)

(追記)

 2009年10月28日配信の時事通信からです。

 宮城県は10月28日、新型インフルエンザに感染した石巻市の男性(57)が同日死亡したと発表した。男性には糖尿病や慢性腎不全の持病があった。国内の新型インフルエンザ患者の死者は、これで疑い例も含め36人となった。 

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