POWERFUL MOMが行く!
多忙な中でも,美味しい物を食べ歩き,料理を工夫し,旅行を楽しむ私の日常を綴ります。
 





 2月15日の月曜日に東京都千代田区丸の内2-4-1の「丸の内ビルディング35階」にある「RISTORANTE HiRo CENTRO(リストランテ・ヒロ・チェントロ)」のイタリアンランチを「銀座テアトルシネマ 」で上映中の映画「カラヴァッジョ 天才画家の光と影」を見た後、楽しんで来ました。



 「銀座テアトルシネマ 」の近くで、食べ物にお金をかけたがらない夫の反対に遭わないイタリア料理の店を前日午前2時頃までネットで探しました。夫は書籍にはお金をかけるのですが、食べ物には栄養素をバランスよく取れれば、コストはかけない方がいいという人です。「ランチ、どこで食べようか。」の問いかけに、「え、考えてないけど。行き当たりばったりだね。目についたところでいいよ。」

 パンツェッタ・ジローラモさんが「食べちゃおイタリア」(光文社、1998年)という著書の中で言っています。

 「“食べる”ことについての、僕らみんなのスタンスは様々だ。ただ生命維持のための栄養摂取として食べる人もいれば、反対に食べることこそ人生最大の楽しみ也、という人もいる。

 夫は前者に限りなく近く、私は後者に近い。夫は食べることに関心は薄いのですが、「美味い」「不味い」は言う。夫の父親は食べることの好きだった人で、夫の子供時代、よく父親に連れられていろいろな店に行ったそうです。夫の父親は家庭でもよく料理を作るのを楽しんでいたそうで、夫がそんな人の子だとは信じられません。夫の父親は40歳代に亡くなってしまったので、私は会ったことがないのですが、食に関心が強く、旅行好きの私と趣味が一致するので、会いたかった。きっと、夫とよりも話が合ったことでしょう。とても残念です。

 私と同じで、薄味好みで化学調味料を使った味付けを嫌う夫は、外食に高いコストをかけても外れることも多いと思っているようで、それならば多少味付けに我慢しても安ければいいと考えているようです。そのうえ、食事にかける時間を削って読書をしたがる夫は、よく「松屋でいい。サラダも付いてご飯も美味しく、注文してすぐに出てくるからね」とまで言います。

 でもね、本当に久しぶりに2人で映画を見に来たのだから、いま見た映画の感想をゆっくりと落ち着いたお店で語り合いたいのよ。あなたの合理主義にはロマンがないのね。目的地から次の目的地に直線で行きたがる、それも早足で行きたがるあなたはせっかち!あなたには意味の感じられない「そぞろ歩き」も人生には必要よ。

 イタリアには「パッセッジャータ(passeggiata)」という言葉があります。法政大学工学部建築学科教授「陣内秀信」さんの「イタリア小さなまちの底力」(2000年、講談社)から引用してみます。

 イタリア都市を理解する上で、重要なキーワードとして、「パッセッジャータ」という言葉がある。日本語に訳すと 「散歩」となるが、これでは雰囲気がまったく伝わらない。日本の散歩は、自然に触れられる落ち着いた場所を、一人で瞑想にふけり、あるいは犬を連れてのんびり歩くというイメージだが、イタリアのパッセッジャータは、都市空間の中の社会化された一種の集団パフォーマンスとして成立する。

 どの町にも、夕食前のひととき、老若男女の市民がどっと繰り出し、友人たちと練り歩く華やかな街路空間というものが、必ずある。時間帯は、季節によって多少異なるが、夕方のほぼ六時から八時頃までで、お酒落して同じ道筋を行ったり来たりするのがミソである。そして居心地よく、しかも晴れがましい気分で滞留できる広場とリンクしていることが多い。町によっては、昼食前の時間帯にもやはりパッセッジャータが行われる。


 2月17日はあいにく雨が降っていました。夫と手組んで銀座周辺を「そぞろ歩き」したかったのですが、手に持つ傘が私たちの間を裂きます。相合い傘もよかったのですが、持っている傘は軽量の折り畳み傘で径の小さいもの。一つの傘に入ると肩に雨がかかってしまいます。残念!

 リストランテ・ヒロ・チェントロでは、リクエストして窓際の席にしてもらいました。真下の方には東京駅が見えます。新幹線も見えます。小学5年生の我が子「健人」は、いま、夫からのお下がりであるデジカメに夢中で、小遣いで3,000円のJR東日本の「土・日きっぷ」を買っては、土・日に新幹線に乗ってムービーを撮りに出かけています。次回は、健人を連れてきて、上から眺める新幹線を見せてあげようかな。



 ヒロ・チェントロでは、「カメリエール(cameriere、ウェイター)」にいろいろと質問してみました。最初に出てきたパンの脇に小皿に入ったオリーブオイルが付いていたので、尋ねてみました。

「フルーティな香りがするし、軽い感じのオリーブオイルだけどが、どこのものなの?」
「いま、瓶をお持ちしますね。」
「イル・レッチェート(IL LECCETO)と読むのかしら。」
「そうですね。当店ではこれを使っています。」

 イル・レッチェート(IL LECCETO)社のオリーブオイルは、トスカーナ州シエナ郊外の65軒の栽培農家(olivocoltore)からなる協同組合によって生産されるエクストラバージンオリーブオイルなのだそうです。無農薬で栽培されたオリーブを手摘みで採取して、ノンフィルターで仕上げているようです。「ノンフィルター」は、数か月かけてゆっくりと雑物を自然沈殿させ、その上澄みを出荷するもののようです。

 遊離オレイン酸の割合が低いので、酸化しにくく、安定した高品質なオイルなのだそうです。フラントイオ種(Frantoio、40%、フルーティな品種)とモライオーロ種(Moraiolo、40%、辛みのある品種)、レッチーノ種(Leccino、20%、繊細な味と香りのある品種)が合わさっているようです。日本では、250mlほどのものが1,500円程度で売られているようです。

 パンにはお塩がかかっており、そのパンを夫が気に入りました。そこでまた質問。

「このパンにかかっているお塩、どこのものなの? 私もお塩に凝っていて、何種類も揃えているの。」
「厨房の話ですと、メキシコ産が97パーセントで、それに日本の塩を3パーセントとブレンドしているそうです。」



 Pranzo A(プランツォ、昼食、1,500円)をいただきました。メインディッシュ(Primo Piatto)は「飯蛸とハニーキャベツのプッタネスカソーススパゲッティーニ」か「本日のスパゲッティーニ」(菜の花と地鶏のスパゲッティーニ)でした。2人だったので、それぞれ取ってみました。



 「スパゲティ・アッラ・プッタネスカ (Spaghetti alla Puttanesca)」は、アンチョビなど小魚(その代わりに今回は飯蛸)に、トマトソース(Salsa Pomodoro、サルサ・ポモドーロ)、ケイパー(cappero、カッペーロ、カッペーロの実をワインビネガーと塩で漬け込んだもの)、オリーブ、赤唐辛子、黒胡椒などで味付けしてあります。



 「飯蛸とキャベツ」の方は、パスタにキャベツなのでどんな味なのかとちょっと警戒しながら注文したのですが、キャベツの甘みが意外にも唐辛子などの香辛料とマッチして、ドライトマトも入っており、おいしいと感激しました。「菜の花と地鶏」の方は、3種類のチーズがからめてあり、ソースにケイパーを加えてあり、チーズを重く感じさせないで、こちらもおいしくいただけました。欲を言えば、もう少しお肉の量があったらうれしいと思います。



 「甘い」という意味と同時に「甘味」という意味も持つ「ドルチェ(dolce、複数形はドルチ(dolci))」は、デザートです。そのデザートは、「マスカルポーネ (mascarpone、クリーム・チーズ。ティラミスの材料)」がイチゴ(fragola、フラゴーラ)にかかっています。

 イタリアは東端でスロベニアと国境を接しています。国境を接するのはフリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州で、州都は「トリエステ(Trieste)」です。このまちに、フランチェスコ・イリー(Francesco Illy)の創立した(1933年)「イリカフェ社(illycaffè S.p.A)」があります。イリカフェ社は、エスプレッソマシン専用のコーヒーを製造・販売する企業です。厳選されたアラビカ種のコーヒー豆を100%使用して、苦味と酸味の絶妙なバランスを作り出す「イリー・コーヒー」は、多くのバールで使われています。

 イリカフェ社はブラジルのセラード地区(広大な高原エリア。ブラジル全土におけるコーヒー豆の生産量の約15%を占める)の現地農園に技術者を派遣し、栽培から販売までを指導しているそうです。そこで生産された高品質コーヒーは市場価格以上の値段で買い取られるので、他の生産者も高品質コーヒーの栽培に挑戦することになり、セラード地区以外でもクオリティーの高いコーヒーの生産が進んでいるのだそうです。



 食後のコーヒーに、デカフェのカプチーノを頼んでみました。私たち2人はコーヒーが好きなのですが、午後に飲むとその日の夜は眠れなかったり眠りが浅かったりするように少し前からなってしまいました。お昼を過ぎたら、カフェインレスのコーヒーしか悲しいことに飲めません。

「コーヒーはどこのものなの?」
「イリーです。」
「ああ、やっぱり。お願いがあるの。デカフェがあったら、それにしてもらいたいんだけど。」
「ございますよ。」
「まあ、嬉しい! 置いてないところが多いのよ。」
「健康志向の外国人のお客さまが注文することがあるものですから。」

 カプチーノ、美味しくいただきました。映画も満足、お食事も満足。いい一日でした。でも、この夫、心の中では思っているかも知れません。「松屋」に入ったなら、栄養的には同等で、1,800円ほど浮いて、それで本が1冊買えたのに、と。「食」も絵画、彫刻、建築と並んで、れっきとした文化なのですよ。「読む」だけでなく、「食べて」も文化を学ばなくっちゃね!

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