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 国立感染症研究所は、2012年第48週(11月26日~12月2日)の感染症発生動向調査の「感染症週報」で次のように述べています。

 「感染性胃腸炎の定点当たり報告数は第42週以降増加が続いており、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してやや多い。都道府県別では鹿児島県(37.42)、宮崎県(34.72)、福井県(33.59)、大分県(28.67)が多い。

 感染症発生動向調査は、医療機関の協力のもとに、感染症に関する情報の収集と分析を行い、地域における感染症の流行状況を把握し、予防に役立てることを目的としています。全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により「小児科定点」(約3,000か所)、「インフルエンザ(小児科・内科)定点」(約5,000か所)、「眼科定点」(約600か所)、「基幹定点」(約500かカ所)に分かれています。



 ノロウイルスによる感染性胃腸炎は、全国の約3,000か所の小児科定点から報告され、「定点当たり報告数」というのは、「定点医療機関数」を分母とし、「報告数」を分子とします。鹿児島県での定点当たり報告数の「37.42」というのは、1つの定点医療機関での1週間での発症患者数がおよそ37人だったということになり、1日あたり5人強が受診した医療機関で感染性胃腸炎と診断されていることになります。

 全国平均では、2012年第48週の定点当たり報告数は「18.00」ですから、1つの定点医療機関で1日におよそ2.6人が「感染性胃腸炎です」と言われているわけです。最近10年間でみると、もっとも流行したのは2006年で、そのときの第48週の定点当たり報告数はおよそ22人だったといい、そのときに次ぐ勢いのようです。

 1968年11月、アメリカ合衆国オハイオ州ノーウォーク(Norwalk)のブロンソン小学校(Bronson Elementary School)において、急性胃腸炎(acute gastroenteritis)が集団発生します。急性胃腸炎患者の糞便から検出されたウイルス様のものには「ノーウォーク・エージェント(Norwalk agent)」と名づけられます。1972年に、保存されていた糞便サンプルが電子顕微鏡で観察され、ウイルスであることが確認されると、「ノーウォーク・ウイルス(Norwalk virus)」と呼ばれるようになります。

 アメリカで、クルーズ船でのノーウォーク・ウイルスによる急性胃腸炎が多発すると、注目されるようになり、「ノロウイルス(norovirus、Nor(walk)+o+virus)」と短縮して呼ばれるようになります。この名称は、2002年に、国際ウイルス分類委員会(International Committee on Taxonomy of Viruses)により承認されます。

 アメリカでは、ノロウイルスなどによる感染性胃腸炎を「冬季嘔吐症(winter vomiting disease、ノロウイルスは外界では1ヶ月近く生存すると言われ、この生存期間が低温になるとさらに伸びることから、冬場に流行が起こる。広島県地域保健対策協議会のサイトによれば、ノロウイルスは、下界で乾燥した状態で、20℃での生存期間が3~4週間であるのに対し、4℃では8週間程度生存するとされている)」、「ウイルス性胃腸炎(viral gastroenteritis)」、「急性非細菌性胃腸炎(acute nonbacterial gastroenteritis)」、「胃腸風邪(stomach flu)」などとも呼んでいます。 
 
 感染性胃腸炎は、嘔吐や下痢が主な症状である、細菌やウイルスなどによる感染症です。冬季に流行する感染性胃腸炎の原因はノロウイルス、ロタウイルス等のウイルスが中心で、中でもノロウイルスは感染力が強く、集団感染や食中毒を引き起こすことがあります。ヒトからヒトへ接触感染(患者の便、嘔吐物)するほか、ウイルスに汚染された食品を食べることでも感染します。

 12月15日(土)配信のカナロコの記事からです。

 神奈川県は12月15日、茅ケ崎市幸町の飲食店で料理を食べた17人が、下痢や腹痛などを訴える食中毒が起きたと発表した。県食品衛生課は原因を調べているが、17人に共通するのは同店で食べたコース料理で、患者からノロウイルスが検出されたことから、同料理が原因の食中毒と断定。また、大和市南林間2丁目の飲食店で料理を食べた11人も、15日までに食中毒の症状を訴え、患者からノロウイルスが検出された。

 12月16日(日)配信の毎日新聞の記事からです。

 山梨市の弁当製造業「まもかーる」が運営する「るんるんランチ」(甲斐市)の仕出し弁当による集団食中毒で、県は12月15日、原因物質をノロウイルスと断定したと発表した。患者数は同日現在で97事業所319人に上り、さらに増える可能性がある。

 12月17日(月)配信の毎日新聞の記事からです。

 弁当製造会社「ダイヤス食品」の広島支社が製造した給食弁当が原因とみられる集団食中毒があり、広島市保健所によると12月16日夕方までに1381人が下痢や嘔吐などを発症した。重症者はいないが、患者11人と従業員1人の便からノロウイルスを検出。同支社は10、11日に各約4700食を配達しており、ノロウイルスを原因とした集団食中毒では過去最多に迫る可能性がある。 厚生労働省によると、1000人超の集団食中毒は今年初めて。ノロウイルスによる集団食中毒では、2006年に奈良県で製造した仕出し弁当を食べた1734人の発症が最多という。

 12月18日(火)配信の産経新聞の記事からです。

 大東市龍間の「わかくさ竜間リハビリテーション病院」でノロウイルスに感染した女性患者(88)ら2人が死亡したことについて、同病院は12月17日、同日現在で61人の患者と21人の職員に下痢や嘔吐などの発症があると発表した。同病院によると、発症者は計6病棟で確認され、患者21人の便からノロウイルスが検出された。

 12月19日(水)配信のANNの記事です。

 大分県竹田市の総合病院で、入院していた80代の男性患者がノロウイルスに感染して死亡しました。患者が死亡した竹田市の大久保病院によりますと、16日深夜から嘔吐や下痢の症状があり、ノロウイルスが検出され、18日早朝に亡くなったということです。病院では12日以降、看護師2人を含む9人が嘔吐や下痢を訴え、うち6人からウイルスを検出。

 この記事は数日前から書き始めたのですが、次々と集団感染や食中毒の報告が増えていきます。

 ノロウイルスが感染する部位は小腸粘膜です。細菌のように毒素を分泌するわけではなく、十二指腸付近の小腸上皮細胞を脱落させることで、突発的な激しい吐き気や嘔吐、下痢、腹痛などを引き起こします。胃の膨満感やもたれ感が前記の症状に先行する場合もあるといいます。これらの症状は長くて3日程度で収まり、後遺症が残ることもないといいます。ただし、免疫力の低下した老人や乳幼児では長引くこともあるようです。

 ノロウイルスの感染経路の一つは、ノロウイルスに感染した人が、十分に手洗いを行わずウイルスが手についたまま調理をすると、食品が汚染され、その食品を食べた人が感染するというものです。集団食中毒になることがあります。食品の汚染は、調理者による場合だけではありません。人の糞便中のノロウイルスが、下水を経て川から海へ運ばれ、二枚貝の内臓に蓄積され、それを、十分に加熱しないで食べる(ノロウイルスはカリシウイルス科に分類され、その科のウイルスでの実験では、60℃では30分の加熱でも不活化(体内での増殖を阻止)されないが、70℃では5分間、煮沸では1分以内に不活化されるという)と感染することになります。感染経路の二つめです。これも集団食中毒になることがあります。

 提供された食品でノロウイルスに感染することを防ぐことは不可能に近い。外食をするな、出された弁当を食べるな、病院施設などでの食事をとるな、ということは言えないのです。調理従事者にノロウイルスに対する知識を十分に持ってもらって、注意してもらうしかないのです。個人的に対処するには、食品は十分に加熱することしかないようなのです。



 ごく少量(10~100個程度)で人に感染する(インフルエンザウイルスでは1000~3000個くらい必要)能力を持つノロウイルスの感染経路で問題になるのは、ノロウイルスを含む糞便や嘔吐物を処理した後、手についたウイルスや、不適切な処理で残ったウイルスが、口から取り込まれて、感染する場合です。

 ノロウイルスは、直径が30~38nm(ナノメートル、1nmは100万分の1mm)ほどです。嘔吐物の拭き取りと消毒が徹底されていない場合は、嘔吐物が乾燥して飛沫となって拡散し感染が拡大することもありえます。2006年12月中旬、東京都豊島区のホテルの宴会場の利用客らが嘔吐や下痢などの症状を訴え、池袋保健所がノロウイルスが原因と確定した出来事がありました。

 感染性胃腸炎の発症者(12月2日~10日の利用客372名)のうち300人が12月2日と3日の利用客(残りの72人はホテルの従業員)で、ほとんどが12月2日と3日に、3階と25階の宴会場を利用していた(372名のうち361名が3階と25階の宴会出席者)といいます。池袋保健所は、2日にホテルの3階と25階で嘔吐した客がおり(25階において嘔吐した利用客を介助したホテル従業員からノロウイルスが検出されている)、その際にノロウイルスが絨毯に付着し、利用者らが絨毯を歩いた際などに空気中に浮遊し、経口感染につながった可能性もあると推定しました。

 換気の悪い室内や利用者の通行が多い通路などでは、嘔吐時に発生したウイルスを含む飛沫が嘔吐場所に留まっっていることがあるといいます。また、嘔吐物が乾燥した後でも、その上を人が歩くと乾燥粒子が舞い上がり、手や足に付着し、口に入っていきます。自分が歩いている絨毯やカーペットからノロウイルスを含んだ乾燥した粒子が舞い上がっているなどということを私たちは知ることができません。この粒子が口に入るのを防ぐには、外出時にはいつもマスクをしていることが必要でしょう。

 手指についたウイルスを除去するためには、石鹸類を使い、泡を立ててよく洗い、水でよく洗い流す方法が、一番効果があるといいます。アルコール消毒の効果はなく、とにかく流水で洗い流すことなのだそうです。ノロウイルスは、細菌に比べ、大きさが30分の1~100分の1で、手の皺に深く入り込むので、より丁寧な手洗いが求められます。ハンドソープによる揉み洗い10秒に流水すすぎ15秒を行い、それを2回繰り返すと、ウイルス量は0.002%になるという実験結果があります。

  また、新たなノロウイルスによる感染性胃腸炎の集団発生のニュースが報道されています。

 12月20日(木)配信の毎日新聞の記事からです。

 呉市保健所は12月19日、海上自衛隊潜水艦教育訓練隊の男性隊員ら48人(19~51歳)が、17~18日にかけて嘔吐や腹痛を発症したと発表した。うち5人からノロウイルスを検出し、集団食中毒の疑いで調べている。

(追記) 2012年12月23日配信の毎日新聞の記事からです。
 
 国立感染症研究所によると、今年は下痢や嘔吐を起こす感染性胃腸炎の患者が多発している。全国の小児科で実施している定点調査(12月3~9日、49週)では、1定点あたりの患者報告数が19.62人。同時期では過去10年間で2006年に次いで多い。原因の大半がノロウイルスという。今回は新型が出現したことで、免疫を持っていない人が多いことも流行の背景にあるとみられている。

(追記) 2013年1月5日配信の共同通信の記事です。

 山形県は1月5日、山形県南陽市赤湯温泉の丹泉ホテルで食事をした10~80代の男女19人が下痢や腹痛の食中毒症状を訴え、うち5人からノロウイルスを検出したと発表した。いずれも軽症で快方に向かっているという。山形県によると、19人は昨年12月31日から今年1月1日にかけてホテルで刺し身などの提供を受けた。調理担当の従業員からもノロウイルスを検出したため、食事が原因と判断した。山形県はホテルの飲食部門を1月5日から3日間の営業停止処分とした。

(追記) 2014年5月8日の千葉県健康福祉部の報道発表資料からです。

4月28日
 市川保健所に同ホテル
(ディズニーシーの「ホテルミラコスタ」)から、4月26日に利用した2グループから、嘔吐・下痢を発症した者が複数発生しているとの連絡があった。
4月29日
 同保健所が、当該施設の調査を実施し、施設の利用状況を確認するとともに、施設関係者に対し、消毒方法等の衛生指導を実施した。
5月7日
 これまでに、26日に利用した8グループのうち、4グループの325名中106名が下痢・嘔吐等の症状を呈しており、発症者62名の便を検査したところ、52名からノロウイルスが検出された。また、宴会料理を喫食していないホテル職員25名が同様の症状を呈しており、検査を行った10名中9名からノロウイルスが検出された。なお、調理従事者については、ノロウイルスは検出されなかった。
 保健所では、現時点では同ホテルで調理、提供された食事を原因とする食中毒ではなく、ノロウイルスによる集団感染事例と判断している。保健所では、引き続き調査を実施しているが、重症者はなく、患者は、発症後数日で快方に向かっている。


                  (この項 健人のパパ)

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