POWERFUL MOMが行く!
多忙な中でも,美味しい物を食べ歩き,料理を工夫し,旅行を楽しむ私の日常を綴ります。
 





 ウイルス(virus、ラテン語で「毒」の意)は、タンパク質の殻とその内部の核酸からなる微小な構造体ですが、他の生物の細胞を利用して、自己を複製させることができます。遺伝情報を何が持つかで、DNAウイルスとRNAウイルスに分類することができます。DNAウイルスは、遺伝情報をデオキシリボ核酸(DNA、Deoxyribonucleic acid)が持ち、増殖の過程で生じたDNA複製のミスを修正する機構が備わっています。

 日本では、1955年の患者を最後に根絶された(WHOは1980年5月8日に根絶宣言を行った)「天然痘」は、40℃前後の高熱、頭痛などの初期症状の後に豆粒状の丘疹が生じ、全身に広がっていきます。病変は体表面だけでなく、呼吸器・消化器などの内臓にも現われ、肺が損傷を受け呼吸困難等を生じて、重篤な呼吸不全をきたし、死に至る場合もあります。この天然痘ウイルスは、DNAウイルスです。

 天然痘をワクチンによって根絶することができたのは天然痘ウイルスがDNAウイルスであったためとされます。DNAウイルスは、RNAウイルスと比較すると遺伝子の変異が少ないため、長期にわたって同じワクチンが使えたからです。

 しかし、インフルエンザウイルスはRNAウイルスです(オルソミクソウイルス科(Orthomyxoviridae、オルトミクソウイルス科、直鎖状1本鎖RNAウイルス、"ortho-"は「真っ直ぐ」、"-myxa-"は「粘っこい液体」の意))。RNAウイルスは、遺伝情報をリボ核酸(RNA、ribo nucleic acid)が持っています。DNAでは修復機構が備わっており、複製に異常(小さな変異)が生じた場合は修復されますが、RNAには修復機構が備わっていません。複製の異常は修復されないままです。

 ここに、人類がインフルエンザウイルスとの戦いを続けなければならない理由があります。インフルエンザウイルスの変異に対応して、ワクチンを新しく開発し続けなくてはならないのです。

 ウイルスの突然変異には、その変異に2種以上のウイルスが関与するか否かで「不連続変異(抗原不連続突然変異)」と「連続変異(抗原連続突然変異)」に分類されます。連続変異(抗原ドリフト(antigenic drift)、「ウイルスの小変異」)は、ウイルスの核酸がその構成要素の塩基で1単位で変異を起こすものです。ウイルスの内部には核酸が入っていますが、それを構成する塩基はアデニン (A)、グアニン (G)、シトシン (C)、ウラシル (U)です。その核酸を構成する1つの塩基が例えば、もとはAであったものがGに変わってしまうのです。

 変異が起きた部位が偶然にもウイルスの「感染性」や「毒性」に関わる重要な部位であった場合にはウイルスの性質が大きく変わることになります。また、この連続変異の起こる頻度は大きく、変異の積み重なりでウイルスの性質を大きく変えることもあり得ます。その結果、「ワクチン」が効かなくなることにもなります。

 不連続変異(抗原シフト(antigenic shift)、「ウイルスの大変異」)とは、例えば、人体内で2種のウイルスが1つの細胞に同時に感染すると、細胞内では合成されたウイルス遺伝子やタンパク質が混ざり合い、結果として元のウイルスとは異なったウイルスが新たに生じることをさします。この場合は、「ワクチン」の有効性は完全に失われます。

 ノルウェーの保健当局は、11月20日に、新型インフルエンザ感染が確認された患者3名から突然変異株(mutated version of the influenza A(H1N1) virus)を発見したと発表しました。ノルウェーの保健当局は、新型インフルエンザウイルス(pandemic flu virus)のサーベイランスの一環として、患者から採取したウイルスの分析を行ってきましたが、その中に変異株は含まれ、その多くはワクチンの有効性からは重要性を持たない「小変異」に留まっていました。

 しかし、新型インフルエンザ感染で亡くなった2人の患者と重篤化している1名の患者から発見された突然変異のウイルスは、肺などの下気道まで容易に侵入するウイルスで、重篤化を引き起こしやすいようです。そもそも、新型インフルエンザウイルスは「豚由来」であって、豚の体温はヒトの体温より2℃ほど高く、「豚由来のインフルエンザウイルス(swine flu virus)」も高温を好むようです。そのため、温度の高い下気道で増殖しやすいようです。

 ノルウェーの保健当局の観察するところによると、この大きく変異したウイルスは、感染によって患者の体内に入ったものではなく、感染者の体内で変異を起こしたようで、「変異を起こして新型インフルエンザワクチンの有効性を失わせた」ウイルスが新たな流行を準備している兆候はないようです。ホッとしますね。

           (この項 健人のパパ)



コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )



« グラクソ・ス... 「新型インフ... »
 
コメント
 
コメントはありません。
コメントを投稿する
ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。