怒りの葡萄(原題;The Grapes of Wrath)
1940年 アメリカ
監督:ジョン・フォード
出演:ヘンリー・フォンダ、ジェーン・ダーウェル、ジョン・キャラダイン、チャーリー・グレイプウィン
ドリス・ボードン
1939年に発売され、ピューリッツァー賞を獲得したジョン・スタインベックの小説『怒りの葡萄』の映画化。
同年のアカデミー賞ではジョン・フォードが監督賞を、ジェーン・ダーウェルが助演女優賞を受賞した。
1930年代のオクラホマ。トム・ジョードは、4年の懲役を終え仮釈放になり、故郷に戻ってきた。
だが久しぶりに辿り着いた家は廃墟になっており、その一帯に住む人々は皆、地主に土地を奪われ、
追い出されたのだという。
家族が身を寄せているらしい伯父の家で無事に再会を果たし、トムはあたたかく迎えられる。
子どもたちは「トムが脱獄!トムが脱獄!」と唄って跳ね回るし、おじいさんも嬉しげに「やりおった、
やると思ってたんだ」と満面の笑みで、トムが「仮釈放だ」と言ってまわらないといけない始末。
一家の団らんは何とも微笑ましい。
しかしオクラホマで耕す土地を失った一家は、働き口を求めてカリフォルニアへと旅立つ事に。
故郷を捨て新生活を夢見て向かった先では、同じように土地を追われた貧民たちが群れをなしていた。
搾取する者達によって家族は打ちのめされ、あえなく世を去ったり、逃げだしたりとバラバラに
なりながらも、どうにか転がり続ける。
憤り、憤り続け、個人の憤りを超えて、社会正義へと目覚めていくトムが
母に言う別れの言葉が凄い。
母に「お前の消息はどうしたらわかる」と聞かれ、
俺は暗闇のどこにでもいる。
母さんの見えるところにいる。
飢えて騒ぐ者があれば、その中にいる。
警官が人を殴っていれば、そこにいる。
怒り叫ぶ人の中に、俺はいる。
食事の用意ができて笑う子供たちの中に、俺はいる。
人々が自分の育てた食べ物を食べ、自分の建てた家に住む
そんな世の中になれば、そこに俺はいる。
こう答えたトム。
ひとりの人間の言葉じゃないみたいだ。
<大衆>の言葉を喋ってるんだ。
「わたしには何のことやら」とかぶりをふって、息子を見送る母の姿も
愛情たっぷりで心に沁みる。
彼女もまた、万人の母なのだ。