映画の感想をざっくばらんに、パラパラ読めるよう綴っています。最近は映画だけでなく音楽などなど、心に印象に残ったことも。
パラパラ映画手帖
No1244『親不孝通り』『不敵な男』~野添ひとみに釘づけ~

どちらも増村保造監督の1958年の作品で、
川口浩と野添ひとみ主演。
なんといっても、野添ひとみがいい。
別に好みの顔ではないけれど、大きな瞳で、
強気でしっかり者で、意地っ張りな女性で、
見入ってしまう。
『親不孝通り』は、
「銀座の飲み屋を根城に、遊興にふける大学生たちのリーダー・勝也(川口)は、
姉を捨てた修一(船越)への復讐を誓い、
計画的に修一の妹・加根子(野添)を誘惑して棄てるが、
加根子は勝也の子供を産むと宣言する…。
7本の増村作品に出演した野添ひとみは、
純粋さと逞しさを合わせ持つ娘の役を溌剌と演じ、
初期増村映画を支えた。」(近代美術館フィルムセンター解説)
賭けボウリングの映像に、タイトルロールが流れ、
スリリングな幕開け。
就職先のない、当時の学生たちのおしゃべりが、あちこちで展開する。
女子大生も、就職口はゼロで、せっかく勉強しても、とどのつまりは、
いかにいい男をつかまえて、結婚するかと皮肉めいた話題。
社会に出れば、安月給でこき使われ、
せいぜい、学生のうちに、飲み屋街で、
遊んで回ろうという、当時の空気が伝わる。
修一はじめ学生たちの面倒をみて、
「おやじ」と慕われる寿司屋のおやじを
潮万太郎が演じ、いい味を出している。
自分を強姦した修一を、はじめは憎んだものの、
愛すると決心して、つきあい始める加根子。
デートのあと、別れるときに、キスを要求する表情のかわいいこと。
修司に別れを告げられても、めげない。
決然と、子どもを産む覚悟をし、
ひとりで働きに出ると、大阪に行く支度をする。
強い女性である。
どうして、そういう行動に出るのかは、理解できなくても、
彼女にとっての真実を追いかけているという感じで、
なんだか説得力がある。
自分が強姦された、ハイキングの山のすすきの茂る場所に、
修一とつき合い始めて、デートで出かけようと言い出し、
今度は、加根子の方が、嬉しそうに、修一の手をひっぱるようにして
すすきの草原を走っていくなんて、
全く理解を超えている。
でも、恋する喜びにあふれる彼女の表情を見ると、
説得されてしまう。
兄役の船越英二が優柔不断な証券会社のサラリーマンを演じ、
ふにゃっとした感じが、なかなかいい。
ラストは、主演の二人の姿でなく、
親不孝通りで、就職まで飲んで遊ぼうと、浮かれる
仲間の学生たちの姿で終わるところに、不穏な音楽が流れるあたり、
なんだかおもしろかった。
この作品と、『不敵な男』を対で観るとおもしろいと思う。
先に作られたのは『不敵な男』のほう。
『不敵な男』
「新宿の街を闊歩するチンピラ青年の生態を、
当時の最新風俗をまじえながら、
増村一流の突き放した視点で描いた作品。
上京してきた田舎娘を騙して売り飛ばす激しい描写から始まる物語は、
やがて青年の過去や環境を描き、
騙したはずの女へのこだわりを示しながら、
恋物語を奏ではじめる」(フィルムセンター解説)
船越英二が刑事役で出ていて、やっぱりいい味を出している。
親切な面倒見のいい感じがよく似合っていた。
売春をあっせんする店のマダムを演じる
岸田今日子が、刑事相手に、
きたない言葉で、たんかをきる姿には、なんとも驚いた。
ここでも、野添は、田舎娘の役で、
東京に働きに出てきたところを、川口にだまされて強姦されるが、
刑事のおかげで、川口は逮捕され、裁判となる。
ちょっと説明くさいところもあるが、
野添が、川口を殺したいほど憎み、
自分もバーで働いて、
川口が、1年後、出所したら、殺そうとする。
足で川口をけっとばしたり、ひっぱたたいたり、なんとも強い。
増村監督の初期の作品からは、ちょっと目が離せない気がする。
あ、でも『氷壁』(58年)はごめんなさい。疲れていて、爆睡してしまいました。。。
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