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No1362アッバス・キアロスタミ監督追悼特集終わる~人生というジグザグ道はどこまでも続く~

知らない人に親切にされたら、自分も親切にしようと思わない?
キアロスタミ監督がスタッフにこんな感じのことを言っていた。
『キアロスタミとの一週間』(1999年)という
『風が吹くまま』を撮影中の現場に日本のスタッフが訪れ、撮影したドキュメンタリー映画。
監督がどんなふうに映画をつくっていくのか、
りんごが落っこちる仕掛けづくりや、
演者の子どもの率直な一言がすべてを表現しているよねと感心したり、
ロケハンで、雑木林で、川に木の橋をかけるところや、
監督がどんなことを考えながら、撮影しているのか垣間見れたような気がする

「それじゃ、映画みたいな話し方だから」と監督が俳優にだめだしする場面があった。
撮っているのは映画なのだけど、なんだか、いいなあと思う。
監督が求めるのは、いわゆる演じられた「映画」ではなく、
本物の感情、表情、言葉による「映画」なのだろう。 

自分の求めるものをいかに他者から引き出すか、という意味で、
映画監督というのは、忍耐の要る仕事で、
キアロスタミ監督の穏やかでもあり、厳しくもあるいろんな表情を目にできて、
感慨深かった。

今回の追悼特集の中には、フランスの監督による
『ドキュメント:キアロスタミの世界』(1994年)も上映された。
監督が、愛するというのは、相手をすごく好きになること、
みたいなことを言っていて、
ああ、こんなふうにシンプルでいいんだなと、なんだかすごく共感した。


他者への寛容、礼節‥キアロスタミ監督の映画の中には、
主旋律のまわりに、ささやかな寄り道のような挿話がいっぱいあって、
その中の、ちょっとした表情、音、きらめきもまた
主旋律とともに、ずっと心に残り続けていくような気がする‥。

キアロスタミ監督といえば、ジグザグ道の監督で、
ドキュメンタリーの中でも、
ジグザグ道を前に、この道は、監督がつくったんだよね、なんて話してるシーンがあった。

今回観た、いろんな映画の中で、
一番きれいだったと思うのは、幾つもあるけれど、
『オリーブの林をぬけて』(1994年)のラストシーンだろうか。

青年が結婚したいと強く願っている少女がいる。
二人は、映画撮影で一緒に演じることになるが、
その帰り道、先に歩いて家に帰っていった少女を、
青年が追いかけて行く。
カメラは、それをロングショットでとらえ、
さっさと歩いていく少女と、駆けるように追いかける青年、
ずっと向こう、見えないくらい遠くで、追いついて、
二人がどんな話をしたのかは見せないまま、
やがて、青年は一人、跳ねるようにして駆け戻ってくる…。
オリーブの林を俯瞰の長回しでとらえた、
夢のようにきれいなシーンで、
青春の淡い恋の風景として心に刻んでおきたい。

 

今回ドキュメンタリー含めて13篇がシネ・ヌーヴォで上映され、
9つ観ることができた。
疲れていて、途中で寝落ちしてしまった映画も多く、
とても不甲斐なく、もう一回確かめたい。。。

今までも、イランのキアロスタミ監督(2016年7月4日逝去)の作品は、
新作が公開されれば、映画館に足を運び、
特集上映があれば、通った覚えはあるけれど、
そのわりに、どの映画もとらえづらく、感想を書きにくくて、あまり書いてこれなかった。

今回、久しぶりに、こうしてまとめて観ることができて、
あらためて、監督の奥深い人間味に触れたような気がして、
ますます好きになりました。

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