goo blog サービス終了のお知らせ 
goo

No206「嫌われ松子の一生」中島哲也監督

~壮絶な人生を支えるもの~

愛を信じて、男たちの間を転々としつつ、
どうしようもなく不幸になっていく川尻松子の
とことん強く、たくましい明るさを
楽しく、優しく謳いあげた傑作。

中谷美紀は、殴られても、蹴られても、決してへこたれない松子になりきった。
女優魂あふれる演技は、本作が彼女の代表作の一つになることを確信づける。

監督は、松子の男たちに振り回される壮絶な人生を
歌と漫画チックな明るい映像とで、楽しくコミカルに、テンポよく描いた。
父や病弱な妹、故郷への思いが、松子の心の中にはいつもあったことで、
単に楽しいだけでなく、味も深みもある人間ドラマになった。

映画は、松子の存在を知らなかった甥の川尻笙(瑛太)の姿から始まり、
笙が生きている現在と、松子の暮らした時間とを
交錯させながら、描いていく。
伯母について知っていくことで、しだいに心ひかれていく笙の存在は、
松子と観客の心を結ぶ糸になった。
松子と笙が実は・・・という川辺のシーンは、ほろりとした。

どんなときも、笑顔を失わず、歌を忘れない松子のすごさ。
故郷の筑後川に似た荒川の近くにアパートを求め、
男を追うことをやめ、一人暮らしを始める。
50歳を越え、太って、よれよれになっても、
くしゃくしゃの髪の間からのぞく目の輝きは、力を失っていない。
むしろ、見た目はぼろぼろでも、松子の底力がより一層伝わってくる。

ラストの階段をのぼっていくシーンのみごとさと
みなの歌が重なりあうクライマックス。
子どもの頃の松子、大人になってからの松子の数々のシーンが重なり合うことで
一人の女性の人生の重みと尊さが感じられる。

愛されるより愛しなさい、
どんな人生だって、なにかある、もう一回がんばろうという気力がわいてくる。
父役の柄本明、妹役の市川実日子、友人めぐみ役の黒沢あすか、恋人龍の伊勢谷友介と
個性ある存在感のある役者がそろっている。

パンフレットに、中島監督や金橋豊彦音楽プロデューサーが
「先に音楽ありきの映画」、「一種のミュージカル」と述べていたが、
観て納得した。
「まげてのばして」の主題歌のつかいかたは見事。
松子の人生の要所要所で流れてくるこの歌は、松子の信条を結晶したもの。

滅入ったときや、元気を出したい時
つい「まげて~のばして~お星さまをつかもう」と口ずさんでしまいそうだ。

満足度 ★★★★1/2(星5個で満点)
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
« 「下妻物語」... No207「間宮兄... »
 
コメント(10/1 コメント投稿終了予定)
 
コメントはありません。
コメントを投稿する
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。